3年間の連携協力を振り返って

2020年3月10日

JICAは愛知県の中京大学ソフトボール部との連携によるボツワナへの青年海外協力隊派遣を3年間実施してきました。内容はボツワナ・ソフトボール連盟(BSA)傘下の代表チームや国内各地のアマチュア選手への技術指導(テクニカル・クリニック)です。すべてのポジションの選手が参加し、攻撃面のみならず守備の連係プレーなどの実践的な指導ができるのが中京大学ボランティアの強みです。

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最終年度にあたる今回の派遣は、これまでの3年間の協力の総まとめを意味します。この2月から3月にかけ派遣された機会をとらえ、同大学ソフトボール部長でもある二瓶監督にうかがいました。
「毎年ボツワナ側参加者が変わるため、宿題を課して翌年確認することは難しかったです。ボツワナ代表チーム選手であっても、結婚や出産など生活の変化で続けられないことも多いようです。」「それでも北部のマウンやマスンガでは、昨年テクニカル・クリニックに参加した選手が今年も元気に参加してきたのは嬉しかったですね。また1年目はどこもグラウンド整備がされていなかったのに比べ、2年目、3年目と整備されるようになってきたのはいい傾向です。」
「中京の学生の変化は、なんと言っても大学入学前、入学後も日本国内でソフトボール中心の生活をしてきた子たちが、開発途上国、それもアフリカに行って現地の人たちと接したことは大きな出来事であったと思います。でもぼく自身もそうですが、ボツワナ人と言っても結局は同じ人間だということ、特にソフトボールをしている人には悪い人はいないと思いました。部員にとってもソフトボールの技術面では一日の長があり、ある程度の指導はできますが、大事なことは外国人であっても自分たちと同じだということを部員たちが肌で感じてくれたこと、また外国人と臆せずコミュニケーションをとることができ自信につながったことが一番大きな収穫だったのではないかと思っています。」

2年生の時から3回連続して参加している中山さんと1年目と今回参加した鬼塚さんは、この3月に大学を卒業する4年生です。

中山「日本だとソフトボールや野球をする人であれば、本人のグローブを使うのが普通だと思うのですが、ここではテクニカル・クリニックにも、スパイクを履いてグローブを持ってくる子がいないのが衝撃でした。」「でも道具がなくても、ソフトボールが好きでソフトボールやりたいから集まってくるその純粋さにうたれました。」
鬼塚「日本の選手だとグローブは3年くらいで買い替える人がほとんどなので、使わなくなったグローブを集めてボツワナの子どもたちに使ってもらえたらと考えました。」
中山「前回来た時に、手袋がないのでバッティングの時に手がしびれるという子がいたので、今回いくつか使わない手袋を持ってきています。手袋やサングラスを着けると格好いいと思っている節もあるのですけどね。(笑)」
鬼塚「ボツワナに来てよかったです。日本にいたら普段英語を話すことないじゃないですか。でもここに来れば、なんでも英語で話さなければならないし、うまく言えなかった時は悔しいから後で調べたり周りに聞いたりして、次回はちゃんと話そうという前向きの気持ちを持つことができました。」
中山「アフリカに行くチャンスはなかなかないけど、昨年会ったボツワナ人コーチと再会した時にお互い覚えていたことが嬉しくて、ボツワナをぐっと身近に感じています。街の人たちも親切でいろいろ話しかけてくれて、テクニカル・クリニックのことも知っているようでした。私もいい経験ができました。」
鬼塚「ボツワナでの経験は教育実習で活かすことができました。日本の高校生たちにアフリカに行ってきたよ、モパニ(ガの幼虫)も食べるんだよって話すと目を丸くする。本当はモパニ食べられなかったけど(笑)。」
中山「そうそう、道路を牛やロバが普通に横切るんだよとかね。」
鬼塚「日本では当たり前の水や食べ物、環境問題についても実感を込めて教育実習で語ることができたのは大きな収穫です。」

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中山さん(右)と鬼塚さん(左)

中山さんは4月からは大阪の実業団に就職して仕事をしながらソフトボールを続けることが決まっています。鬼塚さんは現在募集中の青年海外協力隊への応募を前向きに考えているところです。

この連携協力により中京大学からはこれまで延べ53人の青年海外協力隊短期派遣が実現しました。毎年それぞれ1ヵ月強という短い期間ではありましたが、常に全力で動く学生隊員たちのきびきびとした動きがBSA関係者やボツワナのソフトボール・ファンに驚きとともに受けとめられ、ボツワナ選手との違いから生じる気づきを促し、今後のボツワナでの選手層の底辺拡大に向けた普及や指導の見直しのきっかけになったものと思われます。
その普及の観点で、3年間とおしてボツワナ側の受け入れを担当しているBSAのジョハネスさんによると、3年間でボツワナ国内の指導者延べ270人、選手延べ1050人に対して日本流のソフトボールを普及したことになります。
それほど遠くない将来に、ボツワナや南アフリカだけではなく、アフリカ大陸全体でソフトボールが盛んになり、オリンピックでの正式種目として採用されることを願いたいと思います。

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二瓶監督(後列右端)と中京大ソフトボール部の皆さん