ブラジルのバイオ燃料

2011年7月26日

ブラジルというと、天然資源が豊富な国というイメージがありますね。特に最近、世界的に注目されているのが、ブラジル南東部沖合の深海底の地下深く、岩塩層の下に広がる「プレサル」と呼ばれる地層で見つかった石油鉱床です。現在でも既に、ブラジルは石油の輸出国になっていますが、この石油鉱床が開発されれば、ブラジルは世界有数の産油国になる見込みです。しかし、ブラジルが石油を自給できるようになったのは、実は最近のことなのです。

下のグラフは、ブラジルのエネルギー外部依存率を示しています。1970年代は、石油の80%あまりを輸入に頼っていました。その後、次々と石油鉱床が発見され、石油開発に国を挙げて取り組んだ結果、2000年代に入ってほぼ自給できるようになりました。

【画像】ブラジルのエネルギー外部依存率
ブラジルのエネルギー外部依存率
(出典:鉱山エネルギー省「国家エネルギーバランス2010」)

しかし、石油を輸入に頼っていた時代に石油ショックが起こり、石油価格が高騰して経済の大混乱をもたらしました。これをきっかけに1970年代からブラジル政府は「プロアルコール政策」を推進し、ガソリンの代替燃料として、燃料用エタノールの生産技術開発と生産・利用拡大に取り組んできました。そして現在では米国に次ぐ世界第2位のエタノール燃料生産量、世界第1位の輸出量を誇っています。ブラジルは産油国であるのに、今では車両燃料としてのエタノールの普及が世界で最も進んでいますが、このような歴史がその背景にはあったのです。

産業革命以来の人類による化石燃料の燃焼を主因とした大気中の温室効果ガス濃度の増加によって、地球規模の気候変動が進行し、甚大な影響を及ぼすことが予測されています。気候変動の進行を緩和するため、化石燃料の代替燃料として、エタノールなどのバイオ燃料が注目されています。ブラジルは、石油開発を進めつつも、バイオ燃料の生産拡大も目指し、この分野で世界をリードしていますが、同時に課題も指摘されています。ひとつは、エタノール生産の原料となるサトウキビの作付面積が急増し、自然環境破壊や耕作地を巡る他の食用作物との競合などの問題が指摘されています。また、ブラジル政府はバイオディーゼルの生産量の拡大にも取り組んでいますが、エタノール生産量が2008年/2009年の収穫シーズンで277億リットルであったのに対し、バイオディーゼルの2008年の生産量は12億リットルと20分の1程度であり、まだまだ生産量が少ない状況です。

このような背景を踏まえて、JICAは、気候変動対策の一環として、バイオ燃料に関する協力に積極的に取り組んでいます。例えば、サトウキビの搾りかす(バガス)や葉茎からエタノールを生産する技術開発に取り組む科学技術協力「サトウキビ廃棄物からのエタノール生産研究」を、日本の科学技術振興機構(JST)、産業技術総合研究所、及びブラジル側のリオ連邦大学、サンタカタリーナ連邦大学と共同で実施しています。また、バイオディーゼルの生産拡大を図りつつ小規模農家の生計を向上するというブラジル政府の政策を支援するため、小規模農家によるバイオディーゼル原料作物生産のモデルづくりを目指した「リオグランジドノルテ州小農支援を目指したバイオディーゼル燃料のための油糧作物の導入支援プロジェクト」を実施しています。

今後はさらに、固形バイオ燃料の生産・利用促進支援にも取り組んで行きたいと考えています。上の図をもう一度見ていただくと、石炭の輸入依存率が高まっていることがわかります。鉄鉱石が豊富で、伝統的に製鉄業の盛んなブラジルですが、製鉄の原料のひとつであるコークスを生産するための石炭の産出が少なく、大部分を輸入に頼っています。他方で、広大な国土、温暖な気候、豊富な水資源により莫大な量の未利用バイオマスが存在しており、このバイオマスを利用した代替固形燃料の生産と利用の促進は、ブラジルにとって重要な意味を持つと考えられます。

JICAブラジル事務所
佐藤一朗