「地域有識者懇談会」(第8回会合)開催概要

1.日時

2015年9月2日(火)15:30〜18:00

2.場所

JICA中部セミナールームA

3.出席者

  • 委員:伊藤範久委員、空木マイカ委員、西井和裕委員、原田さとみ委員、山田雅雄委員、渡辺芳人委員
  • JICA中部関係者:熊谷晃子所長、竹内康人次長兼市民参加協力課長、森本康裕総務課長、岩瀬誠研修業務課長、小原基文専任参事、八重樫成寛専任参事、伊藤英樹職員、木村真樹子職員、竹之越佳子職員、立場正夫市民参加・民間連携協力アドバイザー

4.議事概要

次の(1)から(5)のテーマに関する最近の動向、取り組みの状況につき報告され、引き続き意見交換が行われた。主な報告、意見は以下のとおり。

(1)フェアトレード・市民参加

  • 名古屋市がフェアトレードタウンとなるための認定式と、名古屋市長と市民団体FTNN(代表・原田さとみ)との「フェアトレードタウンなごや宣言」の調印式を9月19日の「環境デーなごや」にて予定。日本では、フェアトレードタウンとなるための世界共通の5つの基準に加えて6つめの基準「地場の生産者や店舗、産業の活性化を含め、地域の社会と活力と絆が強まるよう、地産地消やまちづくり等のコミュニティ活動と連携する」という基準があるのですが、名古屋は特にこの基準をよく満たしていた。
  • ネパール震災では緊急援助フェーズは終わり、復興支援フェーズへの移行段階であるが、今年3月に仙台で開催された「国連防災世界会議」で日本が示した「Build Back Better」の概念はネパールの復興支援において重要。
  • 東北大震災では防災教育により多くの命を救ったが、ネパールでは防災の本質を教えることができなかったため命を救えなかった事例もあったと聞く。現地の状況にあった防災教育を進めることが大切。

(2)NGOとJICAの連携

  • 草の根技術協力10年の振り返りや行政レビューの結果、より多くのNGOが参加できるように、また中小規模のNGOが参加しやすくなるように制度の見直しが進められている。名古屋NGOセンターやJICAとしても、小規模NGO向けのスキーム活用のための研修会や新制度活用方法について意見交換会等を行っている。

(3)民間連携

  • 中部経済連合会は、バランスの取れた産業の発展や地方創生のため中小企業支援が必要と認識し、「Linkers」や「中部コーディネータ研究フォーラム」を通し支援を行っている。「Linkers」は中小企業をよく知るコーディネータが秘密保持契約のうえ、大企業が求める技術を提供できる中小企業やベンチャー企業を探し、マッチングを行おうとするもの。東日本大震災を受け、東北から始まったが、中部経済連合会に続き、関経連、九経連などネットワークがひろがり、2014年度には6件取引成立に至った。また、企業に寄り添い経営戦略等を一緒に考える「成長支援型コーディネータ」の連携を強化するため、各地域でハブ的な立場で活躍するコーディネータが支援事例を共有し学びあう「中部コーディネータ研究フォーラム」を開催している。これにより各地域のハブ機能が拡充し、成長支援の輪が広がることが期待される。
  • 「水のいのちとものづくり中部フォーラム」では、中部にしかできないビジネス・パッケージの提案・実現と国際社会への貢献を目的に2つの作業ワークショップを進めている。一つは、23の企業・団体が参加する「ビジネス・パッケージ検討ワークショップ」で、JICAの民間連携プログラムを使いスリランカで進められている2つの事業を参考に、企業、大学、自治体が参加する具体的な海外ビジネス、PFI/PPP等のパッケージをつくり、実現可能性の評価、実施方法の検討、参加しうる企業の探索、実証実験等を進めている。またシンガポール国際水週間2016に出展し、パッケージ売り込みを図る予定。もう一つは、8つの企業・団体が参加する「技術開発・人材育成検討ワークショップ」で、プロジェクトに必要な技術開発と人材育成のため、新たな技術の発掘、技術移転や高度人材育成、大学等専門研究機関との共同研究体制の構築支援を進めている。

(4)大学連携

  • 名古屋大学サテライトキャンパス構想が動き出した。アセアンを中心として政府幹部レベルが論文博士をとってもらうプログラム。スカイプを使った週1回の授業、レポート指導、研究課題の設定、短期集中スクーリング、論文指導などにより、現地での職務を長期に離れることが困難な幹部にも博士を取得できるようにしたところがポイント。研究と教育が本分である大学にとって、国際貢献は、これら(教育・研究)にフィードバックができるものでないといけない。この構想でも大学側にもメリットがないと継続は難しい。例えば、法律分野であれば、現地の法律の研究の一助になったり、医学分野であれば感染症のフィールドとなるなどが、大学側のメリットとなっている。

(5)研修事業

  • JICAは長年にわたり研修事業を行ってきているが、日本以外にも他の先進国や援助機関に加え新興国も同様の事業を行っている。JICAの研修が国際的競争力や魅力があるものとなっているのかという問題意識がある。例えば、JICA中部が研修員と民間企業関係者との交流の場を設定する背景には、研修事業のポテンシャルを使い、双方にとって一層役立つものにしたいという考えがある。JICA中部が位置する東海地方の特色を活かして魅力を加えてゆきたい。
  • 研修事業を見直すのであれば、先鋭化とともに大衆化の視点が大切。日本の技術力のポイントは5Sとチームワークである。研修で教えたことが途上国の現場で本当に使われるためには、実際に装置を運転する人、工事する人に技術を伝えられるかどうかがポイントとなるのではないか。

以上