日本の支援で建設された学校〜一番行きたい国は「日本」

プロジェクト名:湖南省環境整備・生活改善事業
2002年度承諾 プロジェクト総額:10,543百万円、うち円借款利用限度額:7,882百万円

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ODAにて建設された中学校校舎

2008年は中国で改革開放政策が導入されてから30年の節目にあたる年である。
中国の経済・所得格差の問題が叫ばれて久しいが、日本の約26倍の面積を有する中国では、沿海部と内陸部、都市部と農村部の間の経済・所得格差が依然として存在しており、大きな社会問題となっている。

湖南省武陵山地区・・・中国の最貧困地区と呼ばれるこの地域の一人あたりの年収は約1,360元(約2.1万円、2000年時点)。この地域に住む人々の環境や生活を改善するために、日本のODAが活躍している。

プロジェクト実施の背景

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校舎に設置されているプレート
58の村、約5万人に役立っているとの記載あり

「武陵山地区」は湖南省の西北地域に位置する山岳地帯の呼称である。同地区は人口の約7割が少数民族であること、また、中国で最も貧しい地域であるという特徴がある。
プロジェクトが計画された2002年、同地区は、総面積の約7割以上が山地で耕地の確保が難しく生産性も低い状況にあったこと、加えて、道路・上水道等のインフラ整備も遅れ、悪循環に陥っていた。また、中学校の中途退学率が全国平均では3%であるのに対し、同地区ではその10倍の30%と突出して高い状況にあった。
このような状況を改善するため、中国政府は2003年より日本のODAを活用し、小中学校の校舎の建設、病院・保健所・上水道施設の建設等を目的としたプロジェクトを実施している。このプロジェクトで用いられている資金は「円借款」であり、長期・低利の優遇された条件ではあるが使用した資金は将来にわたり利子をつけた形で全額日本に返済される。中国向けODAと言えば、全額無償で供与するというように思われがちであるが、実はその90%以上はこのプロジェクトのように、利子をつけて元本を全額返済する必要がある「有償資金協力(円借款)」で実施されている。

忘れられない一日

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日本人との交流会の様子

プロジェクトの対象地区の一つである「永定区教字亜」地域では、中学校・小学校の教室、宿舎、食堂等の建設に円借款資金が活用されており、真新しい校舎には「円借款プロジェクト」との記念プレートが掲げられている。そのプレートには、「58の村・約5万人がプロジェクトの恩恵を受けている」との記載も見られる。
これまでは宿舎の規模が小さかったことから、遠方の生徒は学校で勉強する機会すらなかったが、宿舎が建設されたことにより多くの生徒が勉強することができるようになった。今では、中学生約900名、小学生約1,000名がこの学校で学んでいるそうだ。
2007年2月、そんなプロジェクトの実施状況を確認するため、日本の市民がこの学校を視察に訪れた。
以下はその視察の際に居合わせた中国人の生徒の感想文である。

わたしは目を凝らして彼らを見て驚きました。なんと、日本人の姿はわたしたちとほとんど同じでした。しかも、女性は着物を着ていませんでした。あるおじさんが、「ニーハオ」と言いながら握手を求めてきました。わたしは緊張で顔が真っ赤になりましたが、右手を伸ばして握手しました。そのあと、交流会が始まりました。その中で、日本人のおじさんが、「一番行きたい外国はどこですか」と質問してきました。わたしは、「日本に行ってみたい」と答えました。何故なら、日本がわたしの学校や宿舎や食堂を建ててくれたこと、そして、日本のおじさんおばさんはとても優しいと知ったからです。しばらくして、みんなで記念撮影した写真が届きました。この写真はわたしの宝物です。
この素晴らしい学校で一生懸命勉強したいと思います。

中国人を含め、外部の人が殆ど足を踏み入れることがない貧困地域『武陵山地区』。
日本とは余り接点のないこの貧困地域では、日本の支援により学校に通うことができる生徒が増えている。この学校から日本と中国の友好関係を担う人材という種が、徐々にではあるが芽吹き始めていることを感じる。

(注)中国向け円借款事業は、2007年12月を以って新規承諾は終了となりました。

国際協力機構中国事務所 駐在員 竹内和夫