2009年夏、私はスーダンを訪れました。
 スーダンは、1956年の独立以来、50年以上にわたって国内紛争に悩まされてきました。西部のダルフールでは今でも戦闘が続いており、マスコミが流すスーダンの情報は、紛争続きの混乱した国というイメージを増大するものが大半でした。
 私自身、スーダンを訪れるまで、「アフリカの暗部を背負った国」というイメージを持っていました。けれども、今回実際に自分の足でスーダンの国内を歩き、車で何百キロも移動し、現地の人々といっしょに食事をし、国際協力の現場に赴いて、その印象はがらりと変わりました。
 お金はないけど、豊かな国。人々は暖かく、親切で、真面目。
 地理的に見ると、スーダンは本当に豊かな国です。アフリカ最大の国土面積を誇り、ナイル川の流域の大半を占め、肥沃な大地に恵まれ、地下水資源も豊富な上に、近年では石油の採掘も盛ん。大きな可能性を秘めています。
 にもかかわらず、現実のスーダンは、文明的な生活に必要なものが決定的に欠けています。病院が足りない。助産師が足りない。学校が足りない。水道設備が足りない。お金が足りない。平和が足りない。
 潜在的には豊かでも、現実的には貧しい。これがスーダンです。そんなスーダンの潜在的な豊かさを、顕在化させる手伝い、それが国際協力です。
 今回の連載企画では、日本ができる国際協力について、さまざまな分野の専門家にお話を聞くことになっています。
 スーダンは、今回の連載で語られる国際協力の全分野の対象となっています。すなわち、スーダンでの国際協力を知ることは、国際協力の全体像と個々の事例を知ることになる。
 私はスーダンにおける日本の国際協力の最前線を取材してきました。国際協力の現状と未来を私といっしょに見てみましょう。

スーダンで展開されている日本の国際協力。私たちが最初に取材したのは「医療の現場」でした。  スーダン北部の首都ハルツームにあるイブン・シーナ病院は、1983年、日本からの無償援助でできた専門医療施設。当時のお金で約30億円をかけて作られたこの病院は、スーダンの医療にとって大切な役割を果たしてきました。
 イブン・シーナ病院で私たちが見たのは、まさに国際協力の「光」と「影」でした。
 「光」とは、日本の国際協力によってできたこの病院が26年たった今でも、施設を大事に使い、スーダン人が自分たちで補修しながら、医療を続けていることです。ただハードを援助するだけでは、決してなしえないであろう、日本ならではの現場主義の国際協力が見事に花開いたのを、目の当たりにしました。
 一方、「影」は、皮肉にもこの26年前の施設そのものが象徴しています。26年前に日本から援助を受けた後は、新たな援助もなく、ずっと同じ施設が使われ続けてきました。時代遅れの機器ばかりです。施設のサイズも患者数からするともはや絶対的に小さくなってしまいました。
 スーダンは80年代以降の国内紛争のあおりで、国際社会から半ば見放され、アメリカからテロ支援国家の烙印を押されたこともあり、あらゆる援助が最近までストップしていました。施設を大切に使っているのは、代わりの施設がない、という事情もあったからです。
 近年、スーダンへの国際協力が再開され、日本をはじめ多くの先進国の機関が再び同国の援助を再開しました。スーダンの医療現場は今後どうなるのでしょう? イブン・シーナ病院の院長、ハムザ先生にお話を聞きました。

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池上病院の玄関口には日本の国旗とスーダンの国旗が並んでいましたね。

院長私の机の上にも、二国の国旗が並んでいます。1983年、日本からスーダンへの無償援助でオープンしました。以来、日本からの物心両面からの援助を受け、この病院はスーダンの医療の中心を担っています。援助が途絶えた時期もありましたが、近年はJICAが、スペアパーツの補充などの支援を再開してくれたため、なんとか病院機能を維持しています。現在、病院には75人の医師が勤務しております。

池上どんな医療を得意としているのですか?

