資源・エネルギー

JICAの事例紹介

ボリビア ラグナ・コロラダ地熱発電所建設事業(第一段階第一期)

南米初の地熱発電所建設に向けて、22年ぶりにボリビアへ円借款を供与

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噴気試験の様子

ボリビア国内の増加する電力需要への対応と供給の安定化のため、南米初となる地熱発電所建設に向け、JICAは2014年7月、ボリビア政府との円借款貸付契約に調印しました。

年々増加する電力需要

ボリビア南部のポトシ県では、世界有数の亜鉛や鉛、銀の生産地として鉱物資源開発が活発に行われており、電力需要は年々増加しています。しかし、同県南西部は、高い標高(3,600m以上)により大規模火力発電は難しく、水力発電の適地もないため、電力需要を満たすに足る発電設備が存在しません。現在同地域へは長距離送電により電力が供給されていますが、電力ロスが大きいうえ、送電線の事故発生時には電力を供給できない状況に陥ります。

鉱物資源や関連製品はボリビアの重要な輸出品であることから、不安定な電力供給に伴う鉱山開発の停滞が経済に与える影響は大きく、安定的な電力供給は重要です。このため、ボリビア政府は電源の多様化を進めており、再生可能エネルギーの導入はその柱の一つとなっています。

こうしたなか、ポトシ県南西部では以前より地熱資源開発の可能性が確認されており、ボリビア政府は同資源を活用した「ラグナ・コロラダ地熱発電所建設事業」を計画してきました。これは、100メガワット規模の発電設備建設を全体計画とし、第一段階として50メガワット分を建設する計画で、2010年12月のエボ・モラレス大統領の来日時に菅直人首相(当時)と署名した「日本・ボリビア共同声明」において同計画への支援が確認されました。

これを受け、JICAは、この計画の第一段階の第一期分として円借款を供与。本事業では、ボリビア国内の電力需給逼迫の緩和および供給の安定化を図り、再生可能エネルギー開発を促進して気候変動の緩和に寄与することを目指します。

世界初、5,000m級の高地での地熱開発

ラグナ・コロラダ地熱発電所は、世界でも初めての5,000m級の高地での地熱開発となります。ここでは、気圧は海面の半分近くで、一部機器に特殊な仕様が必要となるほか、作業する人々の安全への配慮が欠かせません。JICAは円借款供与に先立ち、2010年より既存の井戸の噴気試験、地熱発電に関する理解促進・能力強化、円滑な事業実施等を目的として技術協力を実施してきました。今後、組織の能力強化等の技術協力も行っていく予定です。

ケニア オルカリアI 4・5号機地熱発電事業

増大する電力需要に対応した、安定的な電力供給に貢献

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オルカリアI 4・5号機地熱発電所の全景。

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発電所内での運転管理を行うケニア電力開発公社職員の様子

JICAは、経済成長に伴い電力需要が増大するケニアの電力増強と安定化に向け、クリーンなエネルギーとされる地熱による発電所の建設に協力を行っています。

2015年1月、JICAが円借款を供与した14万キロワットの地熱発電所が稼働を開始しました。

安定したクリーンなエネルギーとして注目を集める地熱発電

ケニアでは、経済成長に伴い電力需要が年々増加しており、2020年まで毎年14.5%増加することが見込まれています。一方、ケニアの大地溝帯(注1)の地下には大規模な地熱資源の存在が確認されており、1970年代から地熱開発が行われてきました。

地下深部にある蒸気を利用して発電する地熱発電は、天候に左右されない安定的な発電方式として注目を集めています。また二酸化炭素の排出が少なく、環境に優しい発電方式であるという観点からも、ケニアでは地熱発電の開発のさらなる推進が望まれています。

東アフリカの電力安定化に貢献する

JICAは2010年3月、オルカリア地熱地域(注1)における発電所建設に向けた円借款の貸付契約をケニア政府との間で調印しました。この事業の施工契約は日本企業が受注。日本製のタービンが納入され、地熱発電所は2015年1月から稼働しています。

ケニア政府は2030年までに、総発電設備容量の約3割を地熱発電で賄う計画です。JICAは、ケニアの持続的な経済発展のために、今後も増大が見込まれる電力需要に応えるべく、地熱発電の開発への協力を引き続き行っていきます。

(注1)アフリカ大陸を南北に縦断する巨大な谷で、プレート境界の一つ。周辺では高い地熱温度が観測されている。
(注2)ケニアの首都ナイロビから北西75kmに位置する火山地帯。

