ジェノバ・サミット・G8コミュニケの読み方

28 JUL. 2001
JICA客員国際協力専門員 杉下恒夫

昨年の沖縄サミットは、帰国前のクリントン大統領が「今年のサミットは開発サミットだった」と会議の印象を語ったほど開発協力の問題が多く語られたが、今年のジェノバ・サミットも沖縄に負けず劣らず開発問題の論議に多くの時間が割かれたサミットだった。残念なのは昨年同様、今年も日本のマスコミは、そうした会議の本題にあまり触れず、自分たちが関心を持っている世界経済や安全保障の問題、それに場外で“活躍”した反サミット、反グローバリズムのデモなどに重点を置いて報道したので多くの日本人は、今年もサミットの主役が何であったのか知るすべはなかった。

G8コミュニケを見ても「貧困削減のための戦略的アプローチ」に3項、「債務救済及び債務救済を越えた取組」にも15項が割かれ、開発問題に関連する「ITが提供する機会(デジタル・オポチュニティ)」や環境問題にふれた「将来への遺産」の項まで加えたらコミュニケは開発関連問題に占拠されているといっても過言ではない。ただ、ホスト国イタリアの準備不足のせいもあって、開発援助関係のたくさんの文言が並べられてわりに目玉になるような話が少なかったのも事実だ。

G8で首脳たちが13億ドルの拠出をコミットした感染症と闘うための世界保健基金(エイズ基金)にしても先の国連エイズ特別総会宣言の二番煎じという印象は免れないし、23か国が総額530億ドルの債務救済適格国となったことを誇った拡大重債務貧困国(HIPC)イニシアチブについても一昨年のケルン・サミットでの首脳合意の枠から大きく進んだものではない。IT支援も昨年の沖縄サミットに比べると、だいぶトーンダウンした感じだ。しかし、「援助疲れ」と言われて久しい先進国の首脳会議で、開発途上国の問題が数年にわたって会議の主題になったということは、アメリカなど援助意欲が著しく衰えている国の政府開発援助(ODA)に対する関心を呼び戻す効果も期待され、全く無駄な会議だったわけでもないと思う。

外務省のある経済協力局幹部の意見も私と同じだったが、ジェノバ・サミットのコミュニケを読んでいて私が大きく頷いた個所は「貧困削減のための戦略的アプローチ」の中にある14項だった。この項は短いので、ここで外務省の日本語仮訳から全文を引用するとこういう文章が書いてある。「政府開発援助(ODA)は、不可欠である。我々は、開発援助の有効性を強化し向上することにより、『国際開発目標』を達成するために開発途上国と共に努力する。我々は、援助の有効性を高め、ドナー間のよりバランスのとれた努力分担を達成するようなOECDのDACによる画期的なLDCアンタイド化勧告を実施することをコミットする」というものだ。

LDCアンタイ化について日本は必ずしも両手を挙げて賛成する立場にはないが、日本はすでにLDCアンタイ化に向けて多くの努力を続けており、実績も挙げている。コミュニケで日本代表が「是非、入れてくれ」と頑張ったのは、同項にある「ドナー間のよりバランスのとれた努力分担(achieve more balanced effort-sharing among donors)」という一文だったという。HIPCの問題にしても世界一の援助国である日本は、援助額に相応する負担が求められるため、結果として他の援助国よりも多くの負担をさせられるケースが目立つ。この一文には「途上国への経済協力において、特定の国(日本)にだけ多くの負担を負わせることなく、ドナーは分担して努力せよ」という日本から他の援助国への強烈なメッセージが込められているのだ。

日本の努力でこの文言が入ったことは喜ばしい。あとは各国首脳がこの文言を入れた意味をどこまで誠実に解釈したか、ということになる。コミュニケの行間の意を解してODAへの関心を増大してくれれば、越したことはない。