運輸交通

JICAの事例紹介

ODAを通じてインフラ輸出を支援

高度道路交通システム(ITS)の海外展開に向けた取り組み

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ベトナム・ハノイの高速道路に、無償資金協力で供与した交通管制システムを設置

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ITS課題別研修の研修員によるレポート発表。民間企業も交えて意見交換を行った

開発途上国の多くの大都市で問題となっている交通渋滞の緩和策の一つとして、高度道路交通システム(Intelligent Transport System:ITS)を導入して既存の道路のキャパシティを有効活用する方策が注目されています。JICAは、日本のITS技術の海外展開をサポートするとともに、ITSの導入を通じた途上国における都市交通問題の解決に取り組んでいます。

交通問題の解決に向けて

ITSとは、情報通信技術を駆使して、交通データを処理し、情報をドライバーなどに提供することでその行動を変え、渋滞や交通事故などの交通問題解決に貢献する一連のシステムです。

特にASEANや南アジア諸国などでは、経済成長と有料高速道路の整備の進展に伴い、ITS技術に対する関心は高いといえます。欧米、韓国等のメーカーが積極的に営業活動を展開しており、自動料金収受システム(ETC)などはアジアでも普及し始めています。日本企業もITS輸出に取り組んでおり、これまでシンガポールにおける電子道路課金制度や、タイでの信号システムの受注などの実績があります。

JICAは都市交通分野において、道路や軌道交通などの整備支援と並んで、国土交通省等との連携の下、専門家派遣や研修員受入などを通じて相手国政府の人材育成や日本の技術の紹介を行うとともに、都市交通マスタープラン作成等、将来の交通体系として目指すべき姿の策定に関する協力を実施しています。

このなかで交通信号制御や交通管制・情報提供などのITS関連のわが国技術の導入支援も行っています。

前述のタイにおける信号機ビジネスの展開は、JICAが2001年に実施したタイのチェンマイの交通計画策定支援調査で行った、交差点改良と信号機設置に関する社会実験が同国において認められ、ビジネスにつながった官民連携の好例として挙げられます。

技術協力と資金協力を組み合わせて

開発途上国で普及しているITSの問題点として、初期コストを抑えることを重視し、長期的な方向性を定めることなく導入されたために、将来の拡張性が損なわれがちであることが挙げられます。

JICAでは、ベトナムにおいて、まず技術協力プロジェクトを通じてITS技術基準の確立を支援し、先方政府が適切な技術方針に基づいてITSを導入・運用できるよう協力しました。また、無償資金協力により、高速道路にわが国のITSを導入。日本方式の長所を紹介することにより、その後に続く同分野への日本方式の本格参入の礎ができました。

2014年3月には、日本企業3社が円借款「南北高速道路建設事業(ホーチミン−ゾーザイ間)」の自動料金収受システム(ETC)や交通管制・道路交通情報等に関するシステム一式を共同受注しています。

日本の産学官の知見を集約

国内においては、2011年にJICAは産学官のメンバーから構成されるITS研究会を設置して、わが国ITS技術の海外展開に向けて情報交換を促進しました。研究会はその後、JICAが実施するITS関係調査に助言を与える国内支援委員会へ受け継がれました。

2013年にITSの関係者が一堂に会するITS世界会議が東京で開催されたのに合わせ、JICAは同年、産学官の密接な連携の下、アフリカとアジアを対象としたITS技術研修コースを立ち上げました。その国の現状を踏まえたシステムの全体像を描き、将来、ITS導入を担うことのできる人材を育成しています。

以上のようにJICAは技術協力、円借款、無償資金協力の3スキームを通じてわが国のITS技術の海外展開をサポートするとともに、ITSに関する産学官の知見を集約して途上国における都市交通問題解決のソリューションを提供するべく活動を行っています。

