JICA中国事務所ニュース 2004年3月号

1. JICA及びJICA事業に関する最近のトピック

  1. 合同所長会議開催される −緒方改革の柱、「在外機能強化」に向けて−
    2月2日から4日までJICA本部において、全在外事務所長、駐在員事務所長、国内機関長が一同に会して「合同所長会議」が開催され、当事務所からも櫻田所長が出席しました。

    同会議は、緒方理事長就任後初めての所長会議で、緒方理事長が就任当初から掲げている「現場重視」に向けた組織・業務改革の一環としての「在外機能強化」のあり方が大きなテーマとして採り上げられました。

    今回の会議で確認された在外機能強化の主な目的は、「ニーズに的確かつ迅速に対応できる協力プログラム形成機能を強化すること」、及び「迅速かつ効果的に事業を実施できる事業実施監理機能を強化すること」の2点です。今後この目的を達成するために、「在外事務所ができないことを本部が支援する」との基本理念に基づき、在外事務所が案件形成から実施・評価までを一貫して行う「在外主導の新ビジネスモデル」が導入されることになっています。

    当事務所としては、中国における迅速、かつ的確な案件形成及び実施監理を目指して体制強化を図るとともに、在外強化に向けたJICA全体の取組みに積極的に貢献していきたいと考えています。在外強化に向けた具体的取組みや新しい事業運営形態については、決定次第中国派遣中専門家、協力隊員等の皆様にご説明します。

  2. 協力隊地域別拡大調整員会議開催される
    2月25日から27日まで、シンガポールにおいて、アジア大洋州のボランティア派遣国事務所・駐在員を対象とした拡大調整員会議が開催されました。今回は、ボランティア事業をJICAの国別事業実施計画に如何に組み込んでいくか等、今後のボランティア事業のあり方についての議論が中心となったことから、各事務所のボランティア担当次長・所員も参加しての「拡大」会議となりました。

    会議では、上記の議題のほか、青年海外協力隊派遣及びシニア海外ボランティア派遣に関する課題等について、本部案を元に積極的に話し合われました。今回の会議で取り上げられた諸課題については、各国出席者から出された意見を踏まえ、JICA本部においてさらに検討される予定です。

  3. 環境社会配慮ガイドラインに係る科学技術部、商務部等への説明が行われる
    2月9日に日本大使館と科学技術部(技術協力窓口)に対して、2月10日に商務部(無償資金協力窓口)に対して、それぞれJICA本部環境女性課が中心となってまとめた環境社会配慮ガイドラインの改定案に係る説明を行いました(科学技術部への説明には、国家環境保護総局職員も同席)。

    JICAは環境配慮ガイドラインを1990年に策定し、施行してきましたが、その見直しが必要となったことから、2002年12月に設置した「JICA環境社会配慮ガイドライン改定委員会」の提言を踏まえ、環境社会配慮ガイドラインの改定案をまとめました。同改定案については、JICAのウェブサイトに掲載して、2月6日までパブリックコメントを求めるとともに、東京、大阪、名古屋、九州、沖縄において、一般の方々を対象としてそれぞれ説明会を開催しました。さらに、JICAが協力を実施する相手国政府関係者や日本大使館に対して、在外事務所から説明を行いました。これらの機会を通じて、さまざまな関係者から得られた意見等については、改定委員会の提言提出後に設置されたフォローアップ委員会において検討されることになっています。さらにその結果を踏まえて、新しい環境社会配慮ガイドラインが決定され、今年4月1日から施行されることになっています。

  4. 中国農業技術普及システム強化計画プロジェクト 協力期間終了
    1999年から5年間にわたり実施されてきた「中国農業技術普及システム強化計画プロジェクト」が2月末をもって終了しました。終了に先立って、2月10日、11日の2日間、本プロジェクトを通じて得られた成果を、現在中国農業部が進めている農業技術普及体制改革モデル地区(普及改革モデル省である12省の省、市及び県レベル)の実務責任者に広く紹介し、各モデル地区での改革の円滑な推進に資することを目的に、「プロジェクト成果普及全国セミナー」が実施されました。