大洋州 ハイブリッド・アイランド構想

日本の知見・技術を生かした島嶼国のエネルギーセキュリティ向上支援

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トンガに設置された太陽光発電施設

大洋州の島嶼国では、発電に要する燃料費の変動リスクと低いエネルギー自給率という課題を抱えています。JICAは、ディーゼル発電の効率化と最適規模の再生可能エネルギー導入による"ハイブリッド"な系統整備を目指す支援を進めています。

日本の技術、関係者との連携が不可欠

島嶼国の多くは、自国のエネルギー資源を持たず、地理的にも隔絶されています。人々の生活の基盤となる電力は、輸入ディーゼル燃料による発電に依存しており、高い電気料金や石油価格の変動リスクは地域の大きな課題となっています。

こうしたなか、近年、島嶼国でも再生可能エネルギーに期待が集まっています。しかし、再生可能エネルギーも万能薬ではありません。エネルギー自給率の向上や燃料費の削減が期待されますが、天候による発電量の激しい変動のほか、過度な導入は電力の質の低下や供給の不安定化につながります。

「ディーゼル発電への依存軽減と再生可能エネルギーの活用をどのように両立させるか」。この問題意識の下、JICAは、2015年5月の太平洋・島サミットに合わせ、島嶼国のエネルギーセキュリティ向上支援を目的とした、"ハイブリッド・アイランド構想"を立ち上げました。構想実現のためには、日本の関係者との連携が不可欠です。これまで、沖縄の経験を活用し、ディーゼル発電の高効率運用のために、島嶼国の電力関係者の人材育成を実施してきました。また、最近では日本の最新技術を用いた系統安定化装置の導入や、沖縄関係企業との連携も進んでいます。今後も日本の知見や技術を基に、島嶼国のエネルギーセキュリティ向上のための支援拡充を図っていきます。

資源分野の人材育成プログラム(通称「資源の絆プログラム」)

人材育成で日本と世界をつなぐ“絆”

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モザンビーク北西部のテテ州にある石炭鉱山

2014年3月からスタートした「資源の絆プログラム」は、近年まで国内に多くの鉱山を抱え、鉱害問題も乗り越えてきた日本の技術と経験を途上国の鉱業発展のために生かし、資源の安定供給に貢献します。

日本の鉱物資源管理の経験を途上国へ

豊かな鉱物資源を持つ開発途上国にとって、資源開発は他産業の育成や開発に比べ、短い期間で成果が出る強力な成長のエンジンとなります。

しかし、鉱物資源管理の体制が整っていない途上国で開発を急ぐと、経済が資源に頼りすぎてしまい、他産業の発展を遅らせ、貧富の差の拡大や、鉱害による地域の汚染等の負の影響が出てしまいます。鉱業による長期的発展のためには、鉱業開発をいかに国の開発につなげるかの視点のほか、法制度の整備から資源探査・開発、保安、鉱害・環境対策、閉山に至るまで、鉱物資源を管理する幅広い能力が必要です。

プログラムでは、日本の大学院での研究やインターンシップに加えて、鉱業政策や鉱山経営などの講義と関連施設視察を合わせた「短期プログラム」への参加、海外フィールド調査などを通じて、幅広い能力開発を目指しています。途上国における鉱業の発展への貢献は、日本を含む世界への持続的かつ安定的な鉱物資源供給への貢献にもつながり、また、国内の鉱業セクターの活性化や製造業の持続的成長のためにも役立ちます。

オマーン 電力省エネルギーマスタープラン策定プロジェクト

電力供給側の協力に続き、消費側の省エネ対策を支援

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電力の使用実態調査

アラビア半島先端に位置するオマーンは、人口増加と経済成長につれて、今後、電力需要は年10%を超える急激な増加が懸念されています。

JICAは、1997年から1998年まで電力供給側のシステム合理化に関する協力を行っており、2012年から電力消費側の省エネルギーを推進するマスタープランづくりを支援しています。

オマーンでは、電力需要の90%以上を自国産天然ガスによる火力発電でまかなっており、電力料金も低く設定されてきたことから、節電に対する意識は高くありません。しかし、近年の人口増加と経済成長により、首都マスカット、第二の都市サラーラなど都市部をはじめ電力消費は急激に拡大しており、夏場には計画停電を行うケースもあります。このため、省エネルギーが重要な課題のひとつとなっています。

