先月の事務所ニュースでお知らせしましたとおり、独立行政法人国際協力機構の初代理事長には前国連難民高等弁務官の緒方貞子氏が就任しました。10月1日に行われた新法人発足記者会見において、緒方理事長は「JICAは現場で働いておりますが、『現場の目』というものを『JICAの目』として、それを生かしていく仕組みを作っていくことが大切です」と述べ、現場重視の姿勢を明確にしました。JICAが『現場の目』でものを見て、それを基に事業を展開していくためには、JICA職員の中で現場に最も近くにいる在外事務所員が現場に足を運ぶとともに、第一線で活動される皆様の意見を吸い上げ、JICA本部を含む国内の関係者に発信していくことが重要です。皆様におかれましても、『現場の目』からの意見を是非積極的に当事務所にお寄せいただきますようお願いします。
(緒方理事長の「就任の弁」につきましては、JICA本部のインターネットWEBサイトでご覧いただけます。 http://www.jica.go.jp/about/president/index.html をご参照ください。)
また、新法人発足に先立って9月30日に行われた国際協力事業団解団式では、川上隆朗総裁(当時)が「解散の辞」として、29年2ヶ月に及ぶ国際協力事業団の歴史を振り返るとともに、独法化に向けて邁進した2年1ヶ月間に及ぶ総裁自身の活動を振り返りました。
10月26日から28日の3日間にわたり、重症急性呼吸器症候群(SARS)など、重大感染症の再発防止に資することを目的としたセミナーが、広州市科技局とJICAの共催により、同市にて開催されました。このセミナーには、チベットを除く中国全土から110名、日本から4名の感染症指定病院医師、疾病予防感染センター医師が参加し、広東省におけるSARS対策の中心となった広州市呼吸疾病研究所の鐘南山所長、WHO西太平洋事務局のSARS対応責任者である押谷医師、国立国際医療センター研究所倉辻副所長、国立感染症研究所ウイルス第三部田代部長等、当該分野の日中の第一人者が講演を行いました。
テーマが高い関心を集めているSARS対策であったこと、日中から錚錚たる医師の参加が得られたことからマスコミの関心も高く、開会式には日中のテレビ局や新聞記者も訪れ、その後主催者への記者会見も実施されました。その模様は当日夜のテレビニュースで放映されたほか、翌朝の朝刊一面にも掲載されました。
10月22日(水)、中日友好病院内の遠隔教育教室において、技術協力により供与された遠隔医療・遠隔教育システムの開通式が行われました。また、これに先立って10月21日には、中国中西部地域の県(市)レベル病院の臨床検査技師50名を対象とする約2ヶ月間の研修「貧困地区医療技術研修」が始まりました。遠隔医療・遠隔教育システムは、日本の無償資金協力により建設され、プロジェクト方式技術協力により技術協力を実施してきた日中友好病院と、甘粛省(蘭州医学院第一附属病院)、新疆ウイグル自治区(バヤンゴル州人民病院)、四川省(広安市人民病院)の3病院を結ぶもので、中日友好病院の医師がこのシステムを利用して、診断、治療に高度な技術を要する病気の治療について適宜アドバイスを与えたり、中西部地区の医療従事者に対し遠隔教育を実施することが予定されています。また「貧困地区医療技術研修」は、中西部の医療レベルの水準向上を目指して、中西部の県(市)レベル病院の医療従事者を対象として2000年から実施しているもので、今年は臨床検査技術を主たる内容とする研修を行うことになっています。
中国リハビリテーション研究センター(日本政府の無償資金協力によって設立)では、創立15周年を記念し、10月25日に「第2回日中リハビリテーション医学学術シンポジウム」が開催されました。このシンポジウムには、リハビリテーション専門職養成プロジェクトの日本人専門家と中国国内の同分野の専門家がリハビリ教育について講演したほか、JICAの研修制度を利用して日本で修士号を取得したセンターのスタッフが研修の成果を発表しました。
中国のリハビリ人材教育は一般には未だ専業化されていませんが、2001年11月から実施中の上記プロジェクトでは、中国で初めて、作業療法学科と理学療法学科に分け、大学教育レベルの専門職人材育成を行っています。プロジェクト開始以来、日本人専門家の指導を得ながら、4年制大学の教育システムが整備されてきており、これまでに両学科のカリキュラム作成、教材の編集、教員業務指導等が進められてきました。
