首を伸ばして世界を見渡そう

vol.156  19 December 2006
JICA客員国際協力専門員 杉下恒夫

12月16日付けの読売新聞に同社とアメリカ・ギャラップ社が実施した「日米共同世論調査」の結果が掲載されていた。北朝鮮の核問題などに日米両国民が共に危惧を抱いていることや、両国民が自国の対中関係が最近、好転していると判断していることなど、最近のアジア情勢を反映した結果になっている。

質問の1つに「信頼している国内の組織や公共機関は何か」というのがあった。この質問への回答はアメリカ人が(1)軍隊(2)病院(3)警察・検察(4)学校(5)教会の順だったのに対し、日本人は(1)新聞(2)裁判所(3)自衛隊(4)病院(5)首相の順だ。

調査を実施したのが新聞社であることを割り引いても、新聞が国民から一番信頼されている組織であるのは、元新聞記者としてはうれしいことである。だが、日本の新聞がそれだけ国民から信頼されている組織なら、新聞社で働くジャーナリストたちはいっそう身を正して真実の報道に励み、誤解を招くような雑な記事を書かない努力が求められる。喜んでばかりはいられない、厳しい結果なのかもしれない。

それはともかく、この世論調査の結果に対して本コラムで言いたいのは、ある質問に対する日米両国民の大きな意識の違いだ。その質問は「世界各地で起きている紛争や対立の中であなたが関心をもっているものを選びなさい」というもので、日本では「北朝鮮の核・ミサイル開発問題」を挙げた人が最も多く(92%),アメリカでは「イラクの武装勢力の活動」がトップ(89・5%)だった。両国民が自分たちに生活を脅かす身近な問題を一番に挙げたのは当然だが、日本人は北朝鮮以外の国際問題となると急激に関心が低くなる。

アメリカ人は北朝鮮の問題にも高い関心(87・6%=-2位)を示しているほか、「イランの核問題」、「イスラエルとパレスチナ問題」などにも80%台の関心を示しており、北朝鮮問題を除けば、すべての紛争、対立問題に日本人よりも関心が高い。

北朝鮮問題に次ぐ日本人の関心事は「イラクの武装勢力」(76・7%)、「イランの核開発問題」(75・7%)で70%台を保っているが、それ以外は軒並み60%台以下だ。「アフリカ各地の内戦」は38%(米国民は57%)、「アメリカとベネズエラの関係」となるとたったの19・5%(同45・6%)になる。アフリカや中南米の問題に関心を持っている少数派の方々には申し訳ないが、どうも多くの日本人は遠い世界のことは関係ないと思っているようにも見える。

アメリカ人は世界の警察たる国家の民なのだから、いろいろなことに関心をもつのは当たり前、といえばそれまでだが、世界の平和と安定の構築に向けて努力をするのは、人類の共同作業でアメリカ人だけの仕事でない。同様の調査を英仏独など主要先進国で行っても、おそらく日本人より高い関心を示す結果が出るに違いない。

第二次世界大戦という大きな代償を払った出来事を経ても日本人は、世界情勢を町内会のように局地的に捉え、それ以外のことをあまり知ろうとしない民族性がなかなか改まらない。地球は一衣帯水の小さな惑星であり、世界の問題はつねにどこかで繋がっている。幅広い視野から世界を見直すことで、暗礁に乗り上げた難交渉の解決策を見つけた経験をもつ人も多いはずだ。

日本人がもう少し地域以外の国際問題にも目を開いて、共に解決策を模索する姿勢を持つと、自分たちが今、一番気にしている北朝鮮の問題にも新たな解決策が見えてくるかも知れない。首を伸ばしてもう一度世界情勢を見渡してみよう。