大連市内の2つの新旧浄水場:語り継がれる日中協力

プロジェクト名:大連上水道整備事業
1997年度承諾 プロジェクト総額:15,238百万円、うち円借款利用限度額:5,500百万円

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円借款で調達されたポンプ設備

近年、日本と中国は経済・人的交流の面においてその結びつきを一層深めており、多くの日系企業が中国で事業を展開している。日本から地理的に近い遼寧省大連市だけでも3,000社以上の日系企業が登録されており、多くの日本人が大連に居住している。
日本との関係が深い港湾都市「大連」。
この街に住む人々に安全で安定的な水を供給するため、日本のODAが活躍している。

プロジェクト実施の背景

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ODAにより建設された浄水場を視察する大連日本人学校の生徒

プロジェクトが計画された1997年・・・
大連市では1879年に上水事業が開始されて以来既に100年以上が経過し、施設の老朽化が進んでいた。上水管内の腐食による漏水・水質悪化が顕在化しており、上水道システムの改善が急務となっていた。
このような状況を改善するため、中国政府は日本のODAの一つである「有償資金協力(円借款)」を活用して、大連市内に新たな浄水場(浄水能力:20万立方メートル/日)等を建設することとした。プロジェクトは2001年末に完成し、大連市内中心部の住民約100万人に対し、安全な水を安定的に供給することが可能となった。

次世代の子供たちに語り継ぐ日中協力

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旧浄水場建屋:右から左に日本語で「急速濾過室」との表記有

日本の支援により建設された大連沙河口浄水場。
2008年10月、大連日本人学校の初めての取組みである「ODA理解学習」の一環として、この大連浄水場の視察が実施された。当日は、浄水場の工場長や副工場長が一行にアテンドし、浄水場の仕組みや、ODAで購入した日本の機械設備等の説明を行ってくれた。

視察からの帰り際、浄水場の関係者に挨拶をしようとしたところ、関係者の一人が浄水場の敷地内の隅にある古い建物を指差して言った。
「あの建物は、1917年に日本が建設に参画して建てた『旧浄水場』の一部なんだ。老朽化して今は使われていないが、中の設備もそのままの形で保管している。中国の小中学生も、日本の小中学生のように、水の大切さや環境保全について学ぶことができるよう、あの建物を『環境教育施設(水博物館)』として活用することを考えているんだ。ただの偶然かもしれないが、昔の浄水場と今の浄水場、2つとも日本の協力があって建設されたものだ。日本の協力が伝わるように、あの建物の看板は当時のままにしておくつもりだ。」
100年近く前に建てられた旧浄水場の建物。その建物の看板には日本語で「急速濾過室」と書かれていた。

数年後には、きっと多くの子供たちが課外授業でこの浄水場を訪れていることだろう。そして、この場所から、日中両国の未来を担う若者が巣立っていくことだろう。

中国では円借款の新規承諾は終了したが、これまで行われた数々の日中協力の軌跡は消えることはない。
日中両国間にはすぐには解決できない様々な不一致があると感じるが、ODAプロジェクトに宿る一つ一つの物語に光をあて、そのエピソードを多くの人々に伝えることにより、私達、そして次の世代の両国民が手を携えて協力し、理解しあえる日が来ることを信じたい。

国際協力機構(JICA)中国事務所 竹内和夫