10月29日(水)〜31日(金)の3日間にわたって、プロジェクトリーダー会議が当事務所において開催されました。同会議では、個別協議において、プロジェクトごとに次年度の実行計画について協議するとともに、全体会議において、当事務所から独立行政法人化に伴う組織、業務改革の方向性について説明し、今後現場主導強化を進める上での課題等について意見交換を行いました。
さらに本会議では、公安部出入国管理局の劉暁峰氏と中日友好協会政治交流部長の袁敏道氏を講師として迎え、最近の中国の治安情勢と、最近の日中関係について、それぞれ講演していただきました。本会議の開催結果につきましては、来月号で詳しくご紹介いたします。
平成15年度の在外案件別事後評価調査が始まりました。この調査は、協力終了後3年程度経った旧プロジェクト方式技術協力案件について、効果、自立発展性を中心に評価するもので、国別事業実施計画の改善や、効果的・効率的な事業の立案・計画と実施に向けての教訓・提言を得ることを目的としています。今年度評価の対象となるのは、(ア)国家水害防止総指揮部指揮自動化システムプロジェクト、(イ)中日医学教育センター臨床医学教育プロジェクト、(ウ)住宅新技術研究・人材育成センタープロジェクトの合計3案件です。現在調査の準備中で、年度内に報告書が完成する予定です。
11月17日から19日の3日間、中国植林植草に携わる日中の政府・民間関係者が一同に会し、「日中緑化協力ワークショップ」が開催されます。
1998年の長江大洪水以降、日中の緑化協力はますます発展を見せており、現在、中国において緑化協力に携わっている日本の団体は、あわせて数十にのぼると言われています。中国ひいては地球全体の生態環境を保全・回復することを目標に、各団体とも様々な活動を中国国内で実施しています。今回、そのような活動の経験交流、情報交換の場として、本ワークショップの開催を企画しました。
11月17日は、北京において中国の林業政策、関係団体の活動状況、事例報告などの発表を中心としたプログラムを実施し、11月18日から19日までの2日間は山西省大同市で活動している「緑の地球ネットワーク」の活動現場を見学します。
森林自然環境協力分野の関係者には本ワークショップのご案内をすでに送付しておりますが、上記分野以外の関係者で参加をご希望の方は、当事務所担当(鍜治澤、李飛雪、堀インターン)までお問い合わせ下さい。
国別研修「公害防止管理者制度」(第4回)が、日本国際環境技術移転センター(ICCET)の協力のもと、中部国際センターにおいて11月3日から11月30日までの予定で実施されます。
公害防止管理者制度とは、工場における公害防止体制を整備するため、昭和46年「特定工場における公害防止組織の整備に関する法律」に基づいて実施されている制度で、約2万の特定工場において公害防止に関する業務を統括する「公害防止統括者」、公害防止に関して必要な専門知識及び技能を有する「公害防止管理者」の選任を義務付けるものです。
中国においては、国家環境保護総局(SEPA)が、昨年度本研修に参加した研修員の提案も踏まえ、本年5月8日に五都市(貴陽、重慶、鎮江、長春、通化)に対し、公害防止管理者制度に類似する制度(中国企業環境管理監督員制度)の導入に向けた試行を通知しました。今年度の研修は、このSEPAの取組みを支援すべく、上記五都市の幹部を中心とした参加者を対象に実施する予定です。
また、11月11日から12月7日まで、国別研修「公安部捜査幹部研修セミナー」が実施されます。この研修コースは、中国公安部の犯罪捜査担当の中堅幹部に対し、日本の警察制度、各種犯罪対策、国際犯罪の取締り、及び地域警察活動などについて紹介するとともに、日本側関係者との交流を行い、両国の犯罪捜査協力の円滑化に資することを目的としています。同コースは今年3回目を迎えますが、これまで以上に地方の公安担当者の参加が増えた(今回は上海市、福建省及び黒龍江省)のが特徴です。
