【7月号】「本邦研修という形の国際協力」

【写真】山崎 嘉久(やまざき よしひさ)さん 石川県江沼郡山中町(現在の加賀市)出身 愛知県一宮市在住あいち小児保健医療総合センター 副センター長
山崎 嘉久(やまざき よしひさ)さん 石川県江沼郡山中町(現在の加賀市)出身 愛知県一宮市在住

■写真:山崎 嘉久さん(前列中央)
エジプト学校保健プロジェクトで出会った人々と
(ファユーム県タメイヤ村、2009年)

今回はあいち小児保健医療総合センターの山崎副センター長にお話を伺います。
(聞き手:JICA中部 市民参加協力課)

はじめに、自己紹介および国際協力に関心を持ったきっかけなどについてお聞かせください。

公園で開催されていた子どもや一般市民向けの健康教育
(ボリビア国サンタクルス市、2002年)

小児科医として若い頃から国際協力には関心があり、名古屋から東京に出かけて勉強会(※)などに参加していましたが、病院を空けて海外に出ることは簡単ではありません。現在勤務するあいち小児保健医療総合センターは2001年に設立された比較的新しい小児病院ですが、その初代センター長・長嶋正實先生がコースリーダーをされていた本邦研修(「母子保健」コース)で、講義を担当させて頂いたのを皮切りに、同じ頃にJICAの短期専門家としてボリビアに2週間ほど派遣されたのが最初の海外経験です。

※この勉強会は、現在では国際小児保健研究会に発展し、若手の小児科医などにとっての国際協力のエントリーポイントになっています。

コースリーダーをされている本邦研修「学校保健」コースについて教えてください。

2016年度「学校保健」コース・インセプションレポート報告会
(JICA中部、2016年)

JICAの事業では青年海外協力隊など海外での活動がよく知られていますが、開発途上国の行政官等を日本に受け入れて国内で技術指導などを行う研修事業(いわゆる「本邦研修」)も数多く行われているんですね。あいち小児保健医療総合センターが研修受託機関となっている「学校保健」コースでは、2006年から2016年の間に、アフリカやアジア、中南米、大洋州など32か国から153名の研修員を受け入れました。毎年10か国ほどの研修員が2か月ほど滞在します。研修員同士の情報交換も活発で、研修員は日本の経験だけでなく、他の参加国の成果も踏まえたアクションプラン(帰国後の実践計画)を作成します。
研修の前半に実施している、それぞれ自国の現状について発表するインセプションレポート報告会には、東海地域の医療・教育関係の方々や、学生・留学生の皆さんにも参加を頂いています。開発途上国の状況を知っていただく貴重な機会となっているようで、中には報告会に参加したことが国際協力への第一歩となった人もいます。

コースリーダーとして研修に関わられてきたご経験談をお聞かせください。

児童・生徒の「そうじ」の日課は、研修員にとっては大きな驚き
(弥富市立大藤小学校、2015年)

研修員は、日本の養護教諭と保健室に強い関心を示します。日本では、保健室や保健の先生(養護教諭)の存在はごく当たり前のことです。しかし、世界の学校保健制度の中で、すべての学校に保健活動を担う職員がいて、その拠点があることは、日本の大きな特徴です。それを踏まえて、研修での共通語として保健の先生のことを英語でも「Yogo teacher」と呼んでいます。「Yogo teacher」は、英字新聞「The Japan Times」にも紹介されました。
学校現場での活動を見た研修員は必ず、「学校がきれい、ゴミがない」「時間がきちんと守られている」と言います。私たちが学校生活で自然に身につけてきたことに、とても価値があるのだと感じます。また、「講義で学んだ内容がどの学校でも実践されている」との感想からは、国の制度が現場の隅々にまで行き届いていることの大切さが改めて実感できます。私自身もたくさんの日本の学校保健の活動現場の方々と出会うことができ、とても良い経験となりました。

山崎さんがモットーとされている国際協力に対する考えや姿勢などがあれば教えてください。

JICAを通じた国際協力は国と国との協力関係ですので、国際機関のイニシアティブや概念を学ぶことは重要です。ただ、国や地域が違っていても、実際に協力し合っているのは現場の人と人だと思います。私の経験は国内活動中心のとても限られたものですが、そこで出会ったさまざまな国や地域の人々とのご縁を、今後も大切にしていきたいと考えています。