ベトナム ノイバイ国際空港への展開

パッケージ型インフラ海外展開への布石

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意見交換会

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成田空港視察

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ベトナムの首都ハノイのノイバイ国際空港では、航空旅客需要が急増しており、旅客ターミナルビルの取扱実績(2010年950万人)は、すでに計画容量(年間600万人)を超過しています。JICAは、ノイバイ空港の第二旅客ターミナルの建設に円借款を供与するとともに、その運営・維持管理の体制づくりを支援しています。

航空旅客急増に応える

ベトナムの経済成長のために、ノイバイ空港の旅客取扱施設の拡張は急務です。JICAは2010年にノイバイ国際空港第二旅客ターミナルビル建設事業に対する貸付契約を結び、円借款を供与しています。事業は、年間1,000万人の旅客取り扱いを可能とする第二旅客ターミナルビル(T2)の建設と付帯施設一式の整備を行うもので、2015年の供用を目指し建設が進められています。

T2では、ベトナム初の最先端技術が導入される予定です。ベトナム空港会社(ACV)が、T2の供用開始以降、適切な運営・維持管理(O&M)を自ら実施できるようにするためには、限られた期間内に集中的に組織体制づくりや人材育成、さらには関係機関との調整などの供用準備を行うことが必要です。

JICAは、ACVの要請に基づき、支援スキーム(有償勘定技術支援)を活用し、官民連携で空港運営ノウハウをベトナムへ展開しています。日本の最先端システムのO&Mに関する知識やノウハウ、経験の蓄積を生かし、T2の最大活用を図り、開発効果の最大化を目指しています。

官民連携による日本の協力支援体制を構築

2011年11月には、供用準備の一元的な進捗管理などを図るため、両国の関係機関で構成される「T2供用準備委員会」の設立で合意しました。議長は、ACVの社長が務め、ベトナム側は、ACVの取締役メンバーと関係部署の責任者、日本側は、JICA、国土交通省航空局、成田国際空港(株)のメンバーで構成しています。また、本体事業は、本邦技術活用条件(STEP)適用案件で、コントラクター、施工監理コンサルタントも日本企業です。オールジャパン体制で各者の強みを生かし、官民連携して最新のシステムを備えた新ターミナルの建設供用をサポートすることで、ACVが健全な空港経営ができるよう支援しています。

1,000万人規模のターミナル運営に係るマネジメント支援は日本初

供用準備の進捗管理に権限を持つ委員会を設置し、JICAの支援スキームを活用して、日本側の官民が連携して委員会に参画し、巨大空港ターミナルの運営に向けた支援を行うという試みは、日本初の取り組みです。インフラ整備というハード面に加え、マネジメント支援というソフト面とのセットで、パッケージとしてインフラ展開を図っていきます。これにより、T2の最大活用を図り、開発効果を拡大させることが可能となります。

サブサハラ・アフリカ「クロスボーダー交通インフラ」

国境を越えた支援のあり方が今求められています

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タンザニアールワンダ間ルスモ国境周辺の様子。

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ケニアーウガンダ間のマラバ国境を通過中のトラック。

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ケニアーウガンダ間のマラバ国境におけるヤードの様子。

サブサハラ・アフリカは、北アフリカ5ヵ国を除く48ヵ国の総称です。その総面積は世界の18%、また人口は世界の12%にも上りますが、総GDPは2%にも満たず、さらに南アフリカを除く47ヵ国では、1日1.25ドル以下で生活する貧困層が総人口の50%に当たる4億人といわれています。

植民地政策により、人為的に国境を設定され小国の集合となってしまったアフリカでは、植民地時代に港湾と後背地を接続する鉄道を基幹とした交通の整備がなされました。しかし現在は、投資の不足により交通インフラの劣化が進んでいます。一方、世界で始まったコンテナ化に伴い、道路・港湾の維持管理費は増大し、大型インフラ設備の不足が経済格差などの問題を生む要因となっています。地域の特徴からも、複数国にまたがる越境交通に必要な、ソフト・ハード両面からのクロスボーダー交通インフラの整備が強く求められており、JICAはその支援を行っています。

