JICA中国事務所ニュース 2003年12月号

1. JICA及びJICA事業に関する最近のトピック

  1. プロジェクトリーダー会議の結果について
    先月号でもお知らせしましたが、2003年10月29日から31日までの3日間、2003年度プロジェクトリーダー会議が当事務所において開催されました。29日及び30日は16年度の案件別投入計画に係る個別協議、最終日には全体会議が行われました。

    全体会議の分科会では、「現場主導」を今後更に強化するために解決を要する課題について議論されました。この中で、「現場主導」の強化のためには、予算の執行を含む決裁権限の本部からの大幅な委譲等を通じて、在外事務所の機能強化を一層進める必要があるという意見が出されました。また、当事務所から各プロジェクトへの情報発信の徹底と促進、事務手続きの簡素化、プロジェクトの内容に応じたモニタリング及び評価の必要性も提言されました。

    上記提言のうち、情報発信の徹底と促進については、事務所員の出張予定や本邦からの調査団派遣の予定等を毎週メールでお知らせすること等を含めた改善策を決定し、すでに実施しています。その他事務所内のみで実施に移すことのできない提言については、現在本部との間で進めている現場主導強化のための施策の検討に反映させることとしたいと考えています。

  2. 長江上流域の土砂災害対策及び自然環境修復のための開発調査の内容が固まる
    開発調査「雲南省小江流域総合土砂災害対策及び自然環境修復計画調査」の事前調査団が11月2日から25日まで派遣され、本格調査の調査項目、協力範囲などについて中国側(雲南省水利庁)と協議を行ないました。

    小江は、長江の上流(金沙江)の支流で、流域面積は約3,000平方キロメートル、流域内には土砂流危険渓流が107あり、流域内のほとんどが山岳部(標高約1000mから約4000m)で、ほとんどの山には植生がなく(森林被覆率3%とも、6%とも言われています。)急峻であり、金沙江の支流の中でも最も土砂流出の激しい地域です。このため、降雨のたびに家屋や農地などが土石流によって流され、また年間600万トン程の土砂が、小江から金沙江へ流出しています。このような状況の改善に資するため、本開発調査では、小江流域の土砂災害対策及び自然環境修復計画に係るマスタープランの策定と緊急プロジェクトのフィージビリティ調査を行なうこととしています。

  3. 日中緑化協力ワークショップが開催される
    前号でもお伝えしたとおり、11月17日から19日までの3日間、JICAの主催により、「日中緑化協力ワークショップ」が開催されました。日本側からは中国における緑化協力に携わる14の民間団体、日本大使館、国際協力銀行(JBIC)及びJICAが、中国側からは国家林業局、地方林業庁及び研究所などが参加し、参加者の合計は約90名にも及びました。

    初日午前は、国家林業局が中国における日中林業協力の概要や6大重点プロジェクトを中心とした中国林業政策の現状等をテーマに発表し、JICAが中国林業科学院に調査の中間報告として委託した「中国植林植草協力マップ」を照会しました。また午後には、中国緑化基金会、緑の地球ネットワーク、JBIC、及びJICAの四川省森林造成モデル計画プロジェクトがそれぞれの具体的な協力活動について発表しました。これに対して参加者からは、技術的問題、植林・植草に係るコストの問題、地域住民の生計向上と緑化との関連を含む幅広い質問や問題提起が行われました。

    また残り2日間は、NPO緑の地球ネットワークの協力により山西省大同市の活動現場の視察を行うことができました。緑の地球ネットワークは、活動開始後11年の間に、地域住民と協力して、自然条件が厳しい大同において杏の植林を成功させてきており、日中の参加者は、高い関心を持って緑のネットワークの関係者や村人に対し様々な質問を行いました。

    このワークショップは、中国における緑化に携わる日中の個人・団体に交流と情報交換の場を提供した点で非常に有益であったと思われます。またJICAにとっても、重点開発課題の一つである「森林資源の保全・回復」の今後の協力の方向性を考えるうえで役に立つ多くの情報を収集でき有意義なワークショップとなりました。このワークショップの結果は報告書に取りまとめ、ワークショップの参加者に配布するとともに、JICAのホームページを通じて公開することにしています。

