防災

JICAの事例紹介

技術協力プロジェクトホームページ

技術協力プロジェクトは、JICAの専門家の派遣、研修員の受入れ、機材の供与という3つの協力手段(協力ツール)を組み合わせ、一つのプロジェクトとして一定の期間に実施される事業です。ここではJICAが行っている防災に関連したプロジェクトをご紹介します。

仙台防災枠組 優先行動1:災害リスクの理解

効果的な災害対策を行う上で、科学的なデータに基づくリスク評価や科学技術との連携が重要です。わが国は各種災害統計データの整備と活用、防災白書などによる記録と周知、中央防災会議における日本学術会議との連携、国や地域の防災計画に基づく避難訓練や防災教育などに取り組んでいます。これら日本の経験を踏まえ、「災害リスクの理解」を促進する協力を実施していきます。

協力事例:科学的なリスク評価に基づく計画策定

ネパール「カトマンズ盆地における地震災害リスクアセスメントプロジェクト」

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2015年地震でのネパールの被災状況

2015年のマグニチュード7.8の大地震では、死者約8,790人、負傷者約22,300人、全壊家屋約51万戸と、同国全土及びその周辺地域に甚大な被害をもたらしました。カトマンズ盆地は過去にも大きな地震が度々発生していましたが、建築物の耐震化や土地利用規制、建築基準法の遵守などの対策はほとんど進んでいませんでした。

このプロジェクトでは、最新の学識知見を用いたカトマンズ盆地のハザード評価やそれに基づいたリスク評価、複数の発生シナリオを用いた被害想定の取りまとめ、リスク評価結果を用いた地方政府における取組みのモデルの整理などを支援します。これにより、整理された災害リスク評価結果が地域防災計画の作成や公共インフラの耐震計画など関連施策の策定に反映・活用されることが期待されます。

仙台防災枠組 優先行動2:災害リスク管理のための災害リスクガバナンスの強化

わが国では古くから「公助」に基づく防災に取り組んでおり、阪神淡路大震災や東日本大震災の経験から、大規模災害においては「自助」、「共助」をより強化していくことが重要であると認識されています。わが国では「災害対策基本法」に基づき国と地方の垂直的な役割、社会における水平的かつ面的な役割、民間企業や地域を含む関係者での「協働」を通じて災害リスクを総合的に管理・削減していくことが明記されています。仙台防災枠組では、災害に強い社会構築のためには、「協働」という考えを含んだ「災害リスクガバナンス」が重要であるとされ、「防災の主流化」「防災戦略・計画の策定と実施」「ステークホルダーと政府の調整」が優先事項としてあげられています。わが国の経験を踏まえた法令や基準作り、防災機関の能力強化、関係機関間の協働体制の強化、科学技術分野との連携等に取り組みます。

協力事例:防災の主流化促進、公共事業におけるリスク評価の導入

気候変動に対応した防災能力向上プロジェクト(スリランカ)

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精度の高い標高データの整備を通じ、同じデータを用いた地滑りや洪水ハザードマップ整備を支援

スリランカでは、2004年12月のスマトラ沖地震・津波災害後、国家防災委員会を新たに設立するなど災害対策に取り組み、JICAも復旧・復興支援の継続と更なる防災能力強化に向けた支援を行っています。

本プロジェクトでは、これまでの支援の成果を活かして、気象局の迅速かつ正確なモニタリング・予報能力の向上、建築研究所の土砂災害対策能力の向上など重要な公共事業に関わる各機関の能力向上の支援を行うほか、地域住民の防災活動、避難にいたる防災体制モデルの確立を目指しました。

プロジェクトの成果として、災害インパクト評価手法を開発し、以降、同国のインフラ整備において、事前に災害リスク評価が実施されることとなりました。また、気象局ではこれまで災害時のデータ収集に約50分を要し、収集したデータを手作業で処理しており、迅速かつ正確な警報発令が課題となっていましたが、防災情報ネットワークの整備により、観測データの収集が10分以内で可能となり、迅速な気象警報の発令によって、減災に貢献しました。