    セミナーでは、本プロジェクトの中国側副リーダーである四川省農業庁李明氏から本プロジェクトの活動内容及び成果等について詳細なプレゼンテーションがあり、続いて参加12省のうち7省の参加者から各地の取組み状況について報告がなされました。2日目は四川省の改革モデル地区である楽至県へ移動し、広域農業技術普及センターの先進的な活動状況等の現場視察等を行いました。2日間のセミナーを通じて参加者間で活発な情報交換や議論が行なわれました。

    本プロジェクトでは、主に農民のニーズの把握とそれに基づく普及活動計画の策定・実施等の「活動のシステム化」、及び郷鎮レベルの普及センターの統廃合に代表される「普及センターの組織改革の推進」に取り組み、多くの成果を挙げてきました。今後は、農業部全国農業技術普及サービスセンターの指導のもと、貧困農民を多く抱える西部地域を中心に、本プロジェクトの成果が広く普及され、同地域の貧困軽減のための農村開発に貢献することが期待されます。JICAとしては、今年度から実施する国別研修「西部地区農業技術普及研修」を通じて、当該分野の人材育成に引き続き協力していくことにしています。

  5. 特定テーマ評価「環境分野(JICA環境保全センタープロジェクト型協力)」フィードバックセミナーが開催される
    2月24日(火)、日中友好環境保全センターにおいて、2002年度に国際開発学会に委託して実施された特定テーマ評価「環境分野」に係るフィードバックセミナーが開催されました。

    「特定テーマ評価」とは、JICAによる事業評価のひとつで、協力期間終了後一定期間を経過したプロジェクトを対象に、セクター別の横断的な切り口で評価するものです。特定テーマ評価「環境分野」においては、我が国が世界6カ国(インドネシア、エジプト、タイ、中国、チリ、メキシコ)において無償資金協力と技術協力を組み合わせて実施した「環境センター・プロジェクト」が、各国の社会的環境管理能力(その国自らが環境問題に対処する能力)の形成過程にどのような影響を与えたのかについて分析が行われました。

    今次のセミナーは、上記の特定テーマ評価の評価結果を、直接関係者にフィードバックすることを目的として開催されました。同セミナーには、評価実施の中心となった国際開発学会環境ODA評価研究会代表の名古屋大学井村秀文教授、副代表の広島大学松岡俊二教授に加え、中国の中央・地方政府機関(国家環境保護総局、科学技術部、貴陽市、瀋陽市ほか)、学界・NGO(人民大学、CANGO)、他ドナー(ドイツ、米国、JBIC)、大使館等から30人余りが参加し、活発な議論が行われました。日中友好環境保全センターの今後の役割については、中国の社会的環境能力は、すでに「システム形成期」、「本格稼動期」を経て、「自立期」に入っていると考えられるので、センターは今後、中国及びアジアを中心とする国の政府、企業及び市民が交流する開放的な場としても機能することが望ましい」などの意見がありました。

  6. 水利人材養成プロジェクト「全国水資源保護と生態修復研修」開催
    2月23日から27日まで、南京の河海大学にて水利人材養成プロジェクト「全国水資源保護と生態修復研修」が開催され、長江、黄河、淮河などの水利委員会、太湖流域管理局、各省水利庁の水資源保護担当者ら135名が参加しました。23日の開講式には、水利部の索麗生副部長、日本大使館千葉明参事官、JICA中国事務所櫻田幸久所長らが出席しました。

    中国では、現在の一人あたりの1年間の水資源量が世界平均の約1/4の約2,200m3しかありませんが、2030年には総人口が16億人まで増加するために、1,750m3まで減少すると予想されています。限られた水資源の水質悪化も深刻であり、現在、全国の年間排出量600億m3のうち約80%が未処理のまま排出され、河川延長の約40%が汚染されていると言われています。

    このような現状に対処するため、中国では2002年10月に「中華人民共和国水法」を改正し、効率的水利用、排水規制の強化を進め、環境に配慮した持続的な水資源利用のための管理体制の構築に努めてきています。この中で、水域を保護区、開発利用区などの「水功能区」に分類し、その分類に応じた水質基準、汚水排出総量規制を実施するなどの施策が実施されています。