  4. 四川省森林造成モデル計画NGO会議開催される
    11月20日から22日までの3日間、四川省森林造成モデル計画プロジェクトのサイトがある四川省凉山彝族自治州西昌市において、上記プロジェクトと凉山彝族自治州人民対外友好協会共催によるNGO会議が開催されました。この会議は、上記プロジェクトが地域住民の協力と参加を得ながらモデル森林の造成などを進めるためには、同じ地域で活動を展開する国内外のNGO等と連携する必要があるとの認識のもと、その第一歩として、これらのNGO等が一同に会して、それぞれの活動内容について情報交換したり、活動を展開するうえで日頃感じている問題点等について意見交換することを目的として開催されたものです。

    この会議には、同州において多種多様な活動を実施している国内外のNGOや個人を含む約50名が出席しました(この中には、同州内に派遣されている5名の青年海外協力隊員が含まれます)。初日の本プロジェクトを含む4つの団体の活動紹介等に続いて2日目に行われた分科会においては、参加者が3つのグループに分かれて、プログラムの自立発展性を如何にして高めるか、NGO相互間のネットワークを如何にして強化するか、そしてNGOと政府は如何にして協調すべきか、について議論を行いました。3日目は、上記プロジェクトを含む3つの団体の活動現場を視察しました。

    この会議は、上記プロジェクトが凉山彝族自治州で活動を展開するNGO等と直接会ってそれぞれの活動について情報交換することにより、今後連携協力の可能性について協議する下地を作ることができた点で非常に有意義でした。また、多くの参加者が積極的に意見を出し合ったことなどから、会議は建設的な雰囲気の中で進行し、会議の終わりには、すべての参加者が、来年以降もこのような会議を開催すべきとの考えを示しました。今後、この会議の成果を活かして、凉山彝族自治州の持続可能な発展に向けた息の長い取組につなげていくためには、会議の中で参加者から示された具体的なアイディア(インターネットやメーリングリスト等を通じた意見・情報交換の場を作る、等)の実現に向け、地域住民、地方政府、及びNGOが主体になった議論が早期に開始されるよう後押しすることが必要になると思われます。

  5. 太湖水環境修復モデルプロジェクト「水環境保全と環境NGO活動」がセミナー開催される
    11月27日、江蘇省無錫市にて、太湖水環境修復モデルプロジェクト第3回セミナー「水環境保全と環境NGO活動」が開催されました。本セミナーは、同プロジェクト開始以降毎年1回開催されており、過去2回は水環境修復に関わる先進技術の紹介等を中心としましたが、第3回目の今年は、市民・NGO参加による環境保護を中心とする内容にし、中国の環境NGO「緑家園志願者」等をはじめとする日中双方の環境NGOや大学関係者約110名の参加を得て開催されました。

    本セミナーでは、上記プロジェクトの短期専門家から土壌を用いた水質浄化の事例紹介や日中双方のNGO関係者による市民参加型環境保全活動の事例紹介がなされ、質疑応答や意見交換が活発に行われました。また、水質保全に対する一般市民の意識向上のための手法の一つとして、簡易水質試験器材を用いた水質検査実習が行われ、参加者全員が慣れない手付きながらも真剣に水質検査に取り組みました。

    一方、このセミナーに先立ち、前日の26日に、上記プロジェクト専門家等が青年海外協力隊員(日本語教師木南隊員)が配属されている無錫市東林中学を訪問し、同校校長以下教師・生徒約55名の歓迎を受け、日本の紹介や参加型水質検査実習を含めた環境教育を行いました。このことは、技術協力プロジェクトと青年海外協力隊の活動の効果的な連携として有意義であったと思われます。

  6. 医薬品安全性評価管理センター日中友好プロジェクトワークショップが開催される
    11月17日から11月28日にかけて医薬品安全性評価管理センター日中友好プロジェクトにおいて、第3回技術ワークショップ「生殖発生毒性試験」が開催されました。生殖発生毒性試験は、1960年代に日本で大きな社会的問題となったサリマイドによる奇形児の発生を契機に新薬の安全性試験の一つになり、最近では、環境ホルモン様物質の出現により、日本ではますますその重要性が高まっています。上記ワークショップは、北京以外のGLP(検査実施適正基準)施設及び研究所等から参加した約25名の中国人技術者を対象に、生殖発生毒性試験技術の向上を目的として実施されました。

