経済

アフガニスタンの経済を捉える7つの数字をお伝えします。

  1. アフガニスタンの名目GDPは2011/12年で推計183億ドルです(World Bank, Afghanistan Economic Update October 2012)。ここ10年にわたり平均年9%近い高度成長を遂げています。
  2. 一人当たりGDPは2010/11年で528ドル(World Bank, Afghanistan Economic Update October 2012)です。経済成長に伴い、ここ10年で2倍近くになりました。
  3. 急速な成長は、日本を含む国際社会からの支援によるところが大きいです。財政をみると、2013年で国家収入予算の6割、41億ドル(MoF in Afghanistan, 1392 National Budget)が外国からの資金援助で賄われています。
  4. また、国際収支をみると2010/11年でGDPの4割(IMF, 2011 Article IV consultation)に相当する貿易赤字を抱えています。この赤字も、治安を維持するために駐留する国際治安支援部隊(ISAF)や開発支援に関連する外貨の流入(経常移転収支の黒字)により賄われています。
  5. 金融セクターでは、金融の成熟度の指標として扱われる広義の貨幣量(M2)/GDPが2011年で38%(IMF, 2011 Article IV consultation)と、途上国の目安50%と比しても低く未成熟であることが伺えます。
  6. 実体経済は、天水依存の農業の豊作・凶作により変動はありますが、概ね農業3割、工業2割、サービス業5割(World Bank, World Databank)です。また、2007-2008年で59.1%の労働力人口が農業部門に関連する経済活動を生活の糧としています(National Risk and Vulnerability Assessment)。
  7. 7アフガニスタンは3%近くの人口増加率(2011年2.7%)、5割近くの14歳以下の人口比率(2011年46%)を抱えています(World Bank, World Databank)。今後ISAFの撤退や国際社会からの支援額の減少によりGDP成長率の鈍化が見込まれる中で、一人当たり所得を目減りさせずに人口増加圧力を成長の原動力に変えていくことが求められます。
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World Bank Afghanistan Economic Update October 2012より筆者作成

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Ministry of Finance in Afghanistan, 1392 National Budgetより筆者作成

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IMF, 2011 Article IV consultationより筆者作成

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IMF, 2011 Article IV consultationより筆者作成

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World Bank, World Databankより筆者作成

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World Bank, World Databankより筆者作成

ここからは、財政収支、国際収支、金融セクター、実体経済、闇経済、人間開発の順に詳しく説明します。

財政収支:歳入増により経常経費負担の自立を目指すも、治安維持費の増加が課題

(計数は、明示されない限りMoF in Afghanistan, National Budget1387, 1392より)

  • 2013年で国家歳入予算の62%、41億ドルが外国からの資金援助で賄われています。これはGDP(2011/12年推計)の22%相当にあたり、一般的に財政赤字がGDPの10%を超過すると要注意といわれる中で、極めて大きい財政赤字を抱えており、援助に依存しているといえます。
  • 歳入予算を見ると、国内歳入が2008/09年から2013年の5年で8.9億ドルから24.9億ドルへ増大しました。これは直接税の拡充(所得税の導入、コントラクター税の導入)と関税収入の向上によります。今後はこれまで手をつけられてこなかった間接税(付加価値税)の導入(目標2014年)により、一層の歳入増加が見込まれます。
  • 外国からの贈与は、各国別の贈与のほかに、国軍向けCSTC-A(贈与の42%)、警察向けLOTFA(贈与の12%)、経済開発向けARTF(贈与の22%)等、目的別のバスケットファンドを通じても供与されます。2012年の東京会合では2015年までの4年間で総額160億ドル(年平均40億ドル)の支援が約束されました。
  • 一方、歳出予算を見ると、治安維持費が2008/09年から2013年の5年で5.4億ドルから29.3億ドルへと増大し、国家予算を圧迫しています。背景には、治安権限の移譲に伴い、国軍が約20万人へ、警察が約15万人へ増員されたことが挙げられます。
  • 国家予算は経常経費(55%)と開発経費(45%)から成りますが、今後は、歳入の向上により経常経費を国内歳入で賄えるようになることが目標とされています(IMFのシナリオでは2022年頃を想定)。
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Afghanistan, MoF, National Budget 1387, 1392より筆者作成