    今回の研修会は、これらの政策実施に必要な知識を周知徹底することを目的として開催されました。索副部長からは、水資源・水生態保護の新局面をテーマとする講演が行われました。また、同プロジェクトの日本人短期専門家2名からは、それぞれ「日本の水資源環境保全制度」と「琵琶湖環境保全施策」をテーマとする講演が行われました。短期専門家の講演に対しては、出席者から、「中国では水環境保全に関する官庁が多岐にわたるために調整に時間と手間がかかるが、日本ではどうか」、「琵琶湖の水質保全対策の具体的な実施方法はどうか」などの質問があり、予定時間を超える質疑応答が行われました。

  7. 国別研修「技術協力促進」実施
    JICAルート対中経済協力の窓口となる科学技術部(技術協力)と商務部(無償資金協力)の実務担当者を対象とした国別特設研修「技術協力促進」の参加者一行17名が2月29日、最初の研修地である東京へ出発しました。

    この研修は、中国政府と地方政府における協力窓口機関の実務担当者にODAやJICA事業をより正確に理解してもらい、今後の案件形成や既存案件のスムーズな実施に結び付けることを目的に行われているもので、今回が8回目となります。

    訪日に先立つ2月27日にはJICA中国事務所でオリエンテーションが行われ、渡辺雅人専門家(技術協力調整アドバイザー)が対中ODAの現状や今後のJICA事業の方向性について講義しました。またJICA事務所員との意見交換会では、効果的な協力事業のあり方をめぐって活発な議論が行われました。

    一行は、JICA本部、外務省、JICA九州(JICA九州国際センター)における講義受講や意見交換、二本松青年海外協力隊訓練所などの視察、草の根技術協力事業の本邦実施機関との意見交換などを行い、3月28日に帰国する予定です。

  8. 国別研修 「西部地区国土開発研修」 「西部地区行政実務者研修」実施
    3月2日、中国西部開発を担う中堅幹部の能力向上を目的とした本邦研修2コース「西部地区国土開発研修」及び「西部地区行政実務者研修」が開講します。

    両コースは、北海道を視察に訪れた国家発展計画委員会(現国家発展改革委員会)から、北海道開発の知見を中国の西部大開発戦略(70年代末の改革・開放政策により、沿岸地域を優先的に発展させてきた方針を転換し、社会、経済発展の立ち遅れた西部地区へ開発の重点を移行させるという21世紀に向けた発展戦略)に活かしたいという要望が出されたことがきっかけとなり、国務院西部開発領導小組弁公室、科学技術部等の関係者と協議を重ねて形成され、北海道開発局、UNCRD(国連地域開発センター)の協力を得て実現したものです。

    西部地区の行政幹部、特に高級管理者の総合管理能力不足は、長期にわたり西部地区の経済・社会発展を大きく制約している要因であり、その能力向上は、西部大開発戦略推進のための主要課題となっています。国務院西部開発領導小組弁公室が策定した「西部地区人材開発10年計画」の中では、人的資源の分布に関する地域間格差の緩和、及び理論知識に精通し、かつ実践経験も豊富な素質が高い幹部の養成、という任務が明確に提起されています。両研修は、この課題の克服に貢献することが期待されています。

    2年目に当たる今年の研修は、国家発展改革委員会地区司政策処・劉暁明副処長(西部地区国土開発研修)、財政部経済建設司・任英助理巡視員(西部地区行政実務者研修)がそれぞれ団長を務め、15名ずつが参加します。

2. 調査団等の動き

主な調査団(派遣中・派遣予定) (3月)

  1. 西部中等都市発展戦略調査(開発調査・本格調査、1/6-3/29)
  2. 貴陽市大気汚染対策計画調査(開発調査・本格調査、2/1-3/1)
  3. 大連日中人材育成センター設立計画 (無償・基本設計調査(2)、2/26-4/3)
  4. 太湖水環境修復モデル計画プロジェクト 運営指導調査 (技プロ、2/28-3/6)
  5. 第4次結核抑制計画(無償・簡易機材、2/29-3/13)
  6. 黒竜江省酪農乳業発展計画プロジェクト 中間評価 (技プロ、3/8-3/20)
  7. 「ミン江洪水予報・警報機材整備計画」フォローアップ協力(修理班派遣) (3/8-3/17)
  8. 水利権制度整備(開発調査・専門家チーム、3/10 -23)
  9. 「職業訓練指導員養成センター機材整備計画」フォローアップ協力調査 (3/16-3/27)

