ボスニア・ヘルツェゴビナの情報教育の共通化に向けた取り組み

2010年8月2日

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ボスニア・ヘルツェゴビナの「情報」科目の授業風景

ボスニア・ヘルツェゴビナは、クロアチア系・セルビア系・ムスリムという、3つの民族で構成される国です。1990年代に、国民の間で民族的・宗教的対立が発生し、紛争に発展したことがあるため、子どもたちは、民族ごとに定められた、別々の教育カリキュラムや教科書に基づいて学習してきました。そのため、ボスニア・ヘルツェゴビナ政府は、民族に関わらず、すべての子どもたちが、同じ教科書や教育カリキュラムにもとづいて学習することが、平和な国づくりのための重要な一歩と考えています。

そこで、JICAは2008年、ボスニア・ヘルツェゴビナの高等学校18校を対象に、「IT教育近代化プロジェクト」という名前で、情報教育の共通化を支援するプロジェクトを始めました。

まず、JICAは、すべての民族の高校生が使用する、共通の教科書づくりを支援しました。日本の高校で使用されている情報教育の教科書を参考に、ボスニア・ヘルツェゴビナの先生方が、新しい情報教育の教科書づくりに取り組みました。次に、すべての民族の高校生が使用する、共通の情報教育カリキュラムづくりも支援しました。

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ボスニア・ヘルツェゴビナで行われた教員向けセミナーの模様

また、魅力ある授業づくりに欠かせないのは、実際に授業を担当する、良い先生の存在です。そのため、JICAは、ボスニア・ヘルツェゴビナの高等学校で「情報」の授業を担当する先生方を集めてセミナーを開き、高校生のために、どのような授業を行うのがよいのか、先生同士で真剣に話し合ってもらいました。

JICAは、ボスニア・ヘルツェゴビナの先生方を、日本にも招きました。この経験は、ボスニア・ヘルツェゴビナの先生方に、とても大きな刺激を与えました。2週間の研修の中で、先生方は、日本の「情報」科目の教科書を執筆した日本人の先生方から講義を受けたり、日本の学校で「情報」の授業を担当している日本人の先生方から、さまざまな教え方を学んだりしました。研修の最後に、ボスニア・ヘルツェゴビナの先生方が情報教育の授業案を作成し、研修で学んだ内容を、実際の授業にどのように取り入れていくのか、参加者の前で発表しました。

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2010年6月に日本で行われた研修の様子

2010年6月の研修に参加した先生方は、「日本での研修を通じて、どのような授業づくりをするとより良くなるか、授業づくりの新しいアイディアをどのように得るとよいのかを学んだ。」「ボスニア・ヘルツェゴビナの情報教育と日本の情報教育を比較しながら、ボスニア・ヘルツェゴビナの新しい情報教育のために、最善を尽くしたい。」と感想を書いてくれました。

「IT教育近代化プロジェクト」の最大の収穫は、民族の違いにとらわれず、すべてのボスニア・ヘルツェゴビナの子どもたちのために、少しでも良い授業をしたい、という純粋な気持ちの下、先生方が意見を出し合い、協力し合うネットワークが生まれたことではないかと思います。

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同級生と一緒に学ぶ:ビェリナ高校の授業風景

「IT教育近代化プロジェクト」は、2010年7月に予定通り終了します。そして、これまでの成果を、今度はボスニア・ヘルツェゴビナ全国に広げるため、2010年秋から新しい「IT教育近代化プロジェクト」を開始します。

教育とは、人間と人間の対話の場です。そして、人々の相互理解こそ、平和な社会の土台づくりに不可欠なのです。情報教育の改革を通じて、ボスニア・ヘルツェゴビナの高等学校の先生方や生徒たちが、民族単位ではなく、ボスニア・ヘルツェゴビナ国民にとってより良い教育とは何かを考えていくきっかけをつくり続けることが、新しいプロジェクトの最も大きな目標です。

本間 和実
バルカン事務所