水資源

JICAの取り組み

JICAの基本方針

JICAの水資源分野における取り組み

1.SDGsへの貢献

JICAは、2030年に向けた開発目標として国際社会がSDGsを定めていることを踏まえ、SDGs達成に向けた貢献を基本方針とします。

SDGsが掲げる「誰一人取り残さない(No one left behind)」ことを目指すという考え方は、JICAがミッションとして掲げる「人間の安全保障」、すなわち人間一人ひとりに着目し、生存・生活・尊厳に対する広範かつ深刻な脅威から人々を守り、それぞれの持つ豊かな可能性を実現するために、保護と能力強化を通じて持続可能な個人の自立と社会づくりを促すという理念と整合しています。また、我が国の開発協力大綱が掲げる「人間の安全保障」、「質の高い成長」、包摂的で公正な開発の重視等の理念とも整合しています。

JICAは水資源分野(水供給・衛生・水資源管理)において、ゴール6に定められた8つのターゲットのうち、特に6.1「安全で入手可能な価格の飲料水に対する全ての人々の公平なアクセス」、6.2「適切で公平な衛生施設と衛生的行動へのアクセス、野外排泄の撲滅」、6.4「水利用効率の改善と持続可能な取水による水不足の減少」、6.5「統合水資源管理の推進」の達成に向けて、積極的に協力を進めていきます。

2.サブセクター別協力方針

【画像】

カンボジア 水質検査技師と活動を行う青年海外協力隊員

水資源分野における上述の4つの主なターゲットに含まれる、1)都市給水、2)村落給水、3)衛生、4)水利用効率の向上と持続的な取水、5)統合水資源管理の5つのサブセクターに関する協力方針を、以下のとおりとします。

1)都市部の水供給分野に対する取り組み(SDGsターゲット6.1)

都市給水分野においては、SDGsのターゲット設定を踏まえ、JICAは安全な飲料水源へのアクセスの拡充のみならず、必要な時に家の近隣で適切な水質の水が入手可能な価格で持続的に入手可能であるというサービス水準の向上も目指します。また、SDGsターゲット6.1に掲げられた「全ての人々の公平なアクセスを達成する」という点も重視し、対象地域における脆弱層にもアクセスが行き届くよう配慮します。

人口増加、都市化、及びサービス水準向上への要求によって、都市部を中心に益々高まりつつあるインフラ整備への需要に応えるためには、多額の設備投資のための資金源の確保が必要です。そのためには、公的資金や援助のみでなく、民間セクターの活用も求められます。これら資金動員の前提となるのが、信用力の根幹となる国の水道政策や、水道事業体の健全な経営・運営能力です。JICAは、相手国や対象となる水道事業体の発展段階に応じて、資金協力を通じたインフラ整備による収入基盤の拡大と、技術協力による制度・社会面も含む包括的な能力強化を支援し、能力が高まるにつれて民間資金を含む自立的な資金の調達や民間セクターの活用促進を視野に入れた支援を進めます。

また、長期的な持続性を確保するためには、水道料金によるコストリカバリーが重要です。JICAは、地域毎の社会的背景に配慮しつつも、基本的には水道事業を独立採算とし、受益者からの料金収入によって水道事業経営を行うという受益者負担の原則を重視します。

都市給水分野の支援にあたっては、我が国に長年蓄積されたノウハウを積極的に活用するため、地方自治体をはじめとする産官学との連携を強化するとともに、本邦での研修事業や草の根技術協力等の提案型事業の推進等を通じた地方創生にも資する取り組みを進めます。

2)村落部の水供給分野に対する取り組み(SDGsターゲット6.1、6.b)

【画像】村落給水分野においては、JICAは安全な飲料水源へのアクセスの改善に引き続き取り組みます。都市周縁部や人口数千人規模の人口が密集した集落での協力ニーズが増加しており、サービスレベルもハンドポンプレベルだけでなく、公共水栓や庭先給水栓(ヤードタップ)を備えた管路給水施設が求められることが多くなっています。これらの重要性を増しつつある支援対象に対する協力に取り組みます。