3. 今月の行事等

  1. 2月22日-3月13日
    現地国内研修「環境情報ネットワーク技術研修」(後半)開催
  2. 3月1日
    国別研修「西部地区行政実務者研修」、「西部地区国土開発研修」現地オリエンテーション
  3. 3月1日-3月10日
    第三国研修「アジア地域環境能力向上」開催
  4. 3月15日
    リハビリテーション専門職養成プロジェクト 合同調整委員会
  5. 3月15日-3月20日
    世界銀行Scaling Up Poverty Reduction Field Visit
  6. 3月18日
    黒竜江省酪農乳業発展計画プロジェクト 合同調整委員会
  7. 3月19日
    予防接種事業強化プロジェクト 合同調整委員会
  8. 3月19日
    国別研修(コストシェアリング)「中小企業振興」現地オリエンテーション
  9. 3月24日
    草の根パートナー型・低所得農民層の失明実態究明と対策のための人材育成 (金沢医科大学)協力開始 記念式典
  10. 3月24日-31日
    科技部 張副司長、処長、阮主任訪日研修
  11. 3月24日-3月30日
    エッセイコンテスト受賞者研修旅行
  12. 3月28日
    西部中等都市発展戦略調査 セミナー

各協力現場で計画されている行事等(セミナー、ワークショップ、カウンターパート機関主催のセレモニー、その他)がありましたら、是非事務所担当まで情報をお寄せください。

4. 中国の動き

1)今「三農問題」が一番ホット?!

  • ア. 2月9日付人民日報トップで「中国共産党中央及び国務院による農民の収入増加促進に係る若干の政策に関する意見」が報じられました。この「意見」は「2003年12月31日付」で出されており、共産党中央が2004年に発表した「第1号文件」に当たります。この「第1号文件」は、その年における共産党中央が最重視する政策を発表するもの、と言われており、改革開放政策直後の1982年から86年にかけての間には、5年連続で、農村請負制導入等の農村改革に触れた文件が出されていました。今回は、86年以来、18年ぶりに農業・農村・農民(三農)問題が「第1号文件」となったわけで、それだけ現政権の「三農」問題を重視する姿勢、あるいは、「三農」問題解決の困難さを示すものと言えるでしょう。
  • イ. 「中国農民調査」という、今年1月に人民文学出版社から出版された本が話題になっています。所謂「報告文学」ですが、著者は安徽省の農村を実際に細かく歩いて回り、90年代に同省で発生した事件に関連した農民への聞き取りや、地元幹部、「三農」問題の研究者など、様々な立場の人たちの考え、意見を取り纏め、「三農」問題を本当に解決するためには何をするべきか、についての解答を見出そうとしています。村レベルの幹部の劣悪さが招いた事件の詳細や、温家宝首相や朱鎔基前首相が安徽省を視察した際のエピソード、過去の農民負担削減政策の実態等が紹介されています。
  • ウ. 雑誌「財経」最新号で、「貧富中国」との標題で、中国社会科学院による所得分配実態調査の結果が紹介されています。「都市と農村の実質格差は、中国が世界最高」「90年代半ばに格差が一時縮まったが、97年ごろから再び拡大」「都市と農村の格差は、西部地区の方が大きい」など、具体的な統計に基づく分析が紹介されています。

2)2003年国民経済と社会発展統計公報が発表される

2月26日に、2003年国民経済と社会発展統計公報が国家統計局から発表されました。同公報は、国家統計局が毎年全国人民代表大会に先立って公表する、中国マクロ経済のほとんどの分野を網羅したデータで、速報値であるものの、中国の公式見解として注目を集めています。

同公報によれば、中国の2003年の国内総生産は116,694億元で、対前年度比9.1%増、消費者物価指数は1.2%上昇(都市部0.9%、農村部1.6%)、就業人数は、前年度比859万人増、年末の都市部登録失業率は4.3%で、対前年度比0.3%増となっています。また、貿易収支は、255億米ドルで、昨年比49億米ドル減となっています。

3)商務部長に薄熙来氏就任

前遼寧省長の薄熙来氏が、第41期全国人民代表大会常務委員会第7次会議での承認を受け、商務部長に就任しました。同氏は、中国共産党長老薄一波氏の実子で、これまで主に省・市(大連市)政府の要職を歴任、2001年2月から遼寧省長を務めました。

(2月29日付け人民網日本語版を元に記述)