マスコミは、なぜ、国民のODA支持率上昇を取り上げないのか

vol.44 20 Feb 2002
JICA客員国際協力専門員 杉下恒夫

内閣府が毎年、実施している「外交に関する世論調査」の結果が2月2日に発表された。事前に聞いていたとおり、ODAに対する国民の支持率は、久しぶりに上昇に転じていた。さて、これについてマスコミの報道ぶりは如何かと、翌3日の新聞を楽しみにしていたのだが、残念ながら私が見た限りでは、どの新聞にも「今後の経済協力のあり方」という質問項目に対する回答結果を取り上げた記事は見当たらなかった。

日本のマスコミが以前からODAに対する国民の支持動向に関心を持っていないというのなら、今回の調査結果を無視したことにもある程度の理解は出来る。だが、昨年まで多くのマスコミは、ODAに対する国民の支持率の変化に関心を示し、少なからぬ紙面を割いていた。例えば、一昨年の産経は「ODA抑制論また最高」と4段見出しの記事を書き、昨年も朝日が「ODA消極派最多 不景気の影」という3段記事を、読売も「途上国への経済協力削減論が最高の22%」という2段の記事を掲載している。

確かにここ数年、国民のODAに対する支持率は低下している。だから、基本的にはこれらの記事に誤りはないのだが、一昨年(当時は総理府調査)の産経の記事を例に取ると、見出しに「ODA抑制論また最高」とは書いてあるものの、この年の調査結果をよく読んでみると、「積極的に進めるべきだ」という人は前年調査より1.2ポイント、「現在程度でよい」という人も前年より0.4ポイント、ともに増えており、「やめるべきだ」という人も1.1ポイント減っている。他方、「なるべく少なくすべきだ」という人が0.8ポイント増えていたが、記事はこれだけを取り上げ、全体としてはODA肯定派が増えていることをねじ曲げて伝えていた。

概してODAに対する世論調査でマスコミは、国民の支持が減少していることに関心を示す。調査結果にマイナス要素を探し出し、そこを書くという傾向がある。そうしたマスコミの過去の習性から勘ぐれば、今回の調査結果はいくらネガティブな数字を探しても見つからないので、記事をボツにしたのではないか・・・・。少なくとも「ODAに対する国民の支持率が落ちている」と報道し続けてきたのなら、久しぶりに支持率が上がったことを報じないのは、バランスを欠き、公正なマスコミの目とは言い難い。

「新聞では書かない情報」という週刊誌的言葉を使ってこのコラムで、改めて今回の世論調査の結果をお知らせしたい。

今回の調査では「(ODAを)積極的に進めるべきだ」と答えた人は、24.7%(前年比1.7%増)、「現在程度でよい」とした人は49.8%(同8.4%増)だった。これに対し、「やめるべきだ」とした人は2.8%(同2%減)、「なるべく少なくすべきだ」という回答は16.5%(同5.8%減)、つまり、ODAの現状を肯定する人の率が合計74.5%で10.1%も増加したのに比べ、否定する人の率は合計19.3%で7.8%減ったという結果だったのだ。

日本のODAが実績額世界一の座を窺う直前の88年の調査では、現状維持派が83.7%で、否定派は7.9%しかいなかったが、その後、10年以上、世界一の援助国の座を守り、国内の景気が後退するなどのODAを取り巻く環境の変化で、支持率は長期低落傾向下にあった。

それが久しぶりに急上昇したことはニュースだ。それをどのマスコミも報道せず、背景を探ろうとしないのは、どうにも理解できない。

ちなみに私は支持率上昇の背景は、ニューヨークのテロ事件後、アフガニスタンの実情を知った国民がODAの持つ予防外交的効果を認めた結果だと信じている。