6.世界の援助潮流と日本の取り組みについて

Q16.世界の援助潮流は?

世界の援助国が2001年にアメリカで起きた同時多発テロ以降、「貧困がテロの温床になっている」という考えからODA額を増やしていることは、前項ですでに説明したとおりですが、さらに、同じ額のODAでより高い効果を目指そうという取り組みも進められています。
「貧困削減戦略文書」(PRSP)、「ミレニアム開発目標」(MDGs)、そして「パリ宣言」という取り組みがあります。
PRSPは1999年9月に世界銀行・国際通貨基金(IMF)で策定が合意されたもので、MDGsは、2000年の国連ミレニアム宣言を契機にとりまとめられた、2015年までに国際社会が達成すべき開発目標です。先進国は長年にわたり途上国に対して援助を続けてきましたが、目に見える効果が現れていないのではないかという停滞感から“援助疲れ”になっていました。その中で、MDGsは測定可能な開発目標を国際社会が共有し、援助に対する意識と動機を高めることに貢献したのです。そしてPRSPは、MDGsも含めた各国の開発の基本戦略として位置付けられているものです。さらに「パリ宣言」では、効果的に援助を行うために途上国と先進国が取り組むべき制度の改革などについて合意したものです。

Q17.日本の取り組みの特徴は?

【画像】日本が1954年に途上国に対する援助を開始してから、すでに50年以上が経過しました。その中で日本は、経験を積み重ねながら、変化する国際社会に対してもっともふさわしい国際協力というものを模索してきてます。
そうした長い歴史の中で形づくられてきた日本の援助の考え方に、「自助努力支援」というものがあります。この自助努力支援とは、一言でいうと「途上国の人びと自らの手による努力を支援する」ことです。これは、途上国自身の努力があって初めて持続的な経済成長が実現するという考えに立ち、さまざまなプロジェクトを実施するときには、支援が終わっても途上国の人びとが自らの手で事業を持続・発展的に行えるような協力をしていこうというものです。
つまり、途上国の人びとの努力を“応援”するのが日本型の協力なのです。 この自助努力支援のほかに、日本の援助の特徴として「人間の安全保障」の推進もあります。

Q18.「人間の安全保障」とは?

【画像】世界中でグローバル化が進展し、人、モノ、カネ、情報などが大量・急速に移動するようになるにつれ、武器や薬物の密輸、地球温暖化などの環境問題、エネルギー問題、そして最近では金融危機や新型インフルエンザを含む感染症の問題などが深刻化しています。そしてこうした問題は、それぞれが独立しているのではなく、相互に複雑に絡み合い、人びとの生存や生活を脅かすようになっているのです。
こうした地球規模の問題に対処するためには、国家が国境と国民を守るというこれまでの伝統的な“国家の安全保障”だけでは不十分であり、“人間一人ひとりの視点”に立って取り組んでいく必要があるというのが「人間の安全保障」の基本的な考え方です。つまり、人間の安全保障とは、人間一人ひとりが豊かな可能性を実現することができるようになるために、国や国際機関、NGO等が協力して人びとの保護と、自分たちで脅威に対処するための能力の強化を通じて、さまざまな脅威に包括的に対処する必要があるという考え方なのです。
日本政府はこの人間の安全保障を推進するために、1999年3月に国連に設置した「人間の安全保障基金」に累計約373億円(約3億3,043万ドル)を拠出し、2009年7月までに195件の事業に対し、総額約3億1200万ドルの支援を行っています。それに加え、日本政府は草の根・人間の安全保障無償資金協力も行い、草の根レベルでもこうした観点からの支援を行っているのです。