民間セクター開発

JICAの取り組み

JICAの基本方針

民間セクターの開発のためには、マクロ経済の安定、インフラの整備、基礎教育の充実など広範な要素が重要となります。JICAでは、主に1)ビジネス環境改善のための政策・制度の整備、2)貿易・投資促進、3)現地企業の競争力の向上、4)地域の経済・産業振興に取り組んでいます。

1. ビジネス環境改善のための政策・制度の整備

開発途上国が、民間企業がビジネスを実施しやすい環境を実現し、開発を牽引する産業の発展につなげていくことができるよう、政策・制度の整備を支援しています。

(1)産業振興政策

産業振興政策は開発途上国の国家開発の重要な柱です。JICAは各国が置かれた多様な状況に応じて、貿易・投資促進、現地企業の競争力の向上、地域の経済・産業振興等の産業振興政策の策定を支援しています。

2014年度は、エチオピアで首相をはじめとする関係者との「産業政策対話」を行い、産業政策の策定プロセスを継続的に支援しました。また、専門家派遣を通じて、東ティモールでは産業政策文書のドラフト作成を、カンボジアでは中小企業振興政策の基本枠組みの策定を支援しました。政策の実施体制の強化に向け、ミャンマーの産業振興を担う行政官への研修なども実施しました。

(2)経済法・制度の整備

企業がビジネスを営むうえでの基盤となる企業法・競争法などの経済法、知的財産制度、基準認証制度(標準化、認証、計量標準)、税務行政、金融関連制度などの整備や運用の改善について支援を行っています。

例えば、インドネシア、ベトナム、ミャンマーに専門家を派遣し、特許や商標などの知的財産を保護する体制の強化に向けた支援を実施中です。

2. 貿易・投資促進

開発途上国が経済のグローバル化のメリットを享受することを特に念頭に置いて実施しているのが貿易・投資促進分野の協力です。

(1)投資促進

2014年の全世界の直接投資のうち、55.5%が新興国・開発途上国に流入しており、開発途上国は投資先としての存在感を年々増しています。また、開発途上国においても、外国投資を経済成長の原動力とし、外国企業とのサプライチェーンの構築を通じて国内産業の振興に取り組む動きがあります。

海外からの投資の誘致には、投資手続きの簡素化・投資阻害要因の解決といった「投資環境の改善」と、投資機会に関する情報の積極的発信などの「投資促進機能の強化」が求められます。JICAは、これらの取り組みを支援するため、アジア、アフリカ諸国を中心に投資促進分野のアドバイザーを派遣しています。

また昨今、注目を集めているのが「経済特区/工業団地整備」です。インフラの集中的な整備や入居企業への優遇措置、各種サービスの提供により、魅力的な投資環境を備えた進出拠点を設ける取り組みです。2014年度はミャンマーのティラワ経済特区管理委員会の能力向上支援や、バングラデシュの経済特区開発計画の策定と実施機関能力向上のための支援等を開始しました。

インドなどにおいて、開発途上国政府の政策・制度の改革・改善を目的とした開発政策借款を通じた投資環境改善も行っています。

(2)貿易促進

新興国・開発途上国の輸出入額が世界全体の貿易総額に占める割合は、2013年には輸出額の40.3%、輸入額の39.6%に達しており、開発途上国の経済開発のために貿易は重要な役割を果たしています。

貿易促進のためには、税関手続きなどの貿易関連手続きの簡素化や円滑化、開発途上国企業の海外市場へのアクセスの向上などが必要となります。

JICAは、ベトナムやミャンマーでの税関近代化などによる貿易手続きの円滑化に向けた支援のほか、インドネシアの輸出振興庁の機能強化を支援。また、2014年度はエチオピアにおいて、競合商品との差別化を図るために地元産品のブランド化に向けた支援も開始しました。

