農業開発/農村開発

JICAの事例紹介

南スーダン 包括的農業開発マスタープラン策定支援プロジェクト

「平和の定着」と「開発の推進」に向けて

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タスクチーム、JICA専門家、他ドナー専門家から構成されたマスタープラン策定チーム【写真提供:株式会社JIN】

2011年7月、スーダンからの独立を果たした南スーダン。JICAは南スーダンにおける「平和の定着」と「開発の推進」に向け、包括的農業開発マスタープランの策定を支援しました。

農業開発の道しるべとして

南スーダンは国土の95%が耕作適地であり、農業開発の潜在性が非常に高いといわれています。しかし、長期にわたる紛争や干ばつ、細々と営まれる自給自足型農業などから国内の食料需要を満たすにはほど遠い状況です。食料のほとんどを緊急支援や周辺国からの輸入に依存する状況が続いており、農業分野の開発が大きな課題となっています。

マスタープランの策定にあたり、南スーダン政府の作物、畜産、森林、漁業の各分野の担当職員がタスクチームを形成し、JICA専門家チームと共に作業を進めました。南スーダンには情報の蓄積がないことから、作業はまず全国の現状調査からスタート。次に農業開発の可能性と課題を分析し、開発の方向性を示したうえで、具体的な事業計画を策定。この過程を通じて政府関係者は経験と知見を深め、初めての「我々のマスタープラン」に誇りを感じています。

そのマスタープランが、2015年7月に閣議で承認されました。今後25年の農業開発の道標として、生産性の向上と、自給自足型から商業化への転換を促し、ひいては農業が石油に代わる主要産業となることを目指すこの文書を基に、同国政府やドナーらが協議を行い、今後の着実な実施につなげていくことが期待されます。

開発の推進には平和の定着が必要である一方、平和の定着には開発の推進が必要です。JICAも本マスタープランの実施を支援していきます。

エジプト 水管理移管強化プロジェクト

農民参加型の水管理を全国に展開

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パイロットサイトでの施設の調査。水利施設の老朽化の状況等を農家と一緒に確認

JICAは日本の農民参加型水管理の技術・知見を活用し、エジプトの農業セクターでの水利用の効率化を長年支援してきました。

限られた水資源の効率的利用

エジプトは水資源の9割以上をナイル川に依存し、その利用可能量も555億トン/年に限られています。そのため、同国の水資源の8割以上を使用する農業用水の効率的な利用が大きな課題です。また近年は、ポンプの普及により違法取水や過剰取水が増加しています。水利施設の老朽化も進んでおり、国だけでは水路の末端まで管理が行き届きません。

JICAは、国際的にも評価が高い日本の土地改良区の農民参加型水管理の知見を生かし、2000年から技術協力プロジェクト3案件を実施し、支線水路から末端水路までの水管理組合の設立・強化に協力。最後のプロジェクトとなる本プロジェクトでは、これまでの成果を活用して、水管理組合や組合を支援する水資源灌漑省(MWRI)の能力強化、今後10年の支線水路組合への水管理移管計画を示すロードマップの策定支援などを行いました。

農民参加での流量測定とその結果を踏まえた新たな水配分計画の試行や共同補修工事による成果は大きく、パイロットサイトの一つでは17%の農業用水の効率化や水管理施設の補修費用の27%削減などの効果が上がっています。

ロードマップも、プロジェクトが完了する2016年3月にMWRI内で承認されました。

1980年代からさまざまなドナーが協力してきた取り組みは、本プロジェクトにより、ようやくその目指すべき将来像や戦略についてMWRI内のコンセンサスを得ることとなりました。現在はロードマップに従い、エジプト側が自助努力で水管理移管を進めようとしています。

ベトナム 北部中山間地域に適応した作物品種開発プロジェクト

DNA情報技術を活用した高付加価値のイネ新品種生産へ

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DNAマーカーの指導を受けるベトナム国立農業大学のカウンターパート

本プロジェクトは、「農業資材をできるだけ抑えながら、高収量で病虫害に強く、栽培期間の短いイネの新品種を開発し、ベトナムに適応させる」というベトナム政府の取り組みを支援する地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)プロジェクトです。

優良系統の全国普及に向け準備

プロジェクトはベトナム国立農業大学を拠点に、2010年12月から5年間実施されました。

プロジェクト目標である「ベトナム北部中山間地域の自然・社会経済環境に適した有望系統開発のためのイネ育種システムが強化される」を達成するため、1)生育期間を10日ほど短縮した2つの系統、2)収量が5010%増加した系統、3)病虫害抵抗性と低温耐性を有する系統をそれぞれ開発。1)の新品種はベトナム北中部の500haの農地で栽培が始まるなど、全国普及に向けて着々と準備が進められています。

大学のあるハノイから南に1,300km離れた温暖な試験支場で育成と交雑試験を行ったことで、日本であれば通常年1回の世代促進を、年に3回行えたことが研究を早めることにつながりました。

本プロジェクトに参画したベトナム側若手研究者が、習得した知識と技術、経験から得たノウハウを生かして、新しく設立された大学直下の「日越国際植物研究センター」において、さらに研究を継続することが見込まれています。

多様な社会・自然環境を有するベトナムは、モンスーンアジアにおける稲作の縮図であり、同国の諸地域に適応したイネ品種の開発は、世界各地の稲作地域への優良系統の適応・普及につながると期待されています。