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女性ばかりがなぜ目立つ 日本の国際協力はもっと外向きに

池上国際協力の世界における日本の存在感はかなり大きいのでしょうか。

緒方残念ながらそうとは言えません。いま日本は人も国も内向きになってしまっている。その方が楽だからでしょう。食べ物の心配もないし、何もかも秩序だっている国内で暮らしているほうが楽ですから。わざわざ苦労をして危ないところへ出かけ、批判されようが、とにかく世界を舞台に働こうという意思のある人が減っているのかもしれません。

池上私が学生の頃はだれにでも「世界で活躍したい」というような思いがあったような気がします。就職活動のときにも、それを意識していました。最近は二極化しているかもしれません。根っからの国際派がいる一方で、海外勤務どころか国内での転勤もいやがる人が増えているという話も聞きます。

緒方幸い、JICAの場合、応募者の数は減っていません。かつての池上さんのような学生がたくさん門を叩いてくれます。青年海外協力隊への応募もかなりあります。日本全体は確かに内向きになっているかもしれませんが、日本の若者は捨てたものではない、と思っています。少々楽観的すぎるかもしれませんが。

池上今回訪れたウガンダやスーダンでも、以前足を運んだラオスでも、国際協力の現場でたくさんの若い日本人が活躍するのを取材しました。最近目立つのはなんといっても女性ですね。

緒方女性はとても元気です。青年海外協力隊もいまやおよそ6割が女性です。

池上男はちょっと元気がないのかな。

緒方日本の男の子は家で大事にされすぎたのではないですか。その点、女の子は往々にしてほったらかされてきましたから、元気がいいのかもしれません。

池上一方で日本の企業社会が、元気な日本女性の能力を発揮できる場を作りきれていない、ということもあるのでは。スーダン南部の首都ジュバで援助活動を行っている国際機関やボランティアの日本人に集まっていただいたら、ほとんどが女性でした。髪を洗う水にも事欠くような不便な地域で大勢の日本人女性がはつらつとしかも肩の力を抜いて働いている。驚きました。彼女たちに話を聞くと、日本に帰ると就職先がない、というんです。どういうことなんだろう、とこれも驚きました。

緒方前の国連事務総長のコフィ・アナンさんから、こんな話を聞きました。事務総長時代、日本政府から「もっと日本人を国連など国際機関で採用してください」といった要請を受けたそうです。ところが、アナンさんによると「日本の男性は途中で辞めて日本へ帰ってしまう」というんですね。「女性の方が頑張ってくれるんです」。さらにアナンさんに聞くと、「どうも日本の男性は、途中で帰国しても就職口があるらしいんです、女性だと働き先がないらしい」と。

池上国際協力の最前線で仕事をしても、女性の場合、日本に戻ってきたら就職口がない。退路が断たれている、ということなんですね。緒方さんはいかがでしたか?

緒方どうでしょうか。ただ、期待はされていませんでしたし、留学にしても何にしても、自由にさせてもらったから、こうした仕事ができたと感謝しています。

日本のビジネスパーソンに期待します もう一度海外に目を向けよう

池上JICA、そして日本の国際協力における今後の課題はなんでしょうか。

緒方貧しい国の貧しい人々、そして、伸びてきた国の貧しい人々への目を行き届かせることです。2000年9月の国連ミレニアムサミットで採択された国連ミレニアム開発目標(ミレニアム・デベロップメント・ゴール、MDGs)でも言われているように、底辺にいる人々への福祉の提供は大きな課題です。しかし、その実現には、経済的な基盤の整備が必要です。これは、2008年5月に横浜で開催されたアフリカ開発会議(TICAD)でも大きな課題としてとりあげられました。

池上では、日本は何をすればいいのでしょうか?

緒方二段構えで取り組んでいくことだと思います。まず途上国のインフラを整え、経済的な発展ができるようにする。そのように自国で成長できるような土台を作った上で、今度は福祉などを充実させる協力を行う、というわけです。先日、ジンバブエの首相にお目にかかりましたが、日本の援助でザンビアとの間に橋が開通したことを大変喜んでいました。国境を結ぶ橋という物流インフラができたことで、それまでに実現できなかった経済活動が見込めるようになったということでしょう。
 福祉は大事なのですが、それだけではダメなんです。まず経済的な底上げをする。そうすると人々の生活も安定していきます。経済的な基盤を作らなければ、社会や文化や教育はうまく動かない。国家間の協力体制だけでなく、自治体と自治体、あるいは企業と企業、NGOとNGOの関係も深め、さまざまな段階での協力を通じて、問題を解決すべきでしょう。

池上日本のビジネスパーソンには、どんな国際協力ができるでしょうか。

緒方日本の持っている技術を広めていくのも、重要な国際協力ですし、またそれはちゃんとビジネスになると思います。海外でビジネスを展開していくとき、日本側だけではなく、その国とそこに住まう人々にも裨益する方向に考えていただければ、それが結局は回り回って、ビジネスにもプラスになるでしょう。

池上途上国の経済が豊かになり、人々が豊かになるお手伝いをすれば、市場が育つし、雇用環境も成長する。そうなれば、日本のビジネスもうまくいく、ということですね。

緒方そうです。そういう意識と視点をもって仕事をしていただきたいと思いますし、すでにそうお考えの方もいらっしゃるでしょう。最近では年間所得3000ドル未満の世界の貧困層40億人を成長市場とみなすBOP(ベース・オブ・ピラミッド)ビジネスへの関心の高い方も多いと聞きます。アジアやアフリカで援助を行ってきた国々が経済的に発展しようとしているわけで、この分野で活躍してくださる日本のビジネスパーソンが増えれば、世界にとっても日本にとっても喜ばしいことだと思います。

池上今回の連載企画が、日本のビジネスパーソンの意識を高める一助になればと思います。ありがとうございました。

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