世界環境デーに寄せて

2011年5月18日

6月5日は、世界環境デーです。さらに、今年2011年は国連が定めた世界森林年です。ということで、今回は森林保全をテーマにお伝えしたいと思います。

ブラジルは、アマゾンに代表されるように森林が非常に豊かな国ですが、JICAはブラジルの森林保全への協力に力を入れています。

森林保全が重要である理由は、森林は人間が地球上で生きていくために必要な(或いは役立つ)様々な生態系機能(ecosystem services)を提供してくれるからです。例えば、森林は木材や非木材資源(食物、樹脂、繊維、薬用物質、燃料など)を供給してくれます。気温の変化を緩和して人間にとって住みよい環境を維持してくれます。水資源を涵養し、洪水を緩和してくれます。遺伝資源や有用物質の化学組成・分子構造に関する情報も提供してくれます。そしてもうひとつ重要な生態系機能があります。それは、温室効果ガスである空気中の二酸化炭素を吸収して固定する機能です。

やや古いデータですが、各国の統計が揃っており比較可能な1994年のデータに基づく、土地利用変化と林業に起因する排出量を含んだ主要温室効果ガスの総排出量国別比較で、ブラジルは米国、EU、中国、ロシアに次ぐ世界第5位の排出量を記録しています。その内訳を調べてみると、温室効果ガスのうち最も割合が大きい二酸化炭素のセクター別排出量で、ブラジルでは土地利用変化・林業が約75%を占めています。これが意味することは、ブラジルでは森林伐採や森林の農地・放牧地・市街地等への転換によって排出される二酸化炭素量が非常に多く、世界全体の温室効果ガス総排出量の中でも決して軽視できない割合を占めているということです。従って、ブラジルの森林を保全することは、生物多様性保全などの観点からだけでなく、気候変動の緩和策の観点からも、地球規模のインパクトを持っていると言えます。

【画像】

(出典:2004にブラジル政府が国連機構変動枠組条約事務局に提出した報告書(統計年は1994年))

このような認識を踏まえ、JICAはブラジルの森林保全を支援するため、現在3つのプロジェクトを実施しています。ひとつは、日本の陸域観測技術衛星「だいち」のレーダー画像をアマゾン地域の森林違法伐採監視に活用するための技術・能力開発を目的とした「アマゾン森林保全・違法伐採防止のためのALOS衛星画像の利用プロジェクト」です。ふたつめは、地上森林調査とリモートセンシングを組み合わせて、アマゾン地域の森林の炭素蓄積量及びその変動を精度良く算定するための研究・技術開発を目的とした科学技術協力プロジェクト「アマゾンの森林における炭素動態の広域評価」です。この協力によって、広域の森林炭素蓄積量の算定技術が開発されれば、現在、気候変動対策の一環として国際的に議論され既に試行的に事業が実施されているREDD+(森林減少・劣化による排出削減、森林保全、持続可能な森林管理、森林炭素蓄積の増強)の国際的な枠組みの構築に貢献することが期待されます。最後に、大規模農業開発によって近年急速に自然生態系の破壊が拡大したセラード地域の中で、貴重な森林・自然生態系が残されているジャラポン地域の保全に向け、連邦政府、州政府、市、市民団体などが協力して同地域にある様々なカテゴリーの自然保護区を生態系コリドーでつなぎ、保全の枠組みを構築することを目的とした「ジャラポン地域生態系コリドープロジェクト」があります。

ブラジルは、森林・自然生態系の保全にこれまで積極的に取り組み成果を挙げてきた実績があり、豊富な知見と先進的な技術を持っています。JICAは、上記のような協力を通じてブラジルと日本の知見・技術を結集させ、さらに進んだ技術やノウハウを生み出すことにより、ブラジルの国内に留まらず、世界の森林・自然生態系保全に貢献していきたいと考えています。

JICAブラジル事務所
佐藤一朗