3. 現地企業の競争力の向上

開発途上国の経済成長を支える現地企業、特に圧倒的多数を占める中小企業の競争力向上のために、「企業支援機能の強化」「産業人材の育成」に取り組んでいます。

(1)企業支援機能の強化

企業の競争力を高めるためには、企業内の経営資源、いわゆる「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」に対する支援が考えられます。主に中小企業を対象としたこれらの支援は、公的機関や民間の組織から行われることが多いため、JICAの支援の多くはこれら支援機関による中小企業支援機能の強化を目指しています。

2014年度は、タイにおける中小企業支援ネットワークの強化や、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロのバルカン3カ国での中小企業「メンター」制度の導入など、中小企業を支援する仕組みの構築を支援しました。インドネシアやフィリピンでは、産業クラスターなどの企業グループに対する支援を通じて、能力の向上や連携の強化、業績の改善に貢献しました。

日本が最も得意とする分野の一つである「カイゼン」(品質・生産性向上)活動の普及にも力を入れています。とりわけアフリカでは、TICAD Vを踏まえて取り組みを強化しており、2014年度はエチオピア、ガーナ、タンザニア、ザンビアへの協力を実施し、これら協力の相互連携も推進しています。

(2)産業人材の育成

産業人材の育成では、日本のノウハウを生かした企業競争力向上のための取り組みを重視しています。企業活動に必要な経営・生産管理、生産技術などのノウハウの獲得・向上を目的に、人材育成を行う行政機関や教育機関などへの協力を各国で展開しています。

これらの協力の成果は、途上国の産業振興とともに、現地に展開する日本企業の活動にも貢献することとなり、途上国と日本の相互の利益につながることが期待されます。例えばインドでは、日本のものづくりの真髄を伝え、同国の製造業の変革と持続的発展を担うリーダーの育成を支援しています。先見性あるリーダーとしてインドの産業界の発展を牽引し、同時に、日本企業にとって日本の考え方を理解するビジネスパートナーとなることで、両国のビジネスが拡大することが期待されます。

産業人材育成の協力のなかでも特筆に値するのが日本人材開発センター(日本センター)です。JICAは、産業人材育成の拠点として、日本センターをカンボジア、ベトナム、ミャンマー、ラオス、モンゴル、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、ウクライナに設置し、ビジネス研修を事業の柱に、日本的経営・生産管理手法に通じた人材の育成に取り組んできました。近年では、受講生の同窓会が活発に活動し、現地産業人材のネットワーク化を進めつつあります。長年培ってきたビジネス研修のノウハウやネットワークを生かし、現地の日系企業への支援や連携にも取り組んでいます。

4. 地域の経済・産業振興

開発途上国の経済成長が進むにつれて、国内の地域間格差が大きな課題となる国が増えてきています。JICAは途上国の人々が広く経済成長の恩恵を受けられるよう、地域の特性・資源を有効に活用した、地域に裨益する産業振興を支援しています。

マラウイ、キルギス、コロンビア、ケニアなど多くの国で、農産加工品や手工芸品を生産する小規模な企業や組合などが、自立的にビジネスを発展させていくための体制づくりを支援しています。具体的には、基本的なビジネス知識(会計など)や、地域資源の発掘・活用、品質・生産性の向上、食品衛生、包装・デザイン、マーケティング・販売などに関するさまざまな指導・助言を行う仕組みづくりを支援することで、魅力ある商品の生産に貢献しています。

観光分野では、モザンビーク、ボスニア・ヘルツェゴビナなどで、地域の持つ資源の特性を生かした地元に裨益する観光商品の開発や、観光客向けの効果的な広告・宣伝などに官民で協働・連携して取り組むための支援を行っています。ヨルダンやエチオピアでは、地域の自然や文化、生活様式などを含めた観光資源を、地域住民と共に持続可能な方法で一体的に保存・展示・活用していく考え方を取り入れ、そのための官民関係者の能力向上や連携強化を支援しています。