ミャンマーの「戦い!」 人身取引編その1 少女が身内に売られて中国の花嫁となる理由

ミャンマーは、つい最近まで軍政のもとで市民の自由はあまりありませんでした。2007年、反政府デモの最中にジャーナリストの長井健司さんが殺害されたのは記憶に新しいところです。

その後、ここ数年で民主化のうねりが起き、2011年からは市場開放が進みました。2015年11月には選挙があり、スー・チーさん率いるNLDが圧勝しました。

とはいうものの、急速な市場開放の裏で、さまざまな人身取引が問題となっています。

中国との国境では、「良い仕事がある」とか、「金持ちの中国人と結婚できる」とかとだまされて中国に連れて行かれ、中国人の妻にさせられてしまうミャンマーの若い女性が数多くいます。隣国タイでは、売春ビジネスの餌食となるミャンマーの女性たちが多く、インドネシアなどではだまされたミャンマー人男性たちが漁業の劣悪な環境で強制的に働かされています。

こうした不法な人身取引の対象となっているミャンマーの人たちはどれほどいるのか? 対応策はないのか? JICAの専門家でミャンマーの人身取引問題に挑んでいる甲木京子さんに実態を聞きました。

そもそもミャンマーでは何人くらいの人が人身取引の被害に遭っているのでしょうか?

「わかりません。わからないんです。そもそも被害者の数がどれくらいなのか、誰も正確な数字を把握していない。つまり実態が把握できていない。『何人が被害に遭っているのかわからない』という事実こそが、この問題の根本です」
甲木さんはそう話します。

たしかに、アメリカは全世界での被害者数を年間80万人、国際労働機関(ILO)は年間245万人と見積もっていて、数字はばらばらです。全体を把握することの難しさが感じられます。では、具体的にどんな人身取引が起きているのでしょうか?

「ミャンマーで被害者が多い人身取引の1つが、中国での強制結婚です。ミャンマーの北部は中国と接しています。いい仕事があるなどとだまされて中国との国境の町ムセに連れていかれ、中国人に嫁として売られるケース。また母親など身内から売られる少女のケースもよく聞きます」

少女が身内から売られる理由は、お金。売られた彼女たちは陸路で中国に送られるそうです。中国では一人っ子政策が長く続いた結果、女性が足りず、結婚できない男性が増えています。

「連れていかれた先では、最初は脱走しないように厳しく監視されるようです。足を鎖でつながれていたという奴隷状態の人もいました。6〜7年たって中国語が話せるようになり、自由に外へ出られるようになったあとに警察などに助けを求め、ミャンマーに帰ってきた人が何人もいます。一方中国での生活になんとか順応し、農家の嫁として働き、子どもを産み育てている人もいます。やっと落ち着いたと思ったら警察に見つかり、子どもを置いて強制的に帰国させられた人たちもいます。帰ってきてもまだ20歳くらいの人もいるんですね。それだけ若い少女たちが犠牲になっているわけです」

暴力によって誘拐されたり、親などから金銭で売買されたりするケース以外では、最近ではスマートフォンを使いSNSで友達になった相手にだまされて連れていかれるケースも増えているそうです。駆け落ちした恋人から売られるというケースもあるようです。人身取引の「業者」とはいえない普通の身近な人がブローカーになるところ、そして家族や親戚、友人に誘われて、とケースが多いのも実態です。

「ミャンマーでは一般の人の間でもスマートフォンが急速に普及し、こういう犯罪が増えています。外国に正式に事務員や工場労働者などとして働きに出る人もいますが、そういった需要のある場所には必ず正式のルートに乗れない人を『売る』業者や仕組みが存在します。タイの売春市場には多くのミャンマーの女性や少女たちが売られています」

男性はどうなのでしょうか?