たんぽぽプロジェクト 第1フェーズ最終評価について

2011年10月13日

ろう者組織の強化を通した非識字層の障害者へのHIV/AIDS教育事業
たんぽぽプロジェクト 第1フェーズ最終評価について
—障害は個性(属性)からスキルアップの原動力(才能)へ転換されてきた—

DPI日本会議 副議長 西村正樹

はじめに

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Bezerrosワークショップ

「たんぽぽプロジェクト」は、ブラジルのペルナンブコ州レシフェ市において、2008年10月からJICA「草の根技術協力事業」として、ろう者をはじめとする非識字層の障害者を対象としてHIV/AIDS予防啓発の促進を目的として実施してきましたが、今年9月で終了することから、以下の項目に関する最終評価のために訪伯(7月9日〜18日)しました。

  1. 本事業の実施に対する政府機関や他のNGOからの評価と認識について
  2. ろう者の組織とプロジェクト運営能力の強化及びHIV/AIDSワーカーの養成について
  3. ろう者の組織の経験等を生かした教材開発とワークショップの開催について

障害は個性(属性)からスキルアップの原動力(才能)へ

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人間の体ワークショップ

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タンポポ劇

情報・コミュニケーション面で様々な困難な状況下に置かれている人々への情報提供を、同様の経験をもつ当事者が、その視点と体験に基づき臨んだ姿勢と達成した成果は、極めて注目すべきものでした。それは、障害当事者運動のスローガンである「Nothingabout us without us!」が人権としての視点のみならず、様々な課題改善のためには、その課題に直面している当事者こそがキーワードであることを明らかにしたといえます。そして、当事者主体による本事業では、以下の具体的な成果を収めることが確認できました。

  1. 障害者が対象者・担い手の両方として地方政府や他のNGOから認識される。(ワークショップ開催15自治体 出席者835名 自治体から宿泊・会場費等の提供有等々)現在では自治体からのワークショップ要請も増えてきている。
  2. 7名のワーカーを育成し、本プロジェクトチームを基盤に新団体を結成し、運営に必要な知識を学んでいる。また市・州・全国レベルでの関係機関・団体との連携も確保している。
  3. 当事者性とワークショップの実施経験等をその都度使用する教材や手法・運営に反映させている。また、参加者はろう者と非識字層以外にも、その家族、教師、他の障害児・者、非障害児なども対象とした。現在、視覚障害者へのアプローチも視野に入れている。

おわりに

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タンポポワーカー

障害は、克服すべき課題であり、乗り越えて生きることが美徳とされてきた時代が長く続いてきました。こうした障害を否定的に捉え、障害のない人々に近づくことを求める価値観に多くの障害当事者は抵抗し、自らの障害を個性(属性)とし、ありのままの自分として生きることを主張してきました。そしてその運動は、障害の有無や程度に関わりなく誰もがともに地域で、普通に暮らせる社会の実現を目指すものでもありました。

本事業は、こうした当事者運動の理念に基づく取組みであったことはもちろん、さらに自らの障害と困難な体験を才能とスキルに転換させてきたといえます。

訪伯最終日の取材にたんぽぽメンバーが応えた。「たんぽぽに入る前はHIV/AIDSを全く知らなかった。今回の活動でその意味を知り、こんな重要なことを知らなかったことに驚いたが、多くのろう者は知らない。なぜ誰も教えてくれないのか。どんなに意思疎通が困難とされる人でもその人に合わせた伝え方があるはず。今、私たちは、この情報を多くの人に伝える役割を担いたい。そして、伝える人を育成し増やしていきたい。」