環境「サトウキビの滓からエタノールを作る」

2010年8月18日

ブラジルの車はアルコールで走る。子供のころに聞いたこの話題、お酒で走る車があるなんてスゴイ、さすがは未来の国ブラジル!と思った記憶があります。ブラジルは1970年代に起こったオイルショックを契機に、化石燃料に依存しない社会を目指し、サトウキビから作ったエタノールを燃料として利用する国家プログラムを開始しました。その後、紆余曲折もありましたが地道に努力を重ね、現在ではバイオエタノール先進国としての位置を確固たるものにしています。現在国内で販売されている乗用車の殆どはフレックス燃料車と呼ばれ、エタノールとガソリンのいかなる割合でも走行できます。

ブラジルはエタノールの世界第2位の生産国であり、最大の輸出国でもありますが、熱帯雨林等の貴重な自然資源を多くもつブラジルはしばしば環境破壊に対する批判にさらされてきました。サトウキビを効率的に栽培するにはある程度の乾燥が必要とされ、湿度の高いアマゾンは産業向けの栽培には不向きですが、ブラジル政府はサトウキビ栽培のゾーニングマップを作成し、熱帯雨林での栽培に対するディスインセンティブを設けるなど、適切な栽培が行われるような指導を行っています。

さて、サトウキビからエタノールを生産するためには、途中まで砂糖の生産と同じ工程を経るため、ブラジルの多くの工場では砂糖とエタノールの両方が生産できるシステムを採用しています。砂糖の国際市況等によって生産比率が自由に変えられますが、1工場での砂糖の生産比率は平均的に45%程度であり、それから大幅に変更することはありません。砂糖・エタノール工場では、生産の過程で大量の搾りかす(バガス)が発生し、その有効利用は効率的な生産にとっても、地球環境の観点からも非常に重要な課題となっています。

バガスはボイラー発電の燃料としての用途や固めてペレット燃料等に利用できますが、折角あるエタノール生産設備を有効活用することによって、更に大きな成果が得られると考えられます。JICAは日本の産業技術総合研究所(AIST)とブラジルのリオデジャネイロ連邦大学(UFRJ)、サンタカタリーナ連邦大学(UFSC)と連携し、バガスからエタノールを生産する研究プロジェクトを支援しています。同研究プロジェクトでは、AISTのもつ前処理技術(バガスを細かく粉砕する技術)、UFRJのもつ酵素・分解技術、UFSCのもつ発酵技術等を融合して、効率的な次世代エタノールの生産システムの構築を目指しています。

共同研究はまだ始まったばかりですが、研究グループはそれぞれの分野での第一人者であり、すでに多くの成果がでており、国際的な研究誌に論文等が掲載されています。この技術が確立することによって、サトウキビの栽培面積を増やさずにエタノール生産を拡大することができ、またバガス以外のバイオマスでも同様な仕組みで生産することが可能となります。日伯の英知を集めたこのような共同研究により、地球規模の問題を解決することが期待されています。

ブラジル事務所 宮本義弘