仙台防災枠組 優先行動3:強靭性のための災害リスク削減のための投資

災害は人命のみならず、私たちの生活に不可欠な施設や産業にも影響を与えます。防災への投資を増やし、人命だけでなく財産・資産、発展のための機会など、人々を取り巻く環境からも災害リスクを削減することが重要です。わが国は災害大国として、災害への事前の備えに取り組んできており、防災への投資が持続的な成長に不可欠な要素であることを体験から理解しています。JICAは、日本の優れた防災技術を活用してリスク評価に基づく基準作りや土地利用規制、それに基づく防災事業の促進などに取り組みます。また、開発計画やセクター計画への「防災の主流化」を促進し、様々なセクターにおける防災配慮事業や防災への投資の増加につなげ、災害に強い社会づくりの促進に取り組みます。

協力事例:災害に強いインフラ整備

事前対策で洪水時にも地下鉄運行-タイ バンコク地下鉄ブルーライン-

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洪水に強い地下鉄

タイの首都バンコクでは、1990年代以降の急速な経済発展に伴い交通量が急増し、交通渋滞と大気汚染が深刻化していました。道路交通に代わる交通手段を提供するために、日本の支援により2004年に開通した地下鉄ブルーラインの設計においては、多くの防災の視点が取り入れられています。

バンコクは洪水の多い地域に位置していることから、地下鉄入口を歩道から高くし、洪水時に水が構内に入らないようにしている他、地下鉄入口に遮水板を設置できる構造にする、換気口を高い位置に設置する、排水ポンプを設置するなどの洪水対策がなされています。また、洪水の状況に応じ、駅閉鎖などの手順もガイドラインとして定められており、安全に公共交通機関を運営できる体制を整えました。2011年の大洪水の際は、空港、道路が閉鎖される中、ブルーラインは浸水地域でも地下鉄構内へ水は侵入せず、継続して運行しました。

公共インフラ整備のプロジェクトが、交通渋滞の緩和と大気汚染など環境問題の改善に寄与しただけでなく、災害時にも安定した運行につながりました。

仙台防災枠組 優先行動4:効果的な応急対応のための災害への備えの強化と、復旧・再建・復興におけるより良い復興(Build Back Better)

災害による被害と影響を最小化し、早期の復旧・復興を達成するためには、事前に応急対応への備えを強化すること、災害を予期した行動をすること、あらゆるレベルで効果的に対応するための組織、体制整備を進めることが重要です。わが国は法令の整備から具体的な防災施設まで総合的に災害に向けた事前の準備に取り組むと共に科学的なリスク評価に基づく土地利用計画や都市計画、中長期的な観点による災害対策に取り組んできました。また、災害を想定して事前に、国や自治体と民間による災害対応に関する協定を締結するなど、様々な備えに取り組んでいます。大規模災害発生時には教訓を整理し、そこからの学びを新たな制度や仕組みに反映し、より災害に強い社会造り=「より良い復興(Build Back Better)」に取り組んできました。途上国においても事前の取組みが重要ですが、限られた国家予算により十分な防災への備えが難しく、次善の策として災害が発生した際には復旧・復興を契機として"より良い復興"を実現することも必要です。わが国の経験を踏まえ各国における事前の備えの促進、災害復旧・復興においては"より良い復興"の支援を行っていきます。

協力事例:シームレスな協力と「より良い復興」

台風ヨランダ災害緊急復旧復興支援プロジェクト(フィリピン)

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復興計画策定ワークショップにて、活発に議論する地方自治体職員

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Build Back Betterのコンセプトが明記されたフィリピンヨランダ台風復興計画

2013年11月に、「過去に類を見ないほどの規模」と形容された台風ヨランダは多くの犠牲者を出し、フィリピン国土の広範囲に甚大な被害を与えました。

日本政府は、発災直後に国際緊急援助隊医療チーム、専門家チームを派遣し、現地での救急医療と被災状況の把握、復旧に向けたニーズ調査をいち早く開始しました。さらに、緊急対応から復興に向けて無償資金協力や技術協力、草の根事業との連携など、シームレスな協力を実施してきました。JICAからは復興に当たってBuild Back Betterのコンセプトを強く打ちこみフィリピン復興計画の基本方針となりました。

本プロジェクトの復旧・復興プロセスにおいては、東日本大震災からの復興経験と教訓を参考に、被災地域の早期復旧・復興、住民の生活再建、さらにはより災害に強い地域社会の形成に向けて、一連のプロセスを包括的に支援することを目指しています。特に、現地自治体による土地利用計画の改定や防災計画の策定においては、東日本大震災の関係自治体の協力を得て、日本の経験と教訓の現地適用が推進されると共に地域住民の生計の向上、女性の社会参画など総合的な復興支援に取り組んでいます。