ニジェール「住民参画型学校運営改善計画(みんなの学校)」

最終受益者の効果が発現しているか。社会的弱者が特定され、確実に恩恵が届いているか

就学促進・教育の質の向上

COGESやCOGES連合(コミューン単位でCOGESをグループ化したもの)による就学促進啓発活動によって、保護者や地域住民の教育に対する意識が向上している。2006年、COGES連合・住民による就学促進活動を200校で実施したところ、1年生の登録者数が例年の2倍以上になった。2007年度には、COGES連合・COGESによる女子就学促進キャンペーンによって、ザンデール州の女子児童入学数が7,102人増加し(昨年度比)、男女比率は0.92まで改善した。

実際に各校では、インフラの整備(教室の修復、増設、机・椅子等の購入・製作、塀の設置等)、保健衛生環境の整備(校内清掃活動、飲み水の供給、薬箱設置等)、学習効果の向上(教科書・教材の購入・支給、夜間学習グループ支援、COGESによる成績管理、教員への便宜供与等)などが実現している。

住民の声の反映、社会的に弱い人々への配慮

以前は住民の支持なく一部のグループが保護者会を主導するようなコミュニティもあったが、民主的にCOGES委員を選出することにより、能力とやる気のある人が活躍できる機会を生み、透明性やアカウンタビリティを高めた。

行政による人々の保護能力が発現しているか

COGES普及による新たな課題への対応

地方行政官であるCOGES担当官が、一人平均約200以上の担当COGESをモニタリングしなければならない点が課題であったが、プロジェクトがCOGESをコミューン(市町村)単位でグループ化してCOGES連合を設置したことによって、COGES連合の内部モニタリングとCOGES担当官の活動が連携し、効率的なモニタリングを可能にした。ニジェールにおける行政の人的・財政的キャパシティーを考慮すると、行政に多くを依存した形の教育開発は現実的ではない。本案件では、コミュニティの能力をうまく引き出し、行政とコミュニティの絶妙の協力関係による教育開発のモデルを提示することに成功している。

人々のリスク対応能力が向上しているか

学校改善行動計画の実施を通じたエンパワメント

学校活動計画の実施予算はコミュニティの自己資金で賄われ、プロジェクトからの資金や物品機材の投入はない。大半の住民が絶対的貧困層であるため、当初はその実現可能性がプロジェクト外部の関係者から疑問視されたが、結果的には住民による学校運営への積極的な参加がみられた(各校平均約6つの活動実施、5~6万円の分担金確保:2007年)。活動の実施を通じて、「自分たちでもできる」という住民の自信にも繋がった。

セクターを越えたコミュニティの活性化

COGESが導入された地域では、住民の発意でコミュニティ幼稚園を設立・運営しているケースが生まれている。「機能するCOGES」のノウハウを村落開発委員会の設立に応用した結果、自己資金により村民自らが村落開発アクションプランを計画・実施するようになったケースもある。また、教育の重要性を理解した保護者が自主的にグループを作り、識字教室に通い始めたり、子どもたちが水汲み労働に時間をとられ就学が阻害されていることから、村落内での水資源開発に取り組み始めたり、COGES資金を確保するための収入創出活動に取り組み始めたりしている。

【画像】

COGES住民総会で子どもの未来を語る住民たち