池上彰よりINDEXおコメがアフリカを救う!「食料の問題」(前編)「食料の問題」(後編)
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「ネリカ検定」を坪井さんから授与された
ウガンダ在住の日本人のみなさん

池上実に楽しい見学でした。ありがとうございます。ところで、坪井さんはネリカ米を広げる取り組みの一つとして、ネリカ米について勉強したり、研修を受けたりした日本人たちに対して「ネリカ検定」の認定証を渡されていますよね。大変面白い取り組みだな、と感銘を受けたのですが、これはどのような狙いではじめられたのですか。

坪井ネリカ米を少しでも広げていきたいという気持ちからですね。実際にネリカ米に対してあまり良い印象を持っていない日本の方々もいるわけで、まずは、日本人の皆さんにネリカ米のファンになってもらいたいな、と思って始めたんです。

池上え、ネリカ米に良い印象をもたれていない日本人がいる、というのは驚きです。

坪井それは、ネリカ米の多くが、畑で育つ陸稲だからなんです。現在、日本のお米のほとんどは田んぼで作るいわゆる水稲です。陸稲を栽培しているのは茨城県のごく一部だけです。けれども1960年代に入るまでは、日本でも陸稲を広げる活動をやっていました。陸稲が廃れていった最大の理由は、日本がいわゆる「米余り」状態になったからです。水田でつくるお米すら余っているのに、さらに畑でお米を増産されても消費されない、というわけです。
 かくして陸稲は厄介者扱いされ、結果、陸稲にはネガティブな印象が20〜30年の年月をかけて日本の農業関係者に染み付いてしまい、ひいては「陸稲はおいしくない」という誤ったイメージがつきまとうようになってしまいました。
 日本の国際協力の分野でも、1970年ごろから主役は完全に水稲でした。水田をつくるための大きな灌漑プロジェクトをやってきましたし、私も92年〜2000年までコートジボアールとガーナで水稲栽培に取り組んでいました。
 ただ、アフリカの場合、乾燥地が大半のうえ、水田と灌漑の仕組みを作るのは並大抵の労力ではすみません。やはり、畑で育つ陸稲がアフリカには適している場合が多いのです。そこで、一人でも多くの陸稲ファンをアフリカで活動する日本人の中から育てていこう、と「ネリカ検定」の認定証を配っていったわけです。

ネリカ米のご飯と、牛と豆とバナナとサツマイモのスープ

池上村の食堂でさきほどネリカ米を沿えた牛肉スープと豆の和え物を食べました。ぱらぱらした食感は、スープにぴったり。おいしかった。カレーなどにも合いそうですね。

坪井アフリカの食事とネリカ米はとても相性がいいんですよ。

池上ひとつ思い出しました。私は東京の練馬育ちなのですが、小学校のすぐ近くに陸稲の畑がありましたね。昔は日本人にとって、陸稲ってごく身近なものでした。今の日本人は、お米は水田で作るものだと思っていて、陸でできる陸稲については意外に知られていないですよね。

坪井実際、私も陸稲を本格的に知ったのは、アフリカに来てからなんです(笑)

池上そうだったんですか! 水稲は大規模な灌漑施設が必要なだけに、米作りを知らないアフリカの方々にとっては、陸稲のほうが管理しやすいですよね。だからこそ、ネリカ米はウガンダの農業にとても適している、というわけですか。

池上さんも「ネリカ3級」になりました

坪井その通りですね、水稲では苗作り、苗取り、田植えと複雑な作業が必要ですが、陸稲は畑に播種溝を掘り、種を播き覆土するだけですから簡単です。今回は実にきめ細かに取材いただいたお礼に、池上さんにもネリカ検定の認定証を差し上げましょう。

池上え、私にいただけるんですか? うれしいですねえ。坪井さんに、「ネリカ検定3級」(※ネリカ米を素晴らしいと認識したら認定される)を頂きました。これが本当のサンキューですね(笑) 

ネリカ米がアフリカ全土を救う! 横浜で開かれたアフリカ開発会議で稲作の世界的支援が決まる

池上ネリカ米を主役にしたウガンダの稲作普及のお話をお聞きしてきましたが、アフリカ全土で米が普及する可能性はどれだけあるのでしょうか?