JICAは「電力合理化システム需給管理計画調査」(1997年から1998年)を実施し、需要に即して電力系統を最適に管理するシステムを提言、電力供給側の改善に協力してきました。しかし、これまで電力の消費側に対する取り組みは、ほとんど行われていない状況です。

そこで、オマーン電気・水庁は、消費側の省エネルギーの推進による電力需給バランスの改善に関する協力をJICAに要請し、2012年2月から「電力省エネルギーマスタープラン策定プロジェクト」をスタートしました。

プロジェクトでは、現地調査やエネルギー診断を通じて、工場・事業所やビル、店舗、家庭の電力の使用実態を把握し、また、日本の経験・技術を紹介したうえで、例えば、高効率電化製品の基準づくり・普及、省エネ意識の啓発などの施策の有効性や、導入にあたっての優先順位の検討を進めています。2013年3月までに、2020年までのロードマップを含めた「電力省エネルギーマスタープラン」を提案する予定です。

「イランでの省エネルギー協力」

オイルショックの経験を活かしながらイランの実情に合った省エネ技術を

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研修実施風景。

イランでは工業の発展や自動車の増加によりエネルギー消費が急増し、エネルギー総消費量は産出量の44%にも達しています。これは、外貨収入の75%以上を石油の輸出に依存しているイランの国家経済にとって大きな問題です。同国政府はエネルギー消費の約25%を占める工業セクターのエネルギー効率化のために、省エネルギー訓練センターを設立しました。

JICAは新設された省エネルギー訓練センターがうまく機能するように、センターの講師に対し熱管理のセミナーや鉄鋼・セメント工場などでの工場診断技術を指導してきました。工場でのエネルギー消費量のデータは、日本のように把握されていないという状況でしたが、実際の測定、データの解析から始め、日本の同じ施設のデータと比較しながら評価し、どのような改善をすれば良くなるかというレポートをカウンターパートと共に作成し、改善を進めるという形で行いました。

省エネルギー訓練センターに対する協力は2007年3月に終了し、現在は同センターが自立的に研修を進めることが可能となっています。イランでは右協力の成功により、かつて日本がオイルショック後10年で約30%の省エネを達成した経験が同国にとっても有効であることが再認識されており、先般、新たにビルの省エネ推進にかかる協力を要請してきました。現在、その協力開始のための準備が進められています。

ベトナム 省エネルギー分野での取り組み

日本の省エネノウハウを活かして、国家目標の達成を

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製鉄所のモニター室で主要機器の運転状況を管理する

ベトナムは順調に経済成長を続けていますが、経済発展にともなってエネルギー不足、電力不足が大きな課題となってきました。そこで、ベトナム政府はエネルギー開発の一方で、省エネルギーを推進するために日本に協力を求めてきました。

JICAは、これに応えて、2008年から「省エネルギー促進マスタープラン調査」などに協力してきました。

省エネ国家目標を達成するために

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ダナンで行われたワークショップ

1986年のドイモイ政策以来、市場経済化を進めてきたベトナムは、急速な経済発展を遂げ、日本との貿易量や日本企業の直接投資も着実に増加しています。しかし、経済発展とともに2005年にはエネルギー消費量が1990年比で約5倍に増え、電力不足のために計画的な停電を行うこともあるなど、エネルギー確保が大きな課題となっています。

ベトナム政府は、2003年に「エネルギーの効率利用及び省エネルギーに関する政府議定書」をまとめ、大規模工場にエネルギー管理報告書の提出を義務付けました。さらに2006年には「省エネルギー国家目標プログラム」を作成し、数値目標を定めて省エネルギーに取り組んでいます。

しかし、省エネ促進策が体系的に整っておらず、省エネ政策を推進する人材・ノウハウも不足しているため、成果があがってこないという課題が出てきました。

そこで、JICAは、ベトナム政府の要請を受け、日本が培ってきた省エネ行政のノウハウを活用して、2008年から2009年にかけて「省エネ促進マスタープラン調査」に協力することになりました。

アクションプランと円借款による支援

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日本での研修。企業の社員による講義や火力発電所の視察を実施

マスタープランづくりでは、ベトナムの「省エネルギー国家目標プログラム」に掲げた2010年までに消費エネルギーを3〜5%、2015年に5〜8%削減という目標を達成するための、ロードマップづくりとアクションプランづくりにより、省エネ促進の道筋をつけることが目標となりました。