院長内視鏡を利用した消化器の病気、耳鼻咽喉、それに腎臓や糖尿病ですね。スーダンは糖尿病の患者が非常に多いのです。

池上意外ですね、スーダンで糖尿病が多いというのは。

院長スーダン人は、飲み物に砂糖をたくさん加えて飲む習慣がありますからね。コーヒーにしろ、お茶にしろ。気温が高くて、乾燥しているから、飲み物を取る機会も多い。結果、糖分の過剰摂取に陥る人が少なくないのです。

池上26年前に日本の援助でできたということですが、今、いちばんの問題点は何ですか?

院長設備の老朽化、そして病院自体が手狭になっていることです。中でも深刻なのは、さまざまな治療に必要なX線機器が、故障して使えないことですね。26年前の施設をそのまま使っているわけですから、時代遅れにもなりますし、故障も増えます。ボイラーもいくつかは壊れたままですし。この病院自体も「治療」が必要な状態なのです。

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池上26年前の機器がそのまま使われているのですか! たしかに病院内を回ると日本の医療機器がたくさん設置されていました。なかにはガムテープで補修しながら、現役で利用されている機器もありました。

院長古い機器がなんとか現役で使えるのも、日本の援助のたまものです。1983年に援助いただいたとき、機器のメンテナンスの仕方を親身になって教えてくれました。私たちはその指導に沿い、以来、毎週月曜日は病院をお休みし、機器の点検、掃除、メンテナンスに努めてきたのです。病院をスーダン人自らの手で運用しよう、という習慣がつきました。

池上近年になって、日本をはじめ先進国の援助が再開されました。今後、何を希望しますか?

院長いま申し上げたように、機器の刷新を図りたいですね。現在、X線の設備のような専門病院には必須の機器がこの病院にはありません。CTスキャンやICUの設備だってほしい。また、患者数の増加に対応して、病院そのものの拡充も必要です。

池上たしかに、患者さんが待合室から廊下にまであふれていました。病院の規模ももっと大きくする必要があるのですね。

院長今年2月、私は日本のNGOの支援で岡山を訪れ、病院を見学し、日本の医学者の方々と意見を交換しました。
 スーダンの医療関係者は、アメリカ、イギリス、カナダで学ぶものもいますが、スーダン国内にもメディカルスクールが20以上あります。
 私は今こそ日本と医療においてより深い関係を築くべきだと考えています。私は日本との医者と看護師の交換留学制度を希望しました。
 今までにもスーダンには日本から医者と看護師の方がいらして技術指導などをしてくださいました。その頻度をもっと上げたいのです。スーダンには、まだまだ解明しなければいけない風土病があります。逆に言えば、こうした病気の研究にうってつけの場所ともいえます。日本の医療チームは、スーダンでの医療行為を通じ、こうした風土病などの最先端研究を行い、私たちは日本で最先端医療技術の研修を受ける。こうした関係が築けないだろうか、と考えています。

……院長はインタビューの後、自ら先頭にたって院内を案内してくださいました。お話にあったように、あちらこちらで日本が援助した日本製の医療機器が現役で活躍していました。古めかしい機器が、いまでもぴかぴかに磨かれて、ガムテープで補修されながら、ちゃんと使われているのを見て、感激しました。私たち日本人の税金が有効に使われている、と思ったからです。
 26年前の施設がいまだに現役で活躍し、きちんと維持管理されている。その裏には、ただ施設を援助するだけではなく、その使い方からメンテナンスの仕方、修理の仕方までを丁寧に教えてきた日本の国際協力の現場の人たちの努力がありました。まさに、病院を管理運営する「人づくり」が行われていたのです。日本が援助し、スーダンの人たちが維持管理する。国際協力の理想的な姿を見た感があります。
 この病院の入り口には、日の丸とスーダンの国旗の両方が掲げられています。26年間にわたって日本が援助した施設が維持管理されている。つまり、単にものをあげただけじゃなく、それを維持管理する人たちを育ててきたわけです。なるほど、これが日本ならではの国際協力のありかたなんだな、と思いました。
 しかし、丁寧に使われてきた医療機器を見て、同時に私は複雑な気分になりました。日本製の機器は、すっかり時代遅れの産物となっています。なかには修理の甲斐なく、使えなくなってしまった機器もあります。X線設備のように医療に必須の機器すらいまや不足しています。
 スーダンの病院にともされた日本の国際協力の火は、いまだに周囲を照らし続けています。この火が消えることなく、スーダンの医療にとっての明るい道しるべとなるように、私たちはお手伝いをすべきでしょう。

