【番外編】連続する支持率低下の背景にあるのは何か

注)本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、JICAの公式見解を反映しているものではありません。

vol.192 8 July 2008
JICA国際協力専門員 杉下恒夫

福田総理就任後の支持率の急落が、つい先頃まで新聞などマスコミを頻繁に賑わしていたが、目を海外に転じてもフランスのサルコジ大統領、イギリスのブラウン首相、韓国の李明博大統領ら、昨年から今年にかけて国のトップに就任した主要国の新リーダーの支持率が就任直後、そろって急降下している。

国民の選挙を経ていない福田総理、ブラウン首相の場合はまだしも、ほんの少し前に自分たちの手で選択した国の指導者を、まだ力量を十分に見極める時間も与えず、いとも簡単に見放してしまうフランスや、韓国の国民感情には、どこか同調できない部分もある。

国民の政権支持率というのは水モノで、何かのきっかけで急上昇することもある。だから、今は失望されているリーダーたちにも、あまり支持率に拘らず、自分の信念に基づいて以後の政治を行ってもらいたいものだ。しかしながら、なぜ、そんなに早く支持率の変化が出るのか、分析してみる必要もある。

福田総理の場合は、国会のねじれ現象に対する受身の政治手法、政府機関の失態などが支持率低下の背景にあり、サルコジ大統領は離婚、豪華バカンスなど私生活の問題も多少、影響しているが、ブラウン首相は、景気の後退、低所得者を直撃する税制改革など経済政策の成果が出ないことが最大の原因とされる。李大統領はアメリカの牛肉輸入再開問題が支持率低下の引き金になってはいるが、根底にあるのは、経済大統領として期待の大きかった経済政策の停滞にあることは間違いない。

これは私の見方だが、リーダーたちの支持率急低下の背景には、こうした政策、政治手法への批判以外に、国民の政府に対する過剰な期待があるという気がしてならない。国民というものは、国の政策にはみな一家言があり、それぞれの立場から政府の政策が自分たちの思う方向に進むことに期待を込めている。

新たに登場するリーダーの支持率が高いのは、昔からの祝儀傾向としても、近年の高支持率は、自分たちの思いの丈を、新政権に全て実現させようという期待が以前より大きくなっているせいではないだろうか。だから、新政権に性急に自分たちの思いの実現を求め、十分な結果が出なかったり、結果が出るのが遅いとすぐに見放してしまうのだ。

国民の政府に対する目は年々、厳しくなっている。それはそれで結構なことだが、政府批判の拡大とは逆に、何から何まで政府に頼ろうとする国民が増えていることも確かだ。彼らは自分たち不都合なことが起きると、自助努力はせずに、全てを行政の責任にして終わりにしてしまう。だが、政府批判だけで終わってしまっては、問題の根本的解決には繋がらない。

小さな政府は民力が充実した先進国が進むべき道であり、先進国政府の力が縮小傾向にあることは誰もが承知のはずだ。市民に出来ることは市民が行う。この精神が広く国民の中に根付かない国の将来は暗い。

47年前の大統領就任演説で「国家が自分たちに何をやってくれるかを求めるのではなく、あなたが国家に何を出来るか考えよう」と語ったケネディ大統領は、就任後も支持率が急降下するようなことはなかった。自分の努力は棚に上げて政府に過剰に期待し、それが短期間で実現しないと政権を見捨てて政府批判を繰り返す。日、仏、英、韓に続いて、次の“甘えっこ国民”はどこの国に出現するのだろうか。あまり増殖して欲しくない人たちだ。