JICAは、調査団を派遣してハノイ、ホーチミン、ダナンでワークショップを開催し、ベトナムの省エネ関係者と交流を進め、工場やビルの省エネ診断・技術指導、ベトナム関係者の日本での研修などを行い、2009年9月にアクションプランをまとめました。その中で、エネルギー管理士制度の導入、省エネ効果の高い優良製品に星をつけるラベリング制度、エネルギー使用量のデータ管理の優先テーマ3 点をあげ、その実践により2015年の目標達成が可能なことを示しました。

また、JICAは、ベトナムの省エネ促進の目標達成を支援するため、2009年に円借款により省エネ機材の普及を図る「省エネルギー・再生可能エネルギー促進事業」を開始しています。この事業では、鉄鋼、セメント、食品加工、繊維などのエネルギー多消費産業を主な対象に、製造過程で発生する廃熱や蒸気、ガスの再利用を行う機材の導入などで省エネ化を図ります。

さらに、インドネシアに続いてベトナムでも「気候変動対策プログラムローン」の形成を検討しており、地球温暖化ガス削減を通じて省エネ化を図る事業への支援につなげていくことにしています。

クリーンコールテクノロジー(CCT)「インドネシアでのCCT協力」

インドネシアでのクリーンコールテクノロジー(CCT)の導入と石炭の高効率利用への挑戦

CCT協力の背景

人間の活動はエネルギーの利用無しでは成り立たず、世界の社会・経済発展を支えるうえで、エネルギーは必要不可欠ですが、気候変動対策への配慮も同時に重要です。安定的かつ経済的な電力供給の確保と、温室効果ガス排出量の抑制の両立のためには、エネルギー利用の効率向上は極めて重要です。特に石炭火力については、今後も開発途上国を中心に開発が進むことが想定されていて、これら石炭火力発電から発生するGHGの抑制はエネルギーセクターにおけるGHG排出抑制にかかる主要な課題の一つです。

JICAでは石炭火力の効率向上のために、世界で最も効率が高い日本の石炭火力発電技術を活かした技術協力に取り組んでいますが、この日本の石炭火力発電技術を支えるものがクリーンコールテクノロジーです。

クリーンコールテクノロジーとは、石炭を燃焼させる際に発生する二酸化炭素(CO2)、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)などの有害物質を減少させる技術で、石炭の採掘から、発電所等での燃焼時、燃焼後の灰処理の段階にわたる広い範囲における技術です。ここでは特に石炭火力発電所の効率向上によるCO2等の排出抑制に焦点をあてた協力の取組みを紹介します。

以下、まず世界のエネルギー需要と石炭の必要性について概括したうえで、日本と石炭の関係、石炭の高効率利用の技術開発と普及に関して簡単に紹介します。それらを踏まえて、現在進行中のJICAの取組み事例の概要を紹介します。

地熱開発支援の拡大

人材育成と資金の両面で後押し

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ケニア人技術者とJICAの調査団員(「地熱開発のための能力向上プロジェクト」)

優れた特徴を持つ再生可能エネルギー、地熱発電。開発に多額な費用と高度技術を要するため、JICAは開発途上国の地熱開発に向けた協力を拡充しています。

地熱発電は、地中から取り出した蒸気でタービンを回して電力を得るクリーンな再生可能エネルギーです。発電コストが長期的には安い、二酸化炭素排出量が非常に少ない、天候や日夜による出力の変動がないなど、優れた特徴があり、地熱資源を有する開発途上国の開発ニーズが高まっています。

しかし、地熱発電で必要となる蒸気開発が高度な技術と多額の費用を要する一方、成功率が低く(試掘の成功率は50%以下)、開発の障害となっています。これまで多くの途上国が蒸気開発を民間に任せてきましたが、そのリスクは民間が負えるレベルを超え、開発が停滞している国も少なくありません。そうしたなか、ケニアなど、政府自らが開発を行う国が増えているものの、資金確保に加え、人材育成が大きな課題となっています。

日本の地熱開発は1919年に始まり、蒸気開発技術は世界トップクラスです。JICAは、開発リスクの低減につながる人材育成と日本の科学技術の活用を重視し、アフリカ、中南米、インドネシアに日本人技術者を派遣して調査・指導を行うほか、技術者への本邦研修も実施しています。プラント建設においては円借款による資金協力も行っています。

今後、JICAは産学の協力を得つつ、地熱開発協力を拡充し、途上国の地熱開発を後押しします。蒸気開発が進み、わが国のインフラシステム輸出(タービンは世界シェア7割)につながることも期待されます。