 スーダンに足を踏み入れた2日目、私たちは北部の首都ハルツームから南東に400キロ離れたセンナール州を目指しました。JICAのランドクルーザーに乗り込み、国道をひたすら走り続けて6時間近くかかります。
 同州では今、JICAがバックアップして、村落助産師の育成プログラム「マザー・ナイル・プロジェクト」が始動しています。その現場を取材しようというわけです。
 九州ほどのセンナール州は、ナイル川第一の支流、いわゆる「青ナイル」の流域に位置しています。人口は約140万人。肥沃な土壌を利用した農業や牧畜業が盛んで、ナイル川ほとりの市場には、野菜や果物があふれていました。トマトもナスもスイカもオクラも立派なサイズで、土地の豊かさを実感しました。
 ただし、センナール州では産業が発達しておらず、人々の現金収入は限られています。交通手段も不足しています。公共交通は乗り合いバスがあるくらいで、多くの人々は自家用車を持っていません。一部の国道を除くと、村を結ぶ道は舗装されておらず、雨季に雨が降ると自動車での通行が困難になるような状態です。
 このため、センナール州の教育や医療の遅れは顕著で、中でも深刻なのが、母子保健の問題です。母親と乳幼児の健康は、その地域の健康の一番大きなバロメーターです。途上国で平均寿命を一番押し下げる要因となっているのが、乳幼児と妊産婦の死亡率の高さだからです。
 今、日本の国際協力の手が、スーダンの母子保健の世界に伸びています。それが「マザー・ナイル・プロジェクト」です。話をお聞きするのは、プロジェクトのリーダーの専門家、城戸千明さんです。
 まずは、村の一角でお話をお聞きしましょう。

池上マザー・ナイル・プロジェクトについて教えてください

城戸マザー・ナイル・プロジェクトは、JICAがスーダン連邦保健省、センナール州保健省と協力して実施しているプロジェクトです。2008年6月から3年間をかけて、村落助産師のレベルアップを図り、母子の死亡率を減らすことが目標です。

池上具体的には何をするのですか?

城戸スーダンでは約80%の方が自宅で出産します。そのお産を担ってきたのは、主に村落助産師さんたちです。スーダンでは40年ほど前から、助産師を育成する学校があります。近代的な助産師さんを育成する基本的な仕組みはあったわけです。問題は、卒業後、助産師は新しい教育の機会を与えられたり、助産に必要な器具を補充されることがほとんどなく、政府の支援も行き届いていなかったことでした。そこで、連邦保健省と州保健省を支援し、現役の村落助産師たちのトレーニングを実施しながら、村落助産師のフォロー体制を整えよう、というのがマザー・ナイル・プロジェクトの取り組みです。

池上実際のトレーニング内容について教えてください

城戸今回モデル地区となったセンナール州には800近い村があります。一方、州内の村落助産師は600人ほど。ひとつの村に最低1人のトレーニングを受けた村落助産師を置くのがスーダン政府の目標ですから、この600人をきっちり研修しつつ、新規採用と訓練により、全体の人数も増やしていきたいですね。
 研修は1回20人が対象で、期間は1週間。州内の研修センターで行う集中講義と実習、それから最新の助産キットの中身の補充が主なプログラムです。細かな内容については、のちほど現場でお見せしますね。

池上苦労されているのはどんな点ですか?

