「できないって言うなー!」 笑顔と涙で築く信頼(2)−ジョソール青年海外協力隊員 奮闘記−

2013年12月4日

青年海外協力隊員は、ボランティアとして、プロジェクトの現場に飛び込む。若さゆえに経験は少なく、未熟かもしれない。けれど彼らは援助の最先端で、人と人との結び目を作る。助けたり、助けられたり。教えたり、教えられたり。隊員たちの奮闘のほんの一コマを、ジョソールの現場から伝える。

地道な支援、現場に足跡 ——赤塚梢さん

ジョソールの教員訓練校に派遣された赤塚梢さん(34)にとって、モリナ・ゴーシュさん(50)は、母親のような存在だ。モリナさんは、教員訓練校の同僚教師。「自宅が同じ方向なので、毎日のように一緒に帰ります。帰り道で、こちらの生活のこと、教育のこと、社会のこと、いろいろ教えてもらっています」
バングラデシュには、約81,500の小学校(1年〜5年)があり、16,500,000人の子供たちが通っている。教員の数は約361,000人。統計上は生徒48人に1人の教師がいることになっているが、実際には60人から70人が一教室で学んでいるという。さらに全国の約8割の小学校が二部制で、午前か午後のどちらかしか通えず、一日の授業時間は2、3時間。教員の数が圧倒的に足りないのが現状だ。また、依然として多くが、教師としての専門の教育を受けていない人たちだという。
技術が足りないうえに、ぎゅうぎゅう詰めの教室で働く教師たち。これでは充実した授業を期待するのは難しく、授業は一方的な暗記教育になりがちだ。バングラデシュでは、初等教育の純就学率は9割を超えるが、5年生まで学校に残る子供はそのうち6割程度。原因の一つに、教員の指導力不足が指摘されている。それに学校に魅力がなければ「先生になりたい」と思う子供たちも増えず、悪循環で教員不足が続く。
JICAは、バングラデシュ政府の初等教育開発計画(PEDP3:2011〜16年)を支援する一環で 、「小学校理数科教育強化計画フェーズ2」(技術協力プロジェクト)を実施。カリキュラム・教科書の改訂、教員訓練校の能力強化などを支援している。このプロジェクトを通じて作成支援した理数科の教科書は以前のものに比べ、図解が多く、子供たちが考えながら答えを出せるように工夫されている。
赤塚さんも、このプロジェクトの一環として、約200人が通うジョソールの教員訓練校に派遣され、パートナーのバングラデシュ人教師とともに、「先生の卵」向けの授業づくりを手伝っている。
赤塚さんは岐阜県の小学校の教員。2012年6月末から休職して協力隊に参加した。「バングラデシュの子供たちは生き生きとして、生きる力が強い。日本の子供たちは、いつも何かに急かされて追われているようだ」と、感じた。それでも、暗記教育ではなく、子供自身に考えさせ子供を学びの中心にする、という教育の基本は、日本でもバングラデシュでも変わらず重要だと確信した。
ただ、日本の経験をそのまま持ち込めば通用するというものでもない。バングラデシュのやり方を知りながら、歩み寄りたい。そんなとき、赤塚さんにとってモリナさんの存在や助言は大きい。モリナさんは、教師として長い経験があるだけでなく、JICAの技術協力プロジェクトも経験しており、その効果を信頼しているからだ。「10年ぐらい前にJICAボランティアと計算ドリルを一緒に作り、授業で使いました。とても便利で効果が高かったのを覚えています」と、モリナさんは言う。
長い期間、地道に積み重ねられたJICAの支援は、信頼となって教育の現場に足跡を残し、新たな歩みを支えている。

(了)

【画像】

ジョソールの教員訓練校

【画像】

赤塚さん(中)とモリナさん(右)、同僚のナズラル・イスラムさん

【画像】

改訂された初等教育の教科書。図解が多く、答えを考えさせる手法になっている