JICAボランティア 援助からビジネスへ、橋渡しに挑戦

高く積みあがった布地、黙々とミシンを走らせる人たち。ダッカ中心部にある衣類・手工芸品の店「カルポリ」は、1989年、JICAとバングラデシュ農村開発公社(BRDB)が協力して、地方の伝統手工芸品を都心部で販売する店として立ち上げた。

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「力を合わせて競争力のある店舗にしたい」と語る金子さん、小桜さん、齊藤さん(写真左から)=ダッカ市内の「カルポリ」で

今でこそ工房は活気にあふれているが、実はこの事業、2002年から2011年まで10年間赤字経営が続いていた。存続の危機を救うために派遣されたのが、JICAシニアボランティアの齊藤哲也さん(福岡市出身)、青年海外協力隊の小桜瑞希さん(大阪府八尾市出身)、金子結希さん(埼玉県宮代町出身)だ。

「カルポリ」には、1989年から2000年まで、47人もの青年海外協力隊員が派遣された。販売する製品の品質を上げるため、生産者への技術指導などに取り組んでいたが、生産が軌道に乗ったと思われた2000年、協力隊員の派遣はいったん終わった。

それからがカルポリの「冬の時代」だった。

2010年、カルポリの要請で再びJICAボランティアが派遣された。手工芸の技術指導が目的だったが、赤字続きの経営状況を見て「必要なのは経営管理」と助言した。圧倒的にビジネスの視点が欠けていた。そこで今回、2012年派遣の斎藤さんは経営管理、2013年派遣の金子さんは接客マナー、小桜さんは商品の品質改善というこれまでとは違う角度からの支援に取り組むことになった。

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「カルポリ」に導入されたPOSシステム

着任した齊藤さんはまず、これまでの経営状況を分析。赤字の最大の原因は「支出の3分の2を占める外部業者への支払にある」と、した。無計画な商品の買い付けにより、倉庫には不良在庫品があふれていた。生産者、販売者、管理者のコミュニケーションがなく、経理は不透明。外部業者への未払金まで放置してあった。

どこから手を付けていいか分からないような状態だったが、齊藤さんは「やるべきことをやれば、再生できる」という強い意思を持って改革に着手した。

まず不透明な経理をただすため、販売と在庫管理の情報を共有するためのPOSシステムを店舗に導入。また、スタッフの職務規定をつくり、違反すれば罰則、という厳しさを採り入れることにした。省庁の関連組織であることから、スタッフのビジネスマインドは極めて薄い。「ただ、若手の中には、自立に向けた意欲を持つ人も見られるので、カルポリを担う次のリーダーを育てたい」と、齊藤さんは言う。

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商品が整然と並んだ「カルポリ」の店内。全国各地から集まる手工芸品が多数ある=ダッカ市内の「カルポリ」で

接客マナーを担当する金子さんは、「接客の基本の"キ"、自分たちの商品をよく知るところから指導を始めた」と言う。無造作に積み上げられていた商品のディスプレイを変え、補充の仕方などを指導し、カルポリの店内は雰囲気が変わった。

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「カルポリ」で生産されているシャツ。衣料品は、人気商品となっている

「途上国の経済活動で、民間セクターやサービス業の担う役割はこれからどんどん大きくなっていく」と、金子さんは考える。そこには、援助や非営利の活動とはまた違った視点が不可欠だ。短い任期ではできることも限られているが、金子さんは「途上国の民間セクターをその国の若い人たちと一緒に育てる仕事を続けたい」と思っている。

「初めて来た時、長い間放置されていた大量の生地を前に呆然とした」と話すのは、品質管理を担当する小桜さん。もう使えなくなった生地を仕訳するところから始めた。「その時点から、こちらのスタッフとは感覚が違って悩んだ。少しぐらい汚れていても、穴があいていても大丈夫と言われてしまう」。商品としての品質管理の大切さをわかってもらうことには今も苦労をしている。「同じバングラデシュ人なら構わない、と言われてしまうが、あきらめずに言い続けるしかない」と言う。

バングラデシュには、世界最大のNGO「BRAC」が経営する衣料品・雑貨・手工芸品の店舗「アーロン」がある。ビル一棟を店舗にしたデパートのようなアーロンの規模からすれば、生産力も販売力もカルポリはまだまだ小さい。2013年12月、カルポリへのJICAボランティアの派遣を終えたが、齊藤さんたちが吹き込んだ風により、カルポリは援助からビジネスへ、と変化への一歩を踏み出した。