ウガンダ…バングラデシュ…まだまだ続く国際協力

【画像】石坂貴美

愛知県豊田市出身、 財)アジア保健研修所 職員   元青年海外協力隊(バングラデシュ・染色)
石坂貴美

【私と国際協力】

 私が国際協力に興味を持ったのは、1996年に英国のNGOの青年育成事業に参加してウガンダ共和国に半年ほど滞在したことがきっかけでした。
ウガンダは最貧国のひとつだと聞いていましたが、現地の人々の歓迎やもてなしや自然の恵みに触れて、経済的に貧しくても豊かな生活であると感動しました。
しかし滞在中に、盗難にあって警察に行き書類をもらうのに賄賂を要求されたり、怪我をした瀕死の友人を病院に連れて行った時に診察を受ける前に高額のお金を職員から要求されたり、学校では授業料が未払いの生徒を先生が棒で叩き続けているのを目の当たりにして、ようやく「貧困」とは社会の構造的な問題であると気がつくようになりました。
それまでは「1日1ドル以下の生活」といえば、「一日におにぎりがひとつしか食べられない」というくらいの想像しかしていませんでした。
しかし、当時の私には成すすべもなく、途方にくれてしまいました。しかも、生活の知恵ははるかに現地の人々のほうが豊かに持っていて、私はいつも現地の人々にお世話になっている状態でした。
そのようなことがきっかけで、いつか途上国で現地の人たちと一緒になって活動をしたいという夢を持つようになり、帰国後、役立つ技術を身につけることを目的に、沖縄で数年間かけて染織技術を習得しました。

【バングラデシュでの活動】

 その後2001年から2年間、青年海外協力隊員としてバングラデシュの青年開発局で染色を指導することになりました。
生徒のほとんどが女性で、日本の絞りと草木染を教えました。特に力を入れたのが、卒業後に身に付けた技術を活かして仕事をしている青年・婦人たちへの技術指導です。手工芸隊員の協力を得て、自営業者となった卒業生を対象として上級者コースを開催し、さまざまな技術を提供しました。さらに、全国の卒業生や染色インストラクターにも絞りの指導をおこないました。

 バングラデシュの女性は、宗教や慣習により行動を制限され、社会的に弱い立場にあります。そんな中、「私は何もできない」と泣いてばかりいた女性が、染色技術を身に付け収入を得て、技術を地元の女性に広げて事業を起こし、見違えるように生き生きと活動するようになりました。
技術協力は、収入を創出するということだけでなく、ものをつくる楽しさを味わい、女性たちが自信ややりがいを持って生活するために大きな役割を果たしていました。
女性たちの大きな変化は人間のもつ可能性を見せてくれました。同時にそれは、技術協力に対して「教えてあげている」という私の意識や態度を「染色指導の活動を通じてさまざまな困難な中で生きている生徒たちの人生の一部に関わることができた」というものに変え、私に充実感をもたらしました。

【またまだ続く国際協力】

 2003年に帰国してから4年ぶりにバングラデシュの女性たちを訪ねてみました。
女性たちはカウンターパートとともに、生産者組合を立ち上げ、活発に活動を続けていました。
私が組合発足のお祝いとして渡した日本円にして約2,000円ほどのわずかなお金を活動資金として、景品を購入してくじ引きを開催し、楽しみながら資金を増やし、組合の中で小額のローンを始めていました。
月に一度開催されるミーティングは女性たちの貴重な情報の交換の場になっています。
そのほかにも組合では、貯金活動やさまざまな研修をおこない女性たちの活動を支えています。
外部からの資金に頼ることなく、自分たちの身の丈に合わせた資金力と知恵を出し合って、活動を続けている女性たちの賢さに感心しました。
あの泣き虫だった女性も事業を広げ、国際物産展に地区代表として抜擢されて出店して作品を披露するなど活躍をしていました。
さらに、彼女は家庭の中でも以前は怖くてなにも言えなかった夫に対して、自分の意見を伝えることができるようになり、家族のことは夫婦で相談して決めるという対等な関係を築き上げていました。
しかし、一方でこのような女性たちの活発な活動は、本人や家族の健康状態に大きく左右されることがあります。
バングラデシュの社会の中では、事故や病気に対する社会保障制度がありません。組合の活動を通じて、緊急時に対応する女性たちの相互扶助の仕組みを作り上げていくことがこれからの課題ではないかと考え、私は彼女たちに提案し、一緒に考えながら支援を続けることにしました。
また、国際協力での経験を地元に還元することも私の課題です。帰国後は、染織技術を活かし、地域で子どもたちとものづくりに取り組む活動にボランティアとして参加し、綿や蚕を育て、糸紡ぎに夢中になっています。
そして、学校などで国際協力の話をする機会を積極的に引き受けています。
国際協力にかかわりながらウガンダの人々から、バングラデシュの女性たちから、地元では子どもたちと一緒に多くのことを学んできました。職場では、NGOで働いているアジアの人々と接する機会に恵まれています。
このように、私にとって国際協力は、人から「学ぶ」という行為でもあります。
そして、これからもいろんな場所、さまざまな形で国際協力を続けていきたいと思っています。

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絞り授業風景

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作品を着る子どもたち

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卒業後、地元の女性に指導する生徒