アジア向けODAも忘れずに

注)本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、JICAの公式見解を反映しているものではありません。

vol.189 29 May 2008
JICA国際協力専門員 杉下恒夫

5月28日からの「第4回アフリカ開発会議(TICADIV)」開催を前に政府から各種のアフリカ支援策が表明された。温暖化対策への資金援助、一村一品運動の拡大など盛りだくさんの支援策の中で、一番注目を集めるのは、やはり今後5年間でアフリカ向けODAを倍増する方針だろう。

倍増の基準値をいつにするのかなど、TICADの前の現在(5月23日)の段階では細部は不明な点も多いが、対アフリカODAが今後、増額されることは間違いない。日本は2005年にも対アフリカODAを「3年で倍増する」という約束をしているが、これまでの実績額では債務削減などの比重が高く、いわゆる“真水”部分で倍増とはなっていない。今度の方針は“真水”の増額となる予定だから、受け取り国にはうれしい援助となるだろう。

アフリカの援助ニーズが高く、日本も政治、経済面でアフリカから多大のリターンを受ける可能性があり、人道面も考えて対アフリカODA増額にいささかの反対もしないが、気になることもある。それは日本の懐ぐあいだ。

具体的な09度予算編成はまだ始まっていないが、すでにジャブの応酬は始まっている。教育、公共事業、福祉予算などに各方面から増額を求める声が高まる中、財務省は2011年度までにプライマリー・バランスの黒字化を目指す「骨太の方針」を堅持することを確認して財布の紐を締めている。国会やマスコミなどから湧き上がるODA増額要求に対しても、「例外は作れない」と一歩も引かぬ構えだ。ODA予算が増えることは大歓迎だが、昨今の財政事情を冷静に考えれば、残念だが来年度ODA予算の増額は極めて難しいだろう。

となると、対アフリカODA倍増は、ますます縮小するODA予算のパイの奪い合いという状況を生み出す危険が大きい。つまり、対アフリカODAが増えるということは取りもなおさず、アフリカ以外の地域へのODAが減るということになるからだ。

2005年の日本の二国間ODAの回収額を差し引いた支出純額ベースの地域別配分は、アジアが36.6%、中東が33.2%で、アフリカは10.8%で3番目だった。OECD/DAC加盟国の2005年の地域別実績を見ると、アフリカに一番多く援助をした国はフランス(全援助額の18%)、続いてイギリス(16.5%)、アメリカ(15.8%)、ドイツ(11.1%)が続き、日本は主要援助国には入っていない。(2006年統計では中東にカウントしていたスーダンをアフリカに含めたことなどにより対アフリカODAは、一気に日本のODA総額の34.2%に膨れ上がって地域別のトップになっている=2007年版「日本の国際協力」より)

アフリカや中東向けODAが増加したことで、1980年には全体の70.5%を占めるなど歴史的に日本のODAが集中していたアジア地域へのODAは相対的に減少している。対アジアODAが減っている背景は目覚しい経済成長によって援助ニーズが減っていることが大きいが、日本のODAの軸足を簡単にアジアからアフリカに移して良いのだろうかという気もするのだ。

前述のようにアフリカへのODAは欧州諸国が主導し、中南米はアメリカ、旧宗主国であるスペイン、中東は政治、経済の戦略面からアメリカ、大洋州も地域のリーダー、オーストラリアが最大のドナーとなっている。国際社会におけるそれぞれの国の責務と、国益を考慮した地域配分が行われているのだ。

日本の守備範囲であるアジアはODAの卒業直前国が多いとはいえ、まだ援助を必要としている国も多い。日本のODAのアフリカへのシフト・チェンジが確たる外交政策変換の上に立ってのものなら、その訳を国民や国際社会に明示すべきだ。しかし、シフト・チェンジが単に諸外国のアフリカ接近ムードに乗っただけのものなら、日本という国の立ち位置を再確認してODAの地域配分を再考すべきではないだろうか。

これは「TICAD」、「北海道・洞爺湖サミット」終了後に、国を挙げて話し合う課題だと思う。私の希望はアフリカにも、アジアにも手厚くということだが、そうはいくまい。