国際収支:巨大な貿易赤字、それを賄う援助資金の流入

(計数は、明示されない限りWorld Bank Afghanistan Economic Update October 2012より)

  • アフガニスタンは2010/11年でGDPの4割に相当する63億ドルの貿易赤字を抱えています。ただしこれでも2007/08年のGDPの約7割に相当する赤字幅から、毎年赤字幅を減少させてきた水準です。
  • 輸出は、ドライフルーツ、カーペット、薬草の3品目が輸出額の88%を占め、輸出先上位3カ国は、パキスタン、インド、ロシアです(2011/12年、CSO Statistical Yearbook)。輸出額は2007/08年から2010/11年にかけて19億ドルから28億ドルへ増加しています。しかし、GDPも同時に伸びているため、GDP比では横ばいです。また、2010/11年でGDP比18%と、同水準のGDPの他国の平均値30%と比しても低水準です。
  • 輸入は機械、石油、食料の3品目が輸入額の61%を占め、輸入先上位3カ国はパキスタン、ロシア、ウズベキスタンです(2011/12年, CSO Statistical Yearbook)。輸入額は、ISAFや開発支援に関連する支出に引っ張られ、GDP比57%(2010/11年)と高い水準です。2007/08年から2010/11年にかけては、78億ドルから91億ドルへ微増しているものの、この間GDPが伸びているため、GDP比では90%から57%へと大幅に減少しています。
  • 巨大な貿易赤字を抱えつつも、援助資金の流入による経常移転収支の黒字により、外貨準備はむしろ増加しています。外貨準備は、2010/11年に輸入額の6.2カ月分と、目安となる3カ月を大幅に上回る厚みを持っています。
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World Bank Afghanistan Economic Update October 2012より筆者作成

金融セクター:発展途上の金融セクター、求められる金融ガバナンスの強化

(計数は、明示されない限りIMF, 2011 Article IV consultation with Afghanistanより。)

  • 経済発展には投資が必要ですが、投資を実現するためには、資金が余っている(自らの投資以上に貯蓄を行っている)主体から投資を行う主体への資金の融通が求められます。この金融仲介がどの程度行われているかの尺度として、現金+普通預金等+定期預金等から成る広義の貨幣M2とGDPの比率が用いられます。一般的にM2/GDP比率が高いほど金融仲介機能が良く働いていると言えます。アフガニスタンのM2/GDPは、2011年で38%です。2008年の27.5%から着実に伸びていますが、途上国で目安として望まれる50%程度と比較すると、未だに未成熟な段階と言えます(なお、日本は2005年で140%近くです)。
  • また、M2の裏打ちとなっている資産は、対外純資産と国内純資産のうち、対外純資産がM2の98%、国内純資産がM2の2%と、国内純資産が極端に少ないことが特徴です。これは金融面でも外国からの資金に支えられていることの現れです。
  • 金融の未成熟を象徴的に示す出来事が2010年のカブール銀行問題です。同銀行の株主が不正融資等により9億ドル以上の資産を棄損した事件で、未だに1億ドル強しか回収できていません。本件により金融ガバナンス強化の必要性が強く認知され、金融行政当局による監理強化が図られています。

実体経済:援助依存の経済体質、求められる農業部門の強化

(計数は、明示されない限りWorld Bank, World databankより)