その際には、SDGsターゲット6.bで謳われているような、住民による運営・維持管理体制の整備への支援、コミュニティや住民組織を支えるセクターモニタリング、技術指導、大規模修繕対応等の行政のサポート体制強化への支援を行い、さらに水料金の徴収によるコストリカバリーの支援、修理業者等を含む民間セクターへの支援、及び衛生意識の啓発や衛生行動の改善に対する支援を組み合わせます。

これらの活動では、保健セクター、教育セクター等の関連分野やNGOとの連携を強化して開発効果を高めます。また、女性の参画を積極的に促進することによるジェンダー配慮等を通して、脆弱層への公平なアクセスの確保を重視します。

3)衛生改善分野に対する取り組み(SDGsターゲット6.2)

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セネガル「農村地域における安全な水の供給と衛生環境改善計画」における学校での衛生教育活動

衛生状況の改善については、手洗いには水が必要であるなど水供給セクターとの相互補完の関係があることに留意し、保健セクター、教育セクター等の関連分野とも協力し、学校や保健施設のトイレの整備、JICAボランティアによる衛生意識啓発や衛生行動改善のための活動等も含めた取り組みを行います。

コミュニティに対する啓発活動や維持管理のサポートが行政によって組織的、継続的に行われるよう、セクターモニタリング、法制度・戦略・計画の整備、関係行政機関の強化等の政策・制度面からの支援を行います。

衛生改善への取り組みは、社会・文化的な配慮が重要であることを意識するとともに、女性及び女子等のニーズに特に留意し、ジェンダー配慮を推進します。

SDGsではトイレの利用のみならず排泄物の安全な処理・処分の観点が含まれています。JICAもセプティックタンクの屎尿汚泥の引き抜きや処分なども含めた、排泄物のフロー全体を考慮した協力を行います。

4)水利用効率の向上と持続的な取水に対する取り組み(SDGsターゲット6.4)

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ソロモン諸島「水道公社無収水対策プロジェクト」における漏水探知の訓練

我が国の水道事業は全国平均で5%未満(2014年)という世界的にみて極めて低い漏水率を誇り、家庭や工場での節水においても様々な取り組みを行ってきた経験があります。これらの我が国の蓄積した経験、知見を活かし、漏水対策の推進、従量制料金への移行による節水インセンティブの喚起等、水利用効率化への取り組みを支援します。水不足が益々深刻化することが予測されており、JICAの過去の協力の強みであるデータを重視した中長期的な水資源開発・管理計画の策定や、水文データ等のモニタリング体制の整備は、今後一層重要になってくると考えられます。引き続き、水資源を水量・水質の両面から持続的に利用するため、水資源の開発、管理、配分に関する問題解決型で実現可能性の高いマスタープランの策定やその実行の支援、水資源のモニタリング能力強化の支援を行います。

5)統合水資源管理分野に対する取り組み(SDGsターゲット6.5)

統合水資源管理を推進するためには、自然科学的技術と社会科学的技術を併用する必要があります。これまでJICAは水資源開発や管理に関するモニタリング強化や計画策定等、自然科学的技術に基づいた調査や協力の実績を多く蓄積してきました。引き続き、このような協力に取り組むことに加え、今後は様々なセクターの多様な利害関係者(ステークホルダー)の主張及び利害関係を明確にして問題分析を行い、社会的合意形成に基づいて水関連事業を促進するための社会科学的技術も積極的に活用します。

そのために、対象となる社会・文化及びステークホルダーの十分な理解、自然科学的技術に基づく調査の成果の分かり易い説明と関係者間での共有、合意形成プロセスの枠組み形成と促進、慣習法を含む法制度や利害調整メカニズムの整備、利害調整・合意形成のプロセスや成果を分かりやすく関係者と共有するための工夫等に積極的に取り組みます。このようにJICAが第三者として統合水資源管理プロセスを促進することにより、中央・地方行政機関の計画策定能力及び調整能力の強化を行うことを重視します。

国家レベルで統合水資源管理を推進するにあたっては、その国に合った組織・制度・政策・計画・事業の形成を支援する必要があります。そのためには、ローカル・レベル、つまりより小さな規模の地域社会の文化や慣習等に焦点を当てて、問題分析及び教訓を基礎とする必要があります。グローバル・スタンダードの画一的な適用ではなく、ローカル・ガバナンスに根差した問題解決を目指す統合水資源管理の実践的アプローチを推進します。