坪井実はいま、世界をあげてアフリカで米を普及させようという動きがあります。
 2008年5月末、横浜で第4回アフリカ開発会議(TICAD Ⅳ)が開かれました。アフリカ53カ国中51カ国の首脳が集結する、アフリカサミットともいうべき催しでした。
 ネリカ米の産みの親であるモンティ・ジョーンズ博士が出席し、私もウガンダからかけつけました。なぜかというと、この会議の目玉が、アフリカでの稲作をより具体的に振興するための戦略的イニシアチブ「アフリカ稲作振興のための共同体(CARD Coalition of African Rice Development)」の設立だったからです。
 紛争問題に悩まされ、経済成長の波に乗り切れず、人口だけは増大し続けるアフリカにとって、今でも貧困問題は最初に解決しなければなりません。そのときまず手をつけるべきは、農業生産性を向上させ、食料自給率を上げること。では、どんな作物でそれを実現するのが一番効率的か、と問うたとき、クローズアップされたのが、米だったわけです。
 アフリカの米生産はまだスタートラインに立ったばかり。これから、多くのドナーを巻き込み、アフリカ諸国で同時多発的に稲作を普及させ、食料自給率を上げ、米をお金に変える仕組みをつくっていこう、というのがCARDの狙いです。

CARD−JICAの取り組みについて

池上まさにアフリカ版「緑の革命」ですね。具体的にはどう進めていくのですか?

坪井具体的には、まず、ウガンダ、コートジボワールをはじめ、ブルキナファソ、タンザニア、ナイジェリア、モザンビーク、セネガル、マダガスカル、ギニア、シエラレオネ、マリ、ガーナなど10数カ国をパイロット国とし、私がウガンダで進めてきたように、各国で稲作の栽培技術、人材育成、灌漑施設の導入、最適な品種の開発と投入を行っていきます。

池上ネリカ米の位置づけは?

ナムロンゲ研究所職員。
ウガンダ人のスタッフが育っている

坪井よくぞ聞いてくれました(笑)。この計画の切り札となるのがネリカ米なのです。すでにウガンダなどで実績のあるネリカ米をCARDのスタートに伴い、一気にアフリカの標準米として普及していこうという方針です。最終目標は10年間でアフリカの米生産量を1400万トンから2800万トンに倍増させること。ネリカ米での成功体験から言わせていただくと、決して実現不可能な数字ではない、と思います

池上アフリカ開発会議で坪井さんも発言されたのですか?

坪井はい。「アフリカ稲作振興のための共同体〜アフリカにおける緑の革命に向けて〜」セミナーが開かれ、ジョーンズ博士や私もパネルディスカッションに参加しました。ジョーンズ博士は「各国の農民にCARDへの積極参加を呼びかけたい」と訴え、私はウガンダで行っているネリカ米の栽培事例をプレゼンし、ネリカ米で米増産が可能であることを説明しました。JICAの大島賢三副理事長は、日本が30年以上もアフリカで稲作普及のお手伝いをしてきたこと、ゆえにCARDにはより大きな協力ができることを、アフリカの首脳陣にお話ししました。

池上坪井さんご自身の今後の目標についてお聞きしたいと思います。依然としてウガンダはまだ米の輸入国です。ウガンダ国内で米を完全自給できるようになるまでは、どれくらいかかると考えていらっしゃいますか?

坪井およそ5年後だと考えています。その後、輸出国となっていくかはわかりませんが、私が心配しているのは、農業はとても時間がかかるプロジェクトなので、それまで農家の人たちのモチベーションをいかに維持していくかということですね。

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