池上彰と考える!ビジネスパーソンの「国際貢献」入門 すべての礎である「教育の問題」ゲスト:JICA 客員専門員(教育) 原 雅裕 氏

池上10年前にラオスで 日本の国際協力の活動を見て感心したことがあります。そこでも、原さんが実践されたように、専門家の方が村人にとことん話し合いをさせていました。そして自分たちが本当に欲しいものを自分たちの手で作り上げていく。自分たちで作ったものだから、もし壊れても自分たちで直して大事に使っていくんだろうな、と思いました。日本の国際協力機関はそのような現場主義の成功モデルを作って広めていくのが得意なような気がします。

日本は小さな町工場も世界水準のすごい技術を持っているように、現場レベルでものを見たり、発信したりする文化的な土壌があるように思います。そういうものが日本の国際協力の特徴であり、強みなのかもしれませんね。

池上巨額の援助金でドカンと箱物を作るというのは、見た目のインパクトはありますが、その維持の仕方をセットで教えなければ、箱物の場合、壊れたらそれっきりですものね。スーダンで、1983年に日本が援助してできた病院施設が今でも機能しているのは、日本の専門家がスーダンの人々に施設の維持管理法をちゃんと伝授したからでした。

国際協力というと、モノを作ったり、あげたりすることを連想するかもしれませんが、モノやお金の供与と住民参加は必ずしもリンクしません。そこをどうつなげていくかが難しいところです。

池上難しいけれど、大事なポイントですね。

子供たちの未来を教育改革で支えよう

ニジェールでは自分たちの力で学校を建てなおそうとしていますが、それには限度があります。住民の努力に沿ったかたちのサポートが、教育省や地方政府から得られるのが理想です。理想の姿に近づくために、今はJICAを初めとする援助機関が、一時的に住民と政府をつなぐ役割を果たし、時には途上国政府の代わりに、モノやお金の面でも支援を行う。しかし、今までは藁葺きの教室を使っていた村に、天から降ってくるみたいに立派な教室が建ってしまうと住民はかえってやる気をなくします。いずれは途上国政府が自分たちの予算から賄わなければいけなくなるお金だということを、支援する側も、される側も、自覚を持って、お金の出し方や使い方を一緒に考えていけば、住民参加との相乗効果が出るようなモデルが見つかるはずです。
 どうすれば、現地の人たちのやる気を維持し、自主性を重んじながら、ハードやインフラを援助することができるのか。国際協力を実践するにあたって、一番重要なポイントでしょう。

池上モノやお金の援助ありきで話が進むと、何もしなくても手に入るのに、なぜわざわざ自分たちで作らなければいけないのか、と、住民参加の意欲が失われるわけですね。建ててあげようというのは善意ですが、やり方によっては住民の自立を妨げることもある。「援助はいつか終わるもの」ということを現地の人々に理解してもらうことは、国際協力において忘れてはいけないポイントだと思います。

今後、クリアすべき課題としてもう一つ大切なのは、国際協力の総合的な改善です。小学校建設、技術プロジェクト、水問題など、現地にはいろいろな国際協力のニーズが同時に存在していますが、それぞれのプロジェクトは区分けされ、別々に動いています。
 このようなジャンル分けは援助する側の都合にすぎません。住民の意思で区分けしているわけではないのです。

池上井戸や水道が整備され、子供たちが水汲みに行かなくてもよくなれば、学校に通えるようにもなります。住民側としてはすべてのニーズがつながっているんですよね。

そうなんです。住民のニーズに合わせて総合的な改善を進めていくことができれば、別々のプロジェクトを押し付けで行うよりはるかに効率的です。おそらく2、3倍の効果が出るのではないでしょうか。でもそれを実践するには、現地の人や政府にいたるまで、現地のさまざまな段階でのニーズをきちんとらえ、我々援助機関がパイプ役となる必要があります。

池上そのあたりは日本が得意とするところですね。政策対話により、援助方針や援助の内容の決定に関与することが多い欧米のドナーにはない強みではないでしょうか。

現地の人たちが本当に望んでいるようなきめ細かいプロジェクトの実行を日本の国際協力機関 が実現できれば、素晴らしい成果を残すことになるでしょう。援助についての世界モデルになれると思います。

池上彰の「教育の問題」を理解するための3つのポイント POINT01 学校教育を浸透させるには、子供だけでなくまず親を教育しよう POINT02 成果を住民に見えるようにすることで相乗効果が生まれる POINT03 援助側の都合ではなく、住民のニーズに合わせた総合的な改善策を考えよう

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