  7. 砂観測用レーザーレーダーが設置される
    11月24日、日中友好環境保全センターフェーズ3供与機材「黄砂観測用レーザーレーダー」の設置式が、黄砂被害地で発生源でもある内モンゴル自治区環境保護局(フフホト市)において開催されました。

    黄砂観測用レーザーレーダーは、レーザーを光源として大気中の塵の散乱光を高感度のセンサーで計測し、黄砂の分布を調べる観測装置です。地表面から10,000m以上まで高度分布が計測でき、黄砂と大気汚染物質との区別も可能なため、これまで肉眼に頼るしかなかった従来の黄砂観測に科学的客観性を与えるとともに、観測データを用いて黄砂気象予測モデルを検証・改良することにより、黄砂現象の全体像の把握が進むこととなることが期待されています。

  8. JOCV平成13年度2次隊が帰国し平成15年度2次隊の着任!
    12月3日、平成13年度2次隊の隊員5人が2年間に亘る活動を終え帰国します。12月1日には科学技術部及び日本大使館を表敬訪問して活動の報告を行う予定です。帰国する隊員の皆さん、2年間のそれぞれの分野での活動お疲れ様でした。また隊員の活動をご支援いただいた皆様、本当にありがとうございました。

    同日には、帰国する隊員に入れ替わり、平成15年度2次隊4人が着任します。新隊員は着任後北京において約3週間、オリエンテーション、語学訓練、関係機関への表敬訪問、任地訪問などからなる現地訓練を行い、12月27日にそれぞれの任地へ赴く予定です。これから2年間どうぞよろしくお願いします(帰国、赴任する隊員の氏名及び職種・配属先については、2.人の動き欄参照)。

  9. 2名のインターンが中国事務所にて国際協力の実務に従事!
    JICAでは、将来国際協力・開発援助分野において活躍することを希望する大学院生に対し、JICA内における実務研修を通じて、国際協力・開発援助についての理解を深めると同時に、同分野の研究を深める機会を提供し、将来の援助人材育成に寄与することを目的として、インターンシッププログラムを実施していますが、今年度当事務所で受け入れた2名が現在ともに事務所内で実務に従事しています。このうち1名は、筑波大学大学院環境科学研究科在学中の堀俊介さんで、10月下旬から生態環境分野に関連する業務に従事してきました。堀さんのインターンシップ期間は残りわずかになりましたが、これまで特に上記の緑化協力ワークショップの準備と運営に大いに貢献されました。もう1名は東京大学大学院法学政治研究科在学の劉芸さんで、改革・開放支援分野に関連する業務に従事しています。劉芸さんはインターンシップを開始したばかりですが、専門分野と担当する業務との関連が深いので、期間はわずか1ヶ月と短いですが、ご自身と当事務所の双方にとって有意義なインターンシップになることが期待されます。

  10. 青年招聘第17陣が無事出発
    今年度最後となる青年招聘第17陣「中国地方青年招聘計画」及び「青年海外協力隊日本語教師招聘計画」の計89名の青年が11月26日、北京首都空港を出発し、無事日本に到着しました。

    このうち、「中国地方青年招聘計画」は公募により参加青年を選抜するもので、今年は遼寧省、山東省、湖北省から、当該地域のマスコミ推薦参加者10名を含む69名が選ばれました。

    また「青年海外協力隊日本語教師招聘計画」は、中国で活動する青年海外協力隊日本語教師隊員の同僚である中国人日本語教師を日本に招き、最新の日本事情や日本語教授法を学んでもらうもので、団長は、JICA技術協力の中国政府窓口機関である科学技術部中日技術合作事務中心の白楊職員が務めます。

    一行は12月18日まで日本に滞在し、東京では文化、経済、歴史等の講義や関係機関視察・訪問を行い、地方ではそれぞれの専門分野の視察に加えて、合宿、ホームステイ等を行って、日本の青年と交流することになっています。

