バングラデシュの都市強靭化に向けて、世界銀行と共同セミナーを開催

2016年1月13日

JICAは、2015年12月19日(土)バングラデシュの首都ダッカで「バングラデシュ政府・世界銀行・JICA共同セミナー;バングラデシュの都市強靭性強化に向けた共同アプローチ」を開催した。セミナーは、世界銀行による「都市強靭化事業」(Urban Resilience Project。2015年6月30日借款契約締結)とJICAによる「都市建物安全化事業」(2015年12月13日円借款貸付契約締結)の共同事業開始(Join Launch)を目的とし、バングラデシュの都市強靭化に向けた課題と対策を話し合うために開催された。セミナーには、カマル計画大臣、財務省メジバウディン上級次官、ホック北ダッカ市長、ココン南ダッカ市長他、計約200人が参加するなど大きな反響を得た。

バングラデシュの都市脆弱性の課題

バングラデシュのダッカ都市圏は人口が約1500万人、人口密度が43,500人/km2と世界で最も人口密度が高い都市となっている(出典: Demographia World Urban Areas: 11th Annual Edition: 2015.01)。ダッカの都市化が拡大する一方、ダッカは自然災害や気候変動のリスクに晒されている。ダッカではマグニチュード6の地震が起きると、15万人の死者が発生し、GDPの5%が失われると予測されており、また気候変動の影響により、1m海抜が上がると30%の人口が影響を受け、14%の土地が何らかの形で浸水すると予測されている(出典:Comprehensive Disaster Management Program及びAssessing the Costs of Climate Change and Adaptation in South Asia, ADB, 2014)。これら自然災害等のリスクに加え、2013年4月24日にダッカでラナプラザビルが突如倒壊し、1135名の死者を出すなど、建物の安全性も都市の脆弱性克服のために大きな課題となっている。

このような状況に対して、世界銀行及びJICAは都市の強靭性強化という大きな課題に対し共同で支援を行うこととし、世界銀行は緊急時の対応システムの強化や市役所等の能力強化を目的とした「都市強靭化事業」を、JICAは公共・民間の建物の安全性を強化し、災害リスクを軽減することを目的とした「都市建物安全化事業」を実施することとした。本セミナーは、両事業の事業開始を行うとともに、バングラデシュの都市の強靭化に向け、今後実施すべきことを話し合うために、世界銀行東京防災ハブからも支援を得、バングラデシュ政府、世界銀行及びJICAの共催により開催することとなった。

【画像】

開会挨拶を行うJICA廿枝バングラデシュ事務所長

日本、チリ、トルコの経験からバングラデシュの都市強靭化を議論

セミナーには、バングラデシュ政府、世界銀行、JICA関係者の他、チリ共和国国家緊急対策室のビクター・オレラナ副長官、トルコ共和国イスタンブール耐震リスク被害軽減・緊急対応事業(Istanbul Seismic Risk Mitigation and Emergency Preparedness Project ; ISMEP)のゴカン・エルジンプロジェクトディレクター、日本からは東京都都市整備局市街地整備部の藤崎哲朗氏とJICA国際協力専門員の楢府龍雄氏が参加し、他国での災害復興の経験や都市強靭化に向けた取り組みの共有がなされた。東京都藤崎氏からは東京都が実施している地震に関する地域危険度測定調査の概要が説明され、リスクの把握に基づき、事業を優先順位付け、予算計画を立てて事業を実施していく必要があると指摘した。

バングラデシュ政府関係者は、今回の世界銀行とJICAの共同での取り組みを踏まえ、今後の都市強靭化に向けて、都市が抱えるリスクの把握、建築の法制度の改善と運用能力強化、設計及び建築技術の改善、政府間の調整メカニズムの構築、市民への防災教育の展開、大学等の教育プログラムの改革が必要であることが議論された。

セミナーの主賓である計画省カマル大臣は、バングラデシュでは建築基準が十分に適用されておらず、安全に建物が建てられていないことが課題であると指摘、建築基準の遵守とともに、建築資材の品質改善、建築技術の進歩、法運用に係る政府と民間の連携、さらにこれらのキャパシティ・ディベロップメントを進めることが大事であると指摘され、そのためには世界銀行とJICAの連携した取り組みはバングラデシュの都市防災強化にとって重要であると述べた。また、セミナーの総括として、ホック北ダッカ市長及びココン南ダッカ市長からは、日本、チリ、トルコの経験から学び、バングラデシュでも都市の強靭化のためにすべての対策を取りたいと意思が発せられ、とりわけバングラデシュでは市長が災害対応の全責任を担うことから、市役所職員の能力強化、市民への防災教育、緊急時の対応計画を強化し、世界銀行及びJICAで行っている都市強靭化プログラムの実現に向け、市として最大限努力していきたい旨発言があった。

【画像】

セミナーでのパネルディスカッション

今後のバングラデシュの都市強靭化に向けて

2015年3月に開催された第3回国連防災世界会議におけるパブリック・フォーラム(JICA、世界銀行、防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)共催)でもバングラデシュの都市強靭化に向けた取り組みが話し合われ、本セミナーを通じてバングラデシュの都市強靭化に向けた課題が確認された。

今後、JICAはバングラデシュの都市強靭化に向け、設計・建築技術向上及び建築基準の適切な執行を目的とした技術協力、バングラデシュの建築資材や施工技術に適した建物補強技術開発を目的とした地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)、さらに円借款「都市建物安全化事業」による公共及び民間建物の安全化支援を行うことにより、バングラデシュの都市強靭化に向けた重層的な支援を行っていく計画だ。

【画像】

都市化が進むダッカの街並み

発表資料