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城戸トレーニングそのものには全員が熱心に参加してくださいます。ところが、そもそもトレーニングがあること自体を対象者である助産師さんたちに伝えることが難しい。さらに連絡がついても、九州と同じくらいの広さのセンナール州の隅々から研修センターに来てもらうのも大変です。とりわけ雨季になると未舗装道路はひどくぬかるみ、車でも走るのが難儀になりますから。
 さらに講師が足りないのも悩みの種です。連邦保健省が「十分なレベルに達している」と判断した講師はセンナール州に3人しかいませんから、なかなか研修がはかどりません。いま講師も増やすべく指導中です。
 識字率の低さも問題です。村落助産師のうち、十分に読み書きの出来る人は2割に過ぎません。保健データの収集のための記録用カードがあるのですが、内容を高度にして文字を増やしたら、ほとんどの村落助産師さんにとってわかりにくい内容になってしまいました。教育の充実を望みたいところですが、時間がかかる話だから、ここも悩みどころですね。

池上今日は村の女性たちが集まってくださいました。

城戸みなさん、この村のヘルスボランティアです。10人ほどいらっしゃいます。それから村落助産師の女性が2人います。

池上そちらの絵はなんですか?

城戸ヘルスボランティアや村落助産師さんに描いてもらった「理想の家族」の絵です。どんな家族のかたちが理想なのか、具体的にみなさんにイラストを描いてもらい、その中からベストデザインを3つ選んで、ポスターにしようと思っています。それがここに集められた絵というわけです。

池上みなさん、上手ですね。

城戸そうなんです。なかなか絵心があります(笑)。近代的なおうちと自家用車がいずれの絵にも描かれています。この2つが文明的な生活のあこがれの象徴だからです。さあ、村落助産師さんを紹介しましょう。ファイザーさんです。彼女は40歳で、8年の村落助産師経験があります。文字が読めるので、貴重な人材です。
(白い服装の背の高い女性がファイザーさん)

池上ファイザーさんの持っていらしたこちらの金属性の箱は?

城戸そちらが助産キットです。「マザー・ナイル」のロゴ・シールが貼られているのは、助産キットの中身が更新されたという意味です。トレーニングの際には、村落助産師さんも助産キットを持参してもらい、中身を点検したうえで不足分を補充しています。

池上ちょっとキットの中を見せてもらえますか?

城戸道具をつかむためのトング。それから母体用と乳児用のはさみがそれぞれ2つ。傷を縫うための針。消毒用の漂白剤。新生児の体重を量るスケール……。

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池上ファイザーさん、研修はいかがでしたか?

ファイザーすばらしい内容だったけど、ちょっと研修時間が短かった。感染予防についてもっと学びたかったですね。学校を卒業して以来の勉強だったから。この村では、月に4回か5回はお産に付き添っています。この子も3ヵ月前に私がとりあげた女の子。かわいいでしょう(といって、ドレスを着た赤ん坊を抱き上げる)

池上わあ、かわいいですねえ(と赤ん坊をファイザーさんから受けとって、抱く)

城戸北部スーダンはイスラム教で一夫多妻制で、1人の夫が3人くらいの妻を持っていることも珍しくなく、必然的にひとつの家庭の子供の数も多い。だからこそ母子保健を改善することはとても大きな意味があるんです。次は、トレーニングを実際にやっている研修センターへ行きましょう。

――村から数十キロほど離れたところにある研修センター。保健省の管理するこちらの施設が、今回のマザー・ナイル・プロジェクトの研修施設として使われていました。こちらでは、助産師の資格を持つJICA専門家、永野純子さんが、城戸さんとともに指導にあたっていました。

池上永野さんはいつからスーダン入りしたのですか?

永野1カ月前からです。プロジェクトがスタートした昨年も2カ月滞在しました。JICAの海外の仕事は初めてですが、思っていたよりも穏やかな環境で、のびのび仕事させていただいています。スーダンでは自宅分娩が中心ですが、日本でも自宅分娩はありますから、本質的に教えるべきことは変わりません。私も助産師として日本で研鑽を積んできましたので、仕事そのものにギャップは感じませんでした。

池上でも、衛生問題など、日本とずいぶん違うところもありますよね。

永野ええ、出産時の出血や衛生問題で亡くなるお母さんや赤ちゃんが多いのは深刻な問題です。そのあたりは、一から村落助産師さんに基本を教えていく必要があります。清潔な器具を使う、出産に関する基礎知識が増える……。ようやく講師たちへの研修が終わり、600人の村落助産師さんへの研修が始まったばかりです。限られた期間ですが、結果を出したいですね。

池上研修の成果は出ていますか?

