ODA実績と国連分担金が及ぼす今後の影響は?

vol.162  26March 2007
JICA客員国際協力専門員 杉下恒夫

先日、東京.内幸町の日本記者クラブでOECD/開発援助委員会(DAC)の「開発協力報告書2006年版」の事前発表が行われた。当日、提供された資料には2006年のDAC加盟国のODA実績が、22か国合計で前年よりも約60億ドル少ない987億ドルになる見通しで、一人当たりの総国民所得(GNI)比では、前年の0.33%から0.30%に下落するという予測が示されていた。

当日の資料は、あくまでDAC独自の推計値で、正式な数値は各ドナーと調整したあとに4月上旬に発表される予定だ。外務省によると日本の2006年実績は111億ドル前後になる見込みだという。実績に関するコメントは正式な発表を待つが、正式発表でもアメリカの1位は変わらないだろう。日本、フランス、イギリス、ドイツで構成される2位から5位グループ間の数値がいずれも僅差ということになることも間違いない。

「そんな実績値にこだわる必要はない。要は如何に内容のある援助を行うかだ」などという声も聞こえるが、政府が1978年に第一次中期目標(3年倍増計画)を発表して以来、DACが発表する実績を日本の国際貢献の縁としてODA取材を続けてきた身としては、やはり実績の増減と順位は気になる。2位のアメリカを約50億ドルも引き離してDACのトップ・ドナーとして燦然と輝いていた90年代が妙に懐かしい。

この日の報告書を発表したDACのマニング議長は「将来、日本の援助政策がどうなるのか、そのポジションが興味深い」と語っていた。また、日本のODAの現状についてマニング議長は「日本が多大な債務を抱えて財政的に厳しい状況にあることは十分に承知している。だが、2008年にサミット(主要国首脳会議)やTICAD(アフリカ開発会議)を日本で開催することに加え、2005年から2009年の5年間に2004年レベルの実績から100億ドル増やすという国際約束をしていることを評価したい。DAC議長として日本はこれからも国際社会と協調しながら、途上国支援に大きな貢献が出来ると確信している」という見解を述べていた。

しかし、「2009年に日本が100億ドル増の国際約束を達成したあと、急速にODA予算を削減することも心配だ」と、チラリと覗かせた不安が本音だったろう。

これからのODA全体について、加盟国全体のODA実績は、2005年に総額が1000億ドルを超えたが一時的に減少、しかし、2008年から再び盛り返し1000億ドルを突破、2010年には1300億ドルに迫るだろうという前向きの予測をDACは立てている。サウジアラビア、トルコ、韓国などDAC非加盟国も援助を増やしており、援助総額内で非加盟国の比率が高まることも予測している。ゲイツ財団のような民間組織の援助額も増えると予測されるだけに、日本がこのままODA予算を削り続けていると、開発援助の世界全体における存在感が薄くなるという環境は着実に進行中だ。

負担額のわりに発言権がないと批判する人もいた国連の通常予算分担金比率は、日本経済の不調を反映して、07年から09年はこれまでの19.5%から16.6%に大幅に低下した。苦しい国家財政の中、分担金が減ったことを喜ぶ人もいるだろうが、日本がこれからも平和な経済国家として国連を舞台にした発言権を維持したいと思うなら喜んではいられない決定である。

減り続けるODA予算によって低下することが危惧されるDAC内での影響力、分担金の減少で発言力が弱まることも心配される国連、国際社会での日本の環境変化は、近い将来にあまり歓迎されない結果を出すだろう。DACは債務削減や有償資金協力で実績値を維持している日本に批判的で、日本離れしてしまったようにも見えるマニング議長の話を聞いていて多少、さみしい思いがした。