平和構築

JICAの事例紹介

フィリピン ミンダナオ包括和平合意−新自治政府設立への支援

行政の能力強化と地域の安定的な発展に向けて

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マラカニアン宮殿で行われた包括和平合意署名式

2014年3月の包括和平合意により、40年に及ぶミンダナオ紛争が終結しました。JICAは2002年以来の支援経験を土台に、新しい自治政府の設立を支援しています。

和平の恩恵を実感できるように

2014年3月27日、フィリピンのアキノ大統領とモロ・イスラム解放戦線(MILF)のムラド議長の立ち会いの下、フィリピン政府・MILF双方の和平交渉団長によるミンダナオ包括和平合意文書への署名が行われました。

この包括和平合意は、新たな自治政府である「バンサモロ政府」の基本的な枠組みを定めるものです。

日本政府は、2002年以来、和平交渉のプロセスに積極的に貢献し、JICAもフィリピン・ミンダナオ国際監視団(IMT)の社会経済開発部門への職員派遣に加え、和平後を見据えた開発の担い手育成、コミュニティ開発、和平関係者の意見交換の場づくり等を通じて、ミンダナオ紛争影響地域への支援に取り組んできました。

包括和平合意が成立したことにより、今後、新自治政府発足に向けた移行プロセスが始まります。JICAはこれまでの経験・ネットワークを生かし、バンサモロ地域が発展し人々の暮らしが安定するために、新しい「バンサモロ政府」のあり方について現地の人々と共に考えながら、生計向上や中長期的な地域開発のための支援に取り組む予定です。

実施中の「バンサモロ包括的能力向上プロジェクト」では、新政府の中核人材育成、組織体制構築、地域開発計画の策定といったまさに新たに政府をつくるための支援を行っています。JICAは、行政サービスが滞ることなく新政府へ移行されることを目指しており、ミンダナオの住民が和平合意の恩恵を実感できるように支援を加速化していきます。

ヨルダン シリア難民・ホストコミュニティ支援

包括的な支援で、難民を受け入れる人々を支える

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ホストコミュニティにおける上下水道サービスの現状調査で、配水管の状態を確認する調査団

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難民キャンプの子どもたち

2011年から続くシリアでの内戦から逃れ、ヨルダンには多くのシリア難民が流入しています。JICAはさまざまな援助手法を駆使して、人口の10%にも相当するシリア難民を受け入れているヨルダン政府と国民を支えています。

ヨルダンの人口は約630万人(2012年)。他方、ヨルダンに避難しているシリア難民は、国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)によると、約59万人(2014年4月時点)で、UNHCRに難民申請をしていないシリア人を含めると100万人を優に超すともいわれています。

マクロ経済支援の円借款も

8割以上のシリア難民は、ヨルダン人が暮らす普通のコミュニティで生活を送っています。急増した難民の影響で、以前から脆弱な社会インフラの下で暮らしていたヨルダンの人々の生活も厳しさを増しています。給水事情の悪化、ゴミの不法投棄の増加により、シリア難民と地元のヨルダン人の間の緊張が高まっているともいわれ、シリア難民を受け入れているさまざまなコミュニティ(いわゆる「ホストコミュニティ」)への支援が急務となっています。

このような状況に対し、JICAは、難民キャンプに対する緊急物資支援、青年海外協力隊員派遣といった難民への直接的な支援に加え、ヨルダンに対する重層的かつ包括的な支援を行うことで、紛争の影響を最小限にとどめる取り組みを行っています。

2012年には、ヨルダン国内の貧困地域において職業訓練や高等教育、保健医療などの改善を支援するため、約122億円の円借款を供与。さらに、2013年には、大量に流入しているシリア難民によって厳しい財政状況に陥っているヨルダン政府を支えるため、120億円の円借款を供与しました。

また、給水状況の悪化するヨルダン北部(シリア難民が多く滞在する地域)に対しては、約25億円の無償資金協力でインフラ整備を支援するとともに、上下水道の整備計画立案といった技術面でのサポートを行い、住民に直接裨益する事業も実施しています。

カンボジア 地雷対策センター(CMAC)を拠点とする南南協力

地雷被害のない世界を目指して

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CMACで実地研修を受けるアンゴラ国家地雷除去院の職員

カンボジアでは、1990年代は毎年2,000人以上が地雷の被害を受けていましたが、日本/JICAをはじめ各国・機関の支援を受けたカンボジア地雷対策センター(CMAC)の能力向上に伴い、被害者は年200人以下にまで減少しました。CMACは今では高い地雷除去・地雷情報管理能力を備えており、JICAの協力を得て他国への技術支援も実施しています。

