今年も年初恒例の嘆き節

vol.157  15 January 2007
JICA客員国際協力専門員 杉下恒夫

1月末からの通常国会で2007年度の予算審議が始まる。昨年末に決定した政府案は一般会計総額が約83兆円、2006年度の当初予算を約3兆2000億円(4%)上回る2年ぶりの80兆円台予算だ。だが、実態は苦しい。新規国債発行額が減り、プライマリー・バランスの赤字も減ったというものの、さらに新たな借金を積み重ねることに変わりはなく、長期債務残高は増え続け773兆円、国内総生産(GDP)比で148%もの債務を持つ超借金国である国家の姿は同じだ。

そんな危うい国家財政のことを考えれば、仕方がないこととも言えるのだが、8年連続となるODA予算の削減には、どうしてもクレームを付けないと気がすまない。2007年度ODA予算は政府全体では7293億円。前年度比4%という大幅減だ。毎年、こんな計算をするのも辛いが、最盛期の97年度ODA予算の約62・4%にまで落ち込む。前年比0・3%減で抑えられた防衛費、3・5%減だった公共事業関係費など他の主要経費の削減幅と比べてもODAの削減幅は大きく、ここ数年のODA予算の減少だけがひどく目立つ。

来年度ODA予算削減の内訳を見ると、JBICへの交付金は200億円(33%減)とばっさり切られている。だが、これは近年の円借款の返済状況などを考慮すれば、あまり文句は言えまい。これに対し、無償資金協力は感染症対策が15億円、草の根・人間の安全保障が10億円、復興開発支援無償が54億円削られた。新規の貧困削減戦略支援無償に6億円のほか、水資源・環境支援が10億円、コミュニティ開発支援が2億円増額しているが、トータルでは計46億円もの削減(2・7%減)だ。JICA交付金は19億円(1・2%減)、国際機関への分担金、拠出金も26億円(4・6%減)削られており、これらの削減は来年度のODAの実施にかなりのダメージを与えることは必至だ。

こうした逆風の中でもミレニアム開発目標(MDGs)の達成や、アフリカ支援に貢献する予算をひねり出している予算担当者の努力は評価したいが、国の基本方針がODA予算削減である限り、どんな個人的努力も所詮は歯が立たず、空しい結果になる実証でもある。

いうまでもなく安倍政権が理想として掲げる日本の姿は「美しい国」である。「美しい国」とはどんな国か、ということについては政権発足後、文化的、倫理的見地等から様々な論議がなされてきた。ここで今更、蒸し返す必要もないが、地球規模問題や国際社会の弱者に支援の手を差し伸べる国家も「美しい国」であることは間違いない。

身近な話に置き換えれば、わが家の家計が苦しいからといって、自分の家の収支にだけ目をやって、他人のことは構わないという人よりも、自分たちも切り詰めるが、苦しいながらも自分たちよりもっと困っている人たちを助ける人のほうがずっと美しいと評価されるだろう。

国家も同じだ。国家財政が厳しいからといって、10年間で約40%もの国際協力のための予算を削ってしまった国を、貧困撲滅に団結して立ち向かおうとしている世界の国々がどう見るか自明である。2011年の当初予定よりも早くプライマリー・バランスを正常化できたとしても、国際社会、特に貧困にあえぐ国々の人たちは、日本政府をほめてはくれまい。政府の当事者たちだけが自分たちが成し遂げた数字の結果を美しいと思っても、それは世界という鏡が見えない自己満足に過ぎない。

冒頭にも述べたように日本は多大の長期債務を抱え、財政再建が急務であることは認めるが、まがりなりにも2007年度予算のように4%の歳入増がある予算の中で、削りに削ってきたODA予算をまた削減するのは、国際的に見てもうまくない政策だ。今更、抗議しても詮無いことではあるが、半年後には始まる2008年度編成作業では、麻生外相がいう『いい年』になった日本に相応しい国際責務を自覚した予算づくりを目ざしてもらいたいものだ