構造技術者がつなぐ被災地 −日本の災害復興から耐震設計を学ぶ−

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陸前高田市役所前で崩れた建物を視察する研修員。元の構造物の形を想像できない

「今回の日本の地震に非常に心を痛めています。私たちは少しでも日本の力になりたいと思っています」JICAが実施する「耐震建築人材育成プロジェクト」の中国側実施機関、中国標準設計研究院の郁副院長は標準院で集められた義援金を手にJICA中国事務所を訪れた。3月11日の地震発生後、プロジェクトに派遣されている日本人専門家の元には、ひっきりなしに家族の安否を心配する声やお見舞いの言葉が届けられている。

阪神・淡路から四川へ

「耐震建築人材育成プロジェクト」は、2008年5月12日に発生した四川大震災の復興支援として2009年5月に開始された。このプロジェクトには、四川大地震と同様に家屋の倒壊による死者が多かった阪神・淡路大震災の経験が生かされている。

プロジェクトでは、耐震設計コースのほか、建築行政、地震防災計画、歴史建築物の保全などの研修コースを実施しており、これまでに約170人の構造技術者と、関連省庁の行政官が来日し、耐震技術に対する理解を深めている。今回3回目を迎える「耐震設計、診断、補強コース」が計画され、実施に向けた調整が始まったのはちょうど震災から1ヶ月が過ぎた頃だった。

四川から東北へ

「研修員として選ばれたものの、複雑な気持ちでした」次々に流れるニュースや特別番組、余震や放射能の影響、そして家族からの心配の声。ノミネートされた20名中6名が辞退するなか、14名が「せっかくの機会を得たのだから」と、来日を決意。この研修員の意気込みを受け、コースリーダーを務める建築研究所の斉藤大樹上席研究員は、東日本大震災被災地の現場視察を研修に組み込んだ。現場で建築物の被害状況を実際見ることは、構造技術者として防災にどう貢献できるのかを考えるきっかけになる、と考えたからだ。

構造技術者としての学び

研修を通じて研修員が得たもの、それは構造技術者として心身ともに成長するきっかけだった。「どんな災害にも負けない建物を設計するのは難しいかもしれないが、それでもよりよい方法で建物を作るという、大きな課題が自分たちにつきつけられた」「どのような構造物をどこに作るか。自然災害に対応できる住宅建築の在り方は、技術者が考えるべき課題だと改めて認識した」といったコメントが研修員から寄せられた。

さらに研修員の朱南波さんは、「被災から間もない現場を視察するという貴重な体験をさせていただいた」と述べたうえで、四川大震災の復興経験から復興に国が果たす役割の重要性や、住民の生活、これまでの暮らしに配慮した復興の重要性を指摘した。

実際に被災地を訪れ、その現場を見た彼らは、構造技術者としての責任と役割の重さを感じたに違いない。

国際協力を復興の力に

今回東北地方での研修受入を担当いただいた三陸鉄道の成ヶ澤亨マネージャーからは、被災地として悲しむだけではなく、復興に向けてこのような機会を積極的に活用していきたいとの考えが示された。世界各地で災害に苦しむ国や地域が多く存在する中、国際協力が復興に貢献できる、そんな1つの役割が示されたように思われる。

(作者:JICA経済基盤開発部 小島 海)