チャイハネ

第22話「カブール再生への挑戦(4)再開発の鍵を握る1/5000地図作成」

2月より「カブール首都圏地形図作成調査」が開始されました。今回は世界各地で地形図作成を手がけてきたプロフェッショナル、西村総括にお話を伺いました。

【インタビュー by 宮下陽二郎 アフガニスタン事務所】

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西村総括とAGCHO(測地地図庁)総裁

宮下:
地形図作成調査プロジェクトについて簡単に教えて下さい。今回プロジェクトで作成する地形図とはどのようなものなのでしょうか?
西村:
プロジェクトでは航空写真撮影(縮尺1/20,000カラー、撮影範囲約1,000km2)を実施し、カブール市(約375km2)の縮尺1/5,000の地形図とカブール市の郊外を含めた(約2,000km2)オルソフォトマップ(写真地図)を作成すると同時に、地形図を作る技術(地上測量、写真測量)の移転も行います。
プロジェクトで作成する地形図は、その精度(位置・高さ、表現項目)や地形図に表現する項目を事前に決め、その仕様に基づいて作成されています。従って作成する地形図は、縮尺1/5,000の精度となり、多くの分野で利用可能な地理情報(デジタル形式で)を提供できる基本図の性格を有するものとなります。
宮下:
カウンターパート(C/P)機関について教えて下さい。設備の状況、技術レベルなどはいかがでしょうか?
西村:
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共産主義の時代にソ連から供与されたアナログ機材

C/P機関であるAGCHO(Afghan Geodesy and Cartography Head Office/測地地図庁)は日本の国土地理院に相当し、アフガニスタン国唯一の地理情報を管理・監督する組織です。国土の地理情報を作成する組織としてそれに必要な設備を保有していたようですが、内戦等の影響でそれらの設備の一部は残念ながら破壊されてしまいました。また内戦中に地理情報の作成手段がアナログ手法からデジタル手法に移行してきたため、残された機材が陳腐化しています。

現在残されている資料などからアナログ手法による地理情報作成技術は一定水準にあったことがわかりますが、デジタル化の進行によって技術力の衰退に拍車がかかったように感じられます。ただしデジタル化の影響が少ない技術分野や業務停止の影響が少ない分野では一定の技術水準が維持されています。

宮下:
測量の仕事はチームワークが重要な鍵と聞いています。よいチームワークを保つ秘訣は何かありますか?
西村:
なかなか簡単に答えるのが難しい質問ですねえ(苦笑)。経験からしか言えませんが、チームで仕事をする場合、チームを構成するメンバー間での相互理解(技術力、性格等)、メンバー間の意思疎通や献身の精神が重要と考えます。これを実現するには、仕事においては真剣な技術論を交わす一方で、一緒に食事を楽しんだりお酒を飲んだり、たまには馬鹿な冗談を言い合ったりして、お互いを知りそして思いやることではないでしょうか。言い尽くされた表現ですが"同じ釜の飯を食うこと"は肝心なことですよね。そして、無敵の笑顔ですね(笑)。日本人もアフガン人も同じじゃないですか。
宮下:
他国でのこのような協力のご経験が豊富ですが、アフガニスタンのよいところ、逆にやりにくいところなどは何かありますか?
西村:
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水準測量機材の取り扱いの実習

調査業務で実際に我々と一緒になって業務に従事してくれるC/P機関の職員の真摯で誠実な姿勢は、調査団の業務遂行に力を与えてくれるものです。業務の開始時間や約束事への忠実さは団員をさわやかで心地よい気分にさせてくれます。

一方で、幹部による意思決定に時間がかかり過ぎるなあと感じることがあります。現場と上層部の分掌範囲と責任が明確になり、機能的に一体化していくことを期待しています。

宮下:
今回の調査によって作成された地形図はどのように利用されるのでしょうか?このように利用してもらいたいといった期待はありますか?
西村:

今回のプロジェクトによって、精度の高いカブール市の市街地の地形図ができます。さし当たっては、現在実施中の「カブール首都圏開発計画調査」で有効に利用されるでしょう。同時に、カブール市役所において、市内の基本図として都市インフラの維持・管理及び新設計画などに有効に利用されるものと考えます。また作成された地形図を地理情報の骨格情報とし、市内観光図、道路図などといった民生向けの利用が期待されます。これには、地理情報の公開に関する関門が存在していますが。

さらには、地形図のデジタルデータが、将来構築されるであろうアフガニスタンの国家空間データ基盤(NSDI)の一翼を担うことを願っています。

宮下:
今日お話をうかがって、このプロジェクトから生まれてくる地図が、カブールの再開発になくてはならない重要な役割を担っていることが良くわかりました。本日はどうもありがとうございました。