10月23日に、日中友好環境保全センター(1996年に無償資金協力で建設され、技術協力プロジェクトを実施してきている)において、第三国研修「アジア地域環境能力向上」実施のための協議議事録(R/D)が署名されました。この研修は、昨年8月〜9月に南アフリカで開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)」において、わが国が同センターを活用した途上国に対する技術協力を提案したことを受けて計画されたもので、今年から2005年までの3年間、年1回東アジア・東南アジアを中心としたアジア各国の環境管理担当者に対し、日中友好環境保全センターの活動を中心に日中の環境管理の経験を紹介し、今後の地域環境の改善に資することを目的として実施されることになっています。第一回目は、来年3月1日から10日までの日程で、インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、モンゴル、カンボジア、ウズベキスタン、マレイシア、ラオスの9カ国から参加者を得て実施される予定です。
10月21日(火)、吉林省長春市において無償資金協力により制御施設等が改善された長春中日友好浄水場の竣工式が開催されました。この式典には、長春市祝市長、国家商務部国際経貿関係司王副司長、日本大使館渥美公使、JICA中国事務所櫻田所長を始めとする多くの関係者が出席しました。長春中日友好浄水場は日本の無償資金協力により整備された後、13年以上にわたり運転され、「中国におけるモデル浄水場」、「浄水における日中交流のシンボル」となっています。今回の式典の場において祝市長から、これらの無償資金協力は長春市水道事業の発展、水供給の安定、水質の向上に大いに貢献しているとの感謝の言葉がありました。
10月2日より10月6日まで、上海で「2003年全国青少年AA組(16才以下)野球選手権大会」が開催されました。大会には全国各地から10チームが参加。2グループに分かれて総当りの予選を行った後、順位決定戦が行われました。その予選の第2試合で煤孫泰洋隊員(H13年度2次隊 四川省・攀枝花市)率いる「攀枝花市青少年野球チーム」と白根健一郎隊員(H14年度1次隊 河南省・新郷市)率いる「河南二建野球チーム」が対戦しました。結果は5-2で「河南二建野球チーム」が勝ちましたが、中国史上(!?)、協力隊員の指導する野球チーム同士が対戦するのは初めてで、記念すべき試合となりました。
主な調査団(派遣中・派遣予定) (12月)
10月11日から14日まで北京市内で三中全会が開催されました。全体会議では、「社会主義市場経済体制整備の若干の問題」及び「憲法の一部内容改正に関する党中央の提案」等について討議、採択しました。
社会主義市場経済に関しては、主要な任務として次の各点を強調しました。(ア)公有制を主体としつつ、各種の所有制経済がともに発展する基本的経済制度を完備すること、(イ)都市と農村部の経済構造の二元性の着実な解消に資する体制を構築すること、(ウ)地域経済の調和の取れた発展を促進する構造を形成すること、(エ)統一的で開放性があり、競争と秩序が備わった現代的市場システムを構築すること、(オ)マクロ的な調整体系、行政管理体系、経済法律制度を完備すること、(カ)就業機会と収入の分配を改善し、社会保障制度を完備すること、及び(キ)経済社会の持続可能な発展を促進すること。
また憲法改正については、現行憲法が果たしてきた役割を評価しつつ、経済・社会発展からの要請に基づき、第16回党大会で確定された重要な理論的観点と重要な方針・政策を盛り込むべく改正する必要があるとしました。
さらに、地域開発に関しては、中西部地域の改革・発展の加速に加え、東北地域の古い工業地域の再振興を進め、一定の条件を満たした東部地域での現代化先行政策を奨励することが盛り込まれました(10月14日付け人民網日本語版、10月21日付け国際貿易等を元に記述)。
インドネシアバリにおいて10月7日に開催された日中韓首脳会談において、「日中韓三国間協力の促進に関する共同宣言」が調印されました。宣言は、三国間協力を発展・深化させることが、それぞれの二国間関係の発展を促すのみならず、東アジア全体の平和、安定及び繁栄の実現に貢献するものと述べるとともに、三国間協力に係る基本的見解を示しました。そして、協力を深化させる具体的な分野として、貿易及び投資、情報通信、環境保護、災害の予防及び管理、エネルギー、金融、科学技術、観光、漁業資源保全、教育、文化交流、感染症予防、国境を越える犯罪の撲滅などが上げられました。
また上記会談において温家宝首相は、3カ国間協力に関する4つの提案を行い、その中で、中国東北部振興・東北アジア協力に関するシンポジウムを来年中国で開催すること、東北振興戦略は3カ国協力に新たなチャンスをもたらすことなどを述べました(10月8日付け人民網日本語版、10月21日付け国際貿易等を元に記述)。
以上