  • 農業、工業、サービス業のうち、GDPに占める割合の最も大きいサービス業ですが、中でも「交通・貯蔵・コミュニケーション」のシェアが大きく、サービス部門付加価値全体の45.8%を占めています。
  • サービス部門の現在までの成長は、アフガニスタンに滞在しているISAF関係者及び開発機関の要員等外国人の購買力が大きく貢献しています。
  • 2014年までに予定されているISAF戦闘部隊の撤退と、国際社会からの開発支援の漸減は、外国人による消費の減少をもたらすと共に、現地人材の雇用機会の減少、それに伴う消費の更なる減といった波及効果が見込まれ、サービス部門の成長率が鈍化することが予想されます。
  • GDP構成比の2番目に大きい農業部門ですが、肥料の低投入・低品質な種子の使用等により農業生産性は低く(主食のコムギで1.9t/ha、周辺国3-6t/ha)、灌漑の未整備により収量の変動も大きいです(2008年〜2012年で不作の年は豊作の年と比べ40%の収穫減)。
  • 農業は、アフガニスタンで貿易赤字の品目であること(国内需要を満たせていない)、海外需要が継続的にあること等から、2014年までに予定されているISAF軍関係者の撤退以降も継続的に高い需要が見込まれるセクターです。経済の自立を達成するために農業部門の成長が必要です。
  • なお、2007-2008年のNational Risk and Vulnerability Assessment(NRVA)調査によれば、59.1%の労働力人口が農業関連の活動を生活の糧としており、生産面だけでなく分配面でも重要なセクターです。
  • GDP構成別で3番目に大きい鉱工業部門は、製造業(59.3%)、建設業(37.5%)、鉱山業・採石業(3%)等で構成されます。
  • 1)鉱産業・採石産業の開発期待が高まっており、中長期には同セクターは年間GDP成長率を5%押し上げる潜在力を秘めているとされています(World Bank Afghanistan Economic Update 2011)。潜在力を引き出すためには制度インフラの整備や治安の安定が求められます。
  • アフガニスタンにおけるインフレ率は、2005年〜2011年で年率8.1%と、周辺国と比べると相対的に低率です。
  • インフレ率は農業生産・石油価格等の影響も受けますが、インフレ率が相対的に低く保たれてきた一因は、周辺国通貨に対する自国通貨「Afghani」高による安い輸入産品の流入と考えられます。
  • 今後ISAFの撤退や開発支援の漸減により外貨獲得機会が激減し、アフスが減価する事で、輸入に依存している食料や工業製品、ガソリン、食料品の価格高騰につながり、インフレ圧力が生じる可能性があります。

闇経済:国民経済に食い込む麻薬と汚職

  • ケシ(麻薬の原料)の2012年の生産額(生産者段階)はGDPの4%に当たる7億ドルです(2012年は不作のため、前年の生産額14億ドルの半分)。世界最大のケシ生産国であるアフガニスタンでは、南部、南東部のほか、これまで栽培面積が縮小していた北部でも治安悪化とともにケシ栽培が増加しているという報告もあり、反政府勢力の主要な資金源となっています。ケシは農家にとって生産性の高い魅力的な生産物であり、干ばつなどにより収入が減少するとケシ栽培に手を出さざるを得ないという経済的な事情もあり、根絶が難しいです(UNODC, Afghanistan Opium Survey 2012 November)。
  • 汚職に支払われている金額は2012年に39億ドルと、GDPの約2割に上り、国民の二人に一人が公的サービスを受ける際に賄賂を要求されているといわれます(UNODC, Corruption in Afghanistan, 2012)。

人間開発

  • 人間開発指標は、人間開発の三つの基本的側面(長く健康な人生、知識へのアクセス、生活水準)を総合した指標で、アフガニスタンは2011年に187カ国中172位です(UNDP, Human Development report 2011)。
  • 寿命は48.7歳、5歳以下乳幼児死亡率1000人中199人です(UNDP, Human Development report 2011)。
  • 成人識字率は34%(うち男性50%、女性18%)です(UN, Millennium Development Goals Report(2005))。
  • 購買力平価換算した一人当たり所得は1,416ドル(UNDP, Human Development report 2011)、貧困率(人数ベース、国別貧困ライン)は2008年で36%(World Bank, World Databank)です。
  • また、アフガニスタンは3%近くの人口増加率(2011年2.7%)、46%の14歳以下の人口比率(2011年46%)を抱えています(World Bank, World Databank)。

2013年3月7日 今井裕明

略語表

CSTC-A:Combined Security Transition Command-Afghanistan
LOTFA:Law and Order Trust Fund for Afghanistan
ARTF:Afghanistan Reconstruction Trust Fund
CSO:Central Statistics Organization
ISAF:International Security Assistance Force

参考文献

World Bank, Afghanistan Economic Update October 2012
MoF Afghanistan, 1387, 1392 National Budget
IMF, 2011 Article IV consultation with Afghanistan
World Bank, World databank
World Bank, Afghanistan Economic Update 2011
National Risk and Vulnerability Assessment, 2008
JICA総研、指標から国を見る
IMF, International Financial Statistic
CSO Statistical Yearbook, 2012
UNODC, Afghanistan Opium Survey 2012 November
UNODC, Corruption in Afghanistan, 2012
UNDP, Human Development report 2011
UN, Millennium Development Goals Report 2005