資源・エネルギー

JICAの取り組み

JICAの基本方針

1. エネルギー

途上国のエネルギー利用は、今後も大幅に増加すると見込まれており、同時に気候変動の要因となり得る化石燃料の利用が大きなシェアを占めることは避けられないと予測されています。また、途上国では、電化率の向上が依然大きな課題ですが、電力へのアクセスの改善やより安定的な供給を確保するためには、多大な投資が必要です。国際エネルギー機関(IEA)は非OECD諸国における2035年までの電力セクターへの必要投資額を10兆ドルと試算しています。

このような状況の下、低廉かつ低炭素なエネルギーを安定的に確保することは、途上国にとって社会経済の安定と持続的成長のため非常に重要です。しかし、多くの国では必要な技術・ノウハウ、資金が不足しているうえに、政策立案や実施を担う人材も不足しています。豊富な資金に加え、技術と蓄積された経験・ノウハウを有する先進諸国の協力は不可欠となっています。

これらの課題に対し、JICAは、"3L"ポリシー(Low-Cost、Low-Carbon、Low-Riskの同時達成)を掲げ、以下の支援を展開しています。

(1)ナショナルグリッドの増強を通じた電力アクセス・安定供給の推進

JICAは、開発途上国の国家基幹電力系統(ナショナルグリッド)の増強を通じて、電力へのアクセスと安定供給の向上に長年注力してきました。近年では、民主化と経済成長が急速に進むミャンマーに対し、基幹電力系統の青写真づくり(電力マスタープランの策定)を支援しながら、老朽化した電力設備のリハビリ、送配電系統の強化、地方部への配電網の拡張などの支援を展開しています。また、わが国の優れた技術力を活用し、バングラデシュにおける高効率石炭火力発電、ウズベキスタンにおけるコンバインドサイクルガス火力発電への資金協力のほか、スリランカ、トルコでの揚水式水力発電導入へ向けた技術協力や調査などにより、基幹となる電源整備を支援する一方、サブサハラ・アフリカ諸国では送配電網の強化を支援しています。ナショナルグリッドの増強や延伸は、低廉、低リスク、かつ安定した電力を、貧困層を含む幅広い層に届けることを可能にし、人間の安全保障に寄与する支援となります。

(2)低炭素電源の導入促進

再生可能エネルギーであり、安定したベースロード電源である地熱発電の開発において、日本は世界トップレベルの技術を有しています。資源開発から地熱発電所建設まで、インドネシアや、ケニアをはじめとするアフリカ・リフトバレー(大地溝帯地域)諸国、さらには中南米において地熱発電開発を展開しています。今後も、技術面、インフラ面、政策面で、総合的に支援を展開、強化していきます。また、大洋州を中心とした島嶼国では、電源の大半を輸入燃料(ディーゼル)に依存していますが、恒常的に電気料金が高く、燃料消費の削減によるエネルギーセキュリティの向上が喫緊の課題です。ディーゼル発電の効率化と再生可能エネルギーの最適導入を両面から支え、電力安定供給と同時に燃料消費を削減する"ハイブリッド"な系統を整備することにより、低炭素かつ災害耐性強化にも資する協力を推進しています。

(3)エネルギー効率利用の推進

エネルギー需要側の効率的な利用促進(省エネ)の分野では、ベトナム、バングラデシュなどで技術協力に取り組むとともに、インドネシア、パキスタンの省エネ分野の政策立案を支援しています。また、送配電などの電力流通設備の増強に向けた資金協力や維持管理能力の強化に向けた技術協力を実施し、電力ロス率の低減を通じたエネルギー効率化にも貢献しています。

2. 資源

資源ポテンシャルの高い開発途上国では、鉱物資源開発は経済成長のエンジンとして他産業の育成・開発と比べ短期的に結果が得られるほか、インフラ整備、地域振興などを伴い、社会、経済に非常に大きな影響を与えます。多くの国で鉱山開発が進展し、多様なチャンネルから持続的かつ安定的に鉱物資源が確保されるようになることは、途上国のみならず世界経済の持続的発展にも不可欠です。このような背景から、資源ポテンシャルの高い開発途上国では鉱業振興に強い意欲を持つ国が多くなっています。

鉱物資源の探査から操業につなげるには、多くの資金と高い技術を要し、外国企業の参入を必要としています。しかし開発途上国の政府の多くは鉱業振興や企業活動の管理の知見に乏しく、鉱業政策・法制度や体制・基礎的な地質情報・インフラの未整備などの課題があります。政治的・社会的なリスク、治安・紛争リスク、鉱石輸出・操業においてさまざまな規制を課す「資源ナショナリズム」と呼ばれる状況の高まりなど、開発途上国人材の積極的育成と雇用の促進が必須の課題となっています。また鉱業開発を国の開発にいかにつなげるか、広義の資源管理の課題もあります。

JICAは開発途上国の鉱業発展における上記の課題への支援とわが国の資源確保の両面を念頭に、開発途上国との互恵(Win-Win)関係の構築に資する協力を進めています。また、わが国では、経済産業省を中心として、JICA、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)などが有機的・体系的な連携体制(海外鉱物資源確保ワンストップ体制)を取っており、このなかでJICAは、特に開発途上国政府部門にターゲットを絞った技術支援や人材育成を展開しています。

JICAの資源分野の協力目標は、1)開発途上国政府の体制整備・周辺インフラ支援などのソフト・ハード面での投資環境整備、2)人材育成の二つです。人材育成では、日本国内の大学との連携による本邦長期研修(資源の絆プログラム)を進めており、わが国との人的ネットワークの構築、それを通じた資源国との関係強化を目指しています。具体的には次の4分野を重点分野としています。

(1)鉱山開発に不可欠な道路、鉄道、港湾、電力、水などの周辺インフラの整備、周辺コミュニティの開発支援。
(2)鉱業振興、適切な鉱物資源管理に向け必要とされる法制度、政策、実施体制、基礎情報整理など政府としての計画・方針策定などの支援。
(3)民間投資を呼び込み、持続的な鉱業開発・鉱物資源管理を実現するための行政機能強化。具体的には探鉱活動に必要な基礎情報の提供や管理体制整備に関する支援。
(4)日本の大学とも連携した鉱害対策技術の開発や鉱山保安行政、鉱山環境行政への支援。