  11. 中国政府と世界銀行の共催による貧困対策関係国際会議の準備会合が開催される
    中国政府と世界銀行が共催して来年5月に上海で開催する貧困対策に係る国際会議の準備会合が11月17日に世界銀行中国事務所で開催されました。上記国際会議は、どのようにすれば貧困対策の成功事例をスケールアップすることができるのかを主たるテーマとするもので、同じテーマで数ヶ月にわたって行われるテレビ会議システムや電子メールを活用した議論等の成果を踏まえて開催されることになっています。同会議には、数カ国の途上国の国家元首を含む600名程度の参加が予定されています。この国際会議や事前の議論の概要について関心をお持ちの方は、次の世界銀行のウェブサイトをご参照ください。
    http://www.worldbank.org/wbi/reducingpoverty/

2. 調査団等の動き

主な調査団(派遣中・派遣予定) (12月)

  1. 貴陽市大気汚染対策計画調査(10月12日〜12月下旬)
  2. 無償結核合同レビュー(11月20日〜12月3日)
  3. 農業技術普及終了時評価調査(11月23日〜12月5日)
  4. 新疆トルファン持続的地下水資源利用調査事前調査 (11月24日〜12月17日)
  5. チベット羊八井地熱資源開発調査第5回現地調査 (11月28日〜12月7日)
  6. 中国西部開発金融制度改革調査(事前調査)(12月1日〜12月19日)
  7. 林業生態研修センター基礎調査 (12月12日〜12月20日)
  8. 日中友好環境保全センターフェーズ3運営指導調査 (12月14日〜20日)
  9. 特定テーマ評価「環境分野」フィードバックセミナー準備調査団(12月16日〜18日)

3. 今月の行事等

  1. 11月30日〜12月20日
    「環境情報ネットワーク技術研修」平成15年度第二フェーズ前半
  2. 12月1日〜2日
    医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構 宮島理事長
    (前職 厚生労働省医薬局長)来訪
  3. 12月3日
    農業技術普及合同調整委員会
  4. 12月3日〜27日
    青年海外協力隊平成15年度2次隊現地訓練
  5. 12月8日〜12日
    水利人材養成プロジェクト土石流・地すべり観測及び防止技術研修
  6. 12月9日〜13日
    大学生作文コンクールJICA事業視察研修旅行
  7. 12月20日〜24日
    青年海外協力隊冬季健康診断及び隊員総会

各協力現場で計画されている行事等(セミナー、ワークショップ、カウンターパート機関主催のセレモニー、その他)がありましたら、是非事務所担当まで情報をお寄せください。

4. 中国の動き

このほど、「中共中央による東北地域等旧工業基地振興戦略に関する若干の意見」が正式に発表されました。同意見の中で中共中央は、既に設立することを決定済みの国務院旧工業基地調整改造指導グループ については、その具体的な事務機構を国家発展改革委員会に設置し、政策・措置の制定と実施に関する調整業務を担当するものとしています。また東北振興については、以下の4つの側面から政策的な支援を行うと打ち出しています。(1)社会保障システムを整備する。(2)一部の旧工業基地の都市を選択して、企業から社会サービス事業実施の機能を分離するモデル事業を実施する。(3)財政・税収の政策の面で、旧工業基地に対し、然るべき支援を行う。(4)投資体制の改革を深化し、旧工業基地の整備に関するプロジェクトの審査手続きを簡素化し、旧工業基地に対する国債または専用基金を通じた支援を拡大する。

国家発展改革委員会関係者の情報によると、現在国家発展改革委員会の張国宝副主任は国務院旧工業基地調整改造指導グループ弁公室(略称「東北弁公室」)の主任を務める見込みであるとのことです。同弁公室には(1)政策研究・体制革新組(総合組)(2)工業計画組(3)関連産業調整組といった3つの組(グループ)を設置する予定であり、弁公室の定員は20名で6名の司長級のポストが予定されています。

さらに「東北弁公室」の設立に関し、中国社会科学研究院工業経済研究所の魏後凱研究員は、これまで「西部開発弁公室」が直面したような困難を避けるために、「国が必要な資金を提供し、東北地域の人材育成、対外開放、国有企業改革、就職難等の問題解決に使うべき」と指摘しています。
(11月20日付け中国網掲載記事「国務院将成立東北弁公室」を元に記述。)

以上