サブサハラ・アフリカのなかでも、物流需要のポテンシャルが高い地域の一つとされる東アフリカのウガンダでは、東部で国境を接するケニアから、ウガンダの首都カンパラを通りコンゴやルワンダにつながる道路が、交通の大動脈であり、カンパラの約80キロ東でナイル川を横切っています。そこにかけられている既存の橋は片側一車線のうえ、経年劣化しているため、JICAは他地域も含めた包括的なクロスボーダーの視点で、新たな橋の建設を支援しています。

これまでの研究を通じ、サブサハラ・アフリカのクロスボーダー交通インフラでは、港湾・鉄道にもボトルネックがあるという結果が出ています。今後、クロスボーダー交通インフラとしては、ワンストップボーダーポストへの支援を継続、展開させていくのみならず、港湾・鉄道の改善も視野に入れて、ハード・ソフト面の双方において、技術協力に円借款・無償資金協力などを組み合わせた交通インフラの整備に取り組んでいきます。

「ボリビア道路防災及び橋梁維持管理キャパシティ・ディベロップメントプロジェクト」

劣悪な道路状況に対し、予防防災および運営管理能力の向上への技術協力支援

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落石調査(落石の大きさ、落下形態、破損状況などをチェック)。

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橋梁診断調査についての打ち合わせ。

わが国の3倍の国土を持つボリビアは、総人口約960万人が314の市町村コミュニティに住み、農産物や生活必需品の移動・搬送の70〜80%を道路輸送に頼っています。道路総延長は6万キロに及びますが、舗装率は国道で30%弱、地方道路では1%に満たず、道路状況は劣悪なものとなっています。また山岳国家である同国は気象や地形などの自然条件が厳しく、11月から3月までの雨期には、大規模な斜面崩壊、落石、橋梁の流出などが頻発し、生活道路が使えなくなり、貧困層を中心に大きな損害が発生しています。

このような道路の抜本的な改善のため、JICAは2005年より開発調査を実施しました。そのなかで、今後ボリビアが予防防災に向けて取り組むべき各種施策が整理され、そのために必要な組織体制の整備が「キャパシティ・ディベロップメント(CD)計画」として提案されました。同国では、管理機関内に道路防災室を設置し、CD計画を取り入れましたが、防災対策の経験、専門技術がないため、わが国に対し、技術協力の要請がありました。JICAは、管理機関の道路防災および橋梁維持管理能力の向上を目標にプロジェクトを実施。日本からの専門家の派遣、ボリビア・日本両国での研修、機材供与などの支援を行っています。

インド「デリー高速運輸走システム建設事業」

円借款と技術協力の両面で理想的な支援を実現

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定時性・安全性確保のための乗車整理と点検保守の様子。

かつてインドの鉄道は長距離輸送に重点が置かれていたため、デリー市内においても郊外と市の中心部を結ぶ近距離鉄道網が整備されていませんでした。近距離輸送はバスや自家用車に頼る状況で、道路の慢性的な渋滞や大気汚染が社会問題となっていました。そこで時間に正確で効率的なデリー市初の大量高速輸送システムとして、デリーメトロの建設が進められることになりました。

わが国は1997年より継続的に円借款を供与し、この大規模なプロジェクトを資金面で支援してきました。2008年10月に組織統合されたJICAは、本プロジェクトを引きつぎ、円借款に加えてデリーメトロの安全な運行と車両の維持管理という2つのポイントで技術協力のための専門家を派遣しました。安全管理においては、「スケジュール(ダイヤ)の管理」「インドの社会情勢に合わせた、トラブル時の対応プログラムの作成」で支援を行っています。

具体的な内容としては、電車が爆弾テロにあったというシナリオのもと、電車が脱線し、被災したけが人をいかに救出し、車両を元に戻すかという訓練を行いました。これまでの円借款を技術協力がサポートすることにより、さらに充実した支援が実現した好例といえます。