日本の泉−日本国民への感謝の印として

2010年10月4日

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「日本の泉」の銘板

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除幕式の模様

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事務所からサバ川越しに見たカレメグダン公園

ベオグラードを訪れる観光客が一度は必ず訪問するカレメグダン公園。ドナウ川とサバ川の合流点を見下ろせる高台に位置し眺めがいいことから、市民の憩いの場所にもなっており、特に夏場の暑い盛りには、夜遅くまで夕涼みをする人々で賑わっています。もともとは、ケルト人によって紀元前3世紀から2世紀に作られた街で、その後、古代ローマ人が砦を築き、東ローマ帝国、セルビア王国、オーストリア−ハンガリー帝国、オスマン帝国と引き継がれてきた歴史的な場所でもあります。

この度、その一角に「日本の泉」と称される噴水が作られ、9月16日に、ジラス・ベオグラード市長、角崎駐セルビア日本国大使の列席の下に除幕式が開催されました。

これは、2年前に、当地の日刊紙ブリッツに、様々な公共インフラ整備に貢献してくれた日本に友好的な謝意を示せないか、という市民からのコメントが寄せられことから、ブリッツ紙がベオグラード市に働きかけ、その結果、日本国民に感謝の印を示すための噴水を作ることになったものです。噴水の設計は公募により31人の応募の中から若手彫刻家の設計が採用され、ベオグラード市や市の水道局、交通局の資金により噴水が作られました。

除幕式では、ジラス市長から、「この泉により、ベオグラードを訪れた全ての人が、日本国民が我々に何をしてくれたかを知ることになる。日本の協力により、医療、教育、文化施設のみならず公共事業が改善された。日本に対して同じ規模の恩返しことをすることは出来ないが、感謝の意を表するために何かしらのことはすることができる」として、これまでの日本の協力に多大の感謝の意を表する旨の挨拶がなされました。

角崎大使からは、「日本は、これまでに日本国民の税金を使って総額2億ユーロ(200億円強)近い支援をセルビアに対して行ってきたが、重要なことは、これらの支援が十分活用され、セルビア国民の生活を向上させるために役立っていることである」との挨拶がなされました。

日本は、これまでにベオグラード市に対して、93台の公共バスを供与した他、上水道環境の改善、医療機材供与などの無償資金協力を実施しました。セルビアと日本の国旗のマークをつけてベオグラード市内を走る黄色いバスは、供与されてから既に8年がたちますが、未だに新車のようにきれいに整備されて、市民からは「日本バス」と呼ばれて親しまれています。停留所でバスを待っていても、他のバスが来るとやり過ごして、「日本バス」が来るのをじっと待つ人も多いそうです。こうしたモノを供与する協力とは別に、JICAは、ヒトを通じた協力として、中小企業振興や省エネルギー、デジタル地図作成に関する技術協力を実施したり、日本語教育や剣道のシニア・ボランティアも現在派遣中です。

約10年間で200億円というと、アジアなどの日本の援助の受け取り国からみたら比較的少ない金額かもしれませんが、平均給与(月額)が4万円にも満たないセルビア国民から見たら大きな金額です。私自身、長年国際協力に従事していますが、一般市民の発案により、日本国民に感謝するための記念碑を作ってくれたというようなことは初めてであり、とても感激しました。ベオグラードでは、街中を歩いていても、「日本人か?」とよく聞かれ、そうだと答えるとにっこり笑顔を返してくれたり、「こんにちわ」と日本語で挨拶されるなど、親日的な人が多いのですが、これは、コソボ紛争などの影響により国際的に孤立している時にも、日本が地道に支援してきたことがその要因の一つだと思います。既に欧州連合(EU)に加盟したポーランドやルーマニアが、今でも様々な機会に、EU加盟前に日本がいろいろと支援してくれたことに感謝の意を表してくれるそうですが、セルビアも、必ずや長い間日本に対して感謝の気持ちを持ち続けてくれることと思います。

セルビアは9月になって、急に秋めいてきました。これから長くて暗い冬にはいりますが、そうした気がめいるような時に、セルビア国民の義理堅い心意気に触れて、心が温まりました。この泉があるカレメグダン公園は、当事務所からもサバ川を挟んで遠くに見ることができるので、仕事で疲れた時や行き詰った時には、この公園を見て気持ちを新たにし、セルビアへの協力によりいっそう邁進していきたいと思います。

バルカン事務所長
黒澤 啓