永野ええ。1週間の研修でずいぶんと変わります。

城戸たとえば、研修後に試験の点数が伸びた人に話を聞くと、勉強をする機会をもらえたのがとてもうれしかった、助産師の仕事に誇りが持てる、もっとがんばろうといってくれます。
 村落助産師は、離婚経験者や、経済的に苦しい中年女性が目立ちます。識字率は2割程度ですから、研修でもテキストを配ったり、板書したりというかたちがとれない。なので、文字に頼らぬ、実践研修が中心になるんです。

池上どんな実践研修をやるんですか?

永野こちらでは、モデルを使って赤ちゃんを実際にとりあげるお産のプロセスを復習してもらいます。日本から持ってきた産前検診のモデルと分娩のモデルと産後検診のモデルの3種類を使います。20人を3つのグループに分けて研修を進めています。
 こちらのモデルでは、妊婦の腹部のチェックをやっています。赤ちゃんの位置を確認し、逆子だと村落助産師では扱えなくなるので、それがわかったら病院に連れていくことを教えたり、赤ちゃんの心音を聞いたり、貧血の兆候を確認したり、といった研修が今行われています。

池上こちらの部屋では、試験管を使っての研修をしていますね

永野妊娠中の尿の検査について学んでいます。妊婦検診は地域のヘルスセンターで行われることが多いのですが、村落助産師にもヘルスセンターで実施されている検診内容を理解してもらっています。村落助産師には、妊婦に産前検診の重要性を伝え、きちんと検診を受けるように呼びかけていく役割も期待しているからです。尿検査については、試験管を使う方法と、試験紙を使う方法(日本では一般的なやり方)を教えています。糖分を過剰摂取しがちなスーダン人の場合、糖尿病の傾向があることが少なくないので、糖尿病のリスクのある妊婦を早期に発見することも大切です。

池上そのほかに今後の課題は?

城戸マザー・ナイル・プロジェクトが始まって1年たちました。開始当初と大きく変わったのは、スーダン政府のカウンターパートの行政官たちの態度が前向きになってきたこと。最初は残業も増えるし、仕事が増えて大変、とぼやいてばかりだったのですが、研修を受けた村落助産師さんたちから非常に好意的な反応があったのをきっかけに、みんなの気持ちが切り替わりました。今では積極的にプロジェクトを推し進めてくれています。
 今後の課題は、自宅でお産をするのであれば、村落助産師に介助してもらう、という意識を根付かせることですね。村落助産師には出産を手助けした家族からもらう報酬が主な収入源です。現実には、助産師に支払う報酬を節約するためにお母さんが自力で産んだり、おばあちゃんに介助してもらったりするケースがまだまだ少なくない。こうした方法では、衛生面からも医療面からも危険が多い。死亡率も下がりません。村落助産師による介助を定着させるとともに、村落助産師のレベルを向上させ、妊産婦の死亡率を下げるようにしていきたいですね。

池上彰のまとめ
 センナール州で展開されているマザー・ナイル・プロジェクト。取材でうかがった村の人々はとてものどかで、大きな木陰には平和な空気が流れていました。女性たちはとてもおしゃれで色とりどりの衣装をまとい、男の子たちは無邪気で腕白で、女の子たちははっとするくらい美しくはにかみやさんで、男性たちはのんびりして人なつっこい。スーダンの人たちがすっかり好きになりました。
 日本人が失ってしまった豊かさが、ここにはある、と感じました。
 でも、その一方で、お金と知識と習慣がないがゆえに、母子保健の現場は立ち遅れています。あの平和で豊かな心の持ち主であるスーダンの人々が、そのよさを失わずに、近代的で衛生的な母子保健の仕組みを確立することを願ってやみません。日本の国際協力の最前線に立つ、女性専門家たちが実に頼もしく思えました。

世界で今何が起きているの? 日本が今出来る事を見つけたい!! 世界で今起きているいろいろな問題、JICA現地スタッフや関係者からのコメント、取材を通してわかった国際貢献の現状。 詳しく見る