南南協力で進む地雷対策支援

カンボジアでは、1970年以降20年以上に及ぶ内戦の影響で、全国に400〜600万個の地雷が埋設されたといわれ、今でも人々の日常生活に大きな影響を及ぼしています。CMACは地雷除去を進めるために設置された政府機関で、これまで多くのドナーからの支援により組織・体制強化を図ってきました。

なかでも日本政府が1999年から行った、灌木除去機・地雷除去機・地雷探知機等の機材の提供や、JICAの技術支援等により地雷除去能力を向上させた結果、年間の除去面積を飛躍的に拡大することに成功しました(2003年:10.5「3、2012年:76.7「3)。CMACは現在、2019年までの埋設地雷の除去完了という目標に向け努力を続けています。

その傍らでCMACは、JICAの協力の下、これまでに蓄積した知見・経験をコロンビア、ラオス、アンゴラなど、他国の地雷除去機関へ提供しています。各国機関は効率的な地雷除去に必要な情報管理、計画策定や運営管理についての経験をCMACから学ぶとともに、自らの機関での経験を提供し、互いに学びの多い「南南協力」という関係を構築してきています。

2015年3月には、JICAがラタナCMAC長官と、アンゴラ国家地雷除去院の幹部を日本に招き、両国の地雷問題の現状や南南協力の有効性について語るセミナーを日本の市民向けに開催しました。日本には「地雷問題」はありませんが、紛争後に、地雷という負の遺産に悩む国はカンボジア以外にも多く残っています。このような南南協力は、他の国々における地雷除去の推進に向けて、今後ますます重要になっていくと考えられます。

スーダン支援

紛争終結後の復興支援につなげる

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カッサラ州アブダ村で農業機械研修を受ける農家

スーダンは、西部、南部、東部の複数の紛争影響地域を抱えています。紛争の影響は、国民生活に大きな影を落としています。JICAは紛争の終結と復興開発のために、行政サービス提供能力の向上や人材育成など包括的な開発行政支援を行っています。

西部のダルフール地域では、2003年以降、スーダン政府と反政府勢力との間で紛争が激化し、2006年からいくつかの反政府勢力が政府と和平合意を締結したものの、包括的な和平合意には至らず、現在も紛争が続いています。ダルフール紛争の要因としては、開発の遅れに加え、気候変動による少雨と砂漠化、人口圧力による資源の奪い合い、民族間の対立に対する介入の失敗など、多くの要素が絡みあっているといわれています。

また、スーダンと南スーダンとの国境に位置する暫定統治三地域(南コルドファン州、青ナイル州、アビエイ地区)には、南部系の住民が多く居住し、現在も続く戦闘によって、多数の国内避難民が発生するなど、南北間紛争の影響を最も受けており、食料不足による飢饉の発生も懸念されています。同地域の紛争の終結と復興開発は、スーダンの重要な課題となっています。

長年にわたる紛争の影響により、ダルフールと暫定統治三地域は、基礎的な行政サービスや人材育成分野で多くの課題を抱えています。

JICAは2009年からこれらの地域(治安上活動が困難なアビエイ地区を除く)で給水、保健医療、職業訓練分野での行政サービス提供能力の向上を目的として、州政府の開発計画策定やモニタリング、予算などのリソース配分に関する調整機能の強化や、給水、保健医療、職業訓練分野などでの人材の育成などを通じて協力を実施しています。

スーダン東部(紅海州、カッサラ州、ゲダレフ州)でも、開発の遅れに対する政府への不満から、現地反政府勢力が1994年に武装蜂起し、2005年には政府軍との間で武力紛争が激化しました。2006年に両者間で和平合意が締結され、その後、治安情勢は大きく改善しましたが、この地域に対する開発支援は限定的であり、現在も開発が大きく遅れた地域といえます。

さらに、カッサラ州は国境を接するエリトリアやエチオピアの紛争や政情不安などにより避難してきた難民や、飢餓、干ばつを逃れてきた国内避難民などを受け入れており、難民、国内避難民の問題もカッサラ州の開発を進める課題のひとつとなっています。

JICAは、2011年5月から、カッサラ州政府の給水、保健医療、職業訓練、農業・生計向上、開発計画の分野における行政サービスの強化を目的として、包括的に州政府の開発行政支援を展開しています。