【12月号】「この美しいひとつづきの地球と人々の営みから学ぶ」

【写真】北川 啓介さん 愛知県名古屋市出身、愛知県名古屋市在住国立大学法人名古屋工業大学大学院工学研究科 准教授
北川 啓介さん 愛知県名古屋市出身、愛知県名古屋市在住

■写真 北川 啓介さん

今回は国立大学法人名古屋工業大学大学院准教授の北川啓介さんにお話を伺います。
(聞き手:JICA中部 市民参加協力課)

はじめに、自己紹介および現在研究なさっている分野等について教えてください。

もともとは実家が和菓子屋を営んでいることから幼少期からずっと和菓子職人になろうと思っていましたが、今は建築設計やまちづくりを中心に、大学を拠点として教育と研究に従事しています。
高校生の時に、和菓子職人になる前に何かもうひとつの近い技術や感性を修得しておこうと思いたったことから今にいたっています。当時は大学に男性が学べる食の専攻が少ないこともあり、食以外の専攻をあたっている中で、和菓子の分野と建築の分野に共通点が多いかなと思い、大学で建築を専攻しました。和菓子と建築、どちらの分野も、人々の日々の生活や文化に深く関係している点、これまでの長い伝統や歴史を現代にも活かそうとしている点、その地域の自然素材からひとつひとつ丁寧にかたちにしていく点、また、お客さんに喜んでいただける点など、人々の営みに深い関係があります。今でも学内外や国内外でいろいろな人々とお会いしてプロジェクト等でご一緒するたびに、いろいろと教えていただくことが多く、常にその国やその地域ならではの新しい発見があり、建築の道に進んでとてもよかったと実感しています。
ちょうど今、私の研究室と東海地方の企業や工務店と一緒に、蒸し菓子のような素材を使った住宅の研究開発も進めています。御菓子のような可笑しい建築ですが、近いうちに実際に住まうことのできるようにして、海外へも普及させていけるよう、みんなでアイディアを出しあっています。後世に残していけるひとつのライフワークにできたらと思っています。

国際協力に関心をもったきっかけ、またこれまでのご経験についてお聞かせください。

博士後期課程の大学院生の時に、ふっと、国内の建築だけでなく国外の建築の技術や感性も修得しておこうと思いたち、ニューヨークの建築設計事務所でしばらく武者修行にまいりました。世界でもまだ実現した現代建築はほとんどなかった曲線や曲面を多用した建築物を設計していく現場に、和菓子職人みたいと心躍り、まさに寝る間も惜しんで修行に励みました。そして、夜な夜な、世界中から集まった若き建築家と世界中の国や地域の文化や生活について語りあった中で、現代化が進んでどれだけ移動時間や通信時間が短くなっても、地球上の人々の営みは非常に多種多様であり、世界は想像を超えて広いんだと体感しました。その数年後、国際的なプロジェクトにも関わりやすく、まだ知らぬ世界を知ることができるであろう大学の教職に就いた頃に、ちょうど愛知万博が開催されました。世界中から愛知万博に来訪されたとても多くの国や地域の方々と交流できたことで、国連やEU欧州連合や大使館などによる国際的なプロジェクトに主体的に関わる機会が一気に増えました。

モットーとされている国際協力に対する考えや姿勢などがあれば教えてください。

2014年10月におきたフィリピンのボホール大地震での建物の被災状況

2014年から国際協力機構(JICA)の草の根支援事業で一ヶ月半毎に名古屋からフィリピンのボホール島へ渡航しておりますが、それに限らず、国際協力の現場へ向かう道中は、常に私の通学路となっています。

フィリピンのトゥビゴン市でのワークショップ

毎回、現地の行政や大学や市民へレクチャーやワークショップを開催していく中で、私たちの経験を教えたり伝えたりすることよりも、現地の方々から教わることが想像以上に多く、現地の人々と共にアイディアを出し合って、次に向けて共に動いていくことばかりです。トップダウンの社会が優先されるのではなく、構成員である現地のひとりひとりの人の思いが集まって、そして、現地の人々こそが主人公となる社会をつくりあげていくことが理想です。

フィリピンでの防災能力向上事業に関するボホール州・トゥビゴン市・ボホール州立大学・JICAフィリピン事務所・名古屋工業大学との調印式

常にどこかで人々が生活を営んでいるこの丸い地球は、世の中の自然の中でも最も美しい形象のひとつです。そして、この地球上のその国やその地域での人々の営みは、その多くは極めて美しい事象に溢れています。せっかくこの恵まれた地球に生を受けたのですから、少しでも長くこの美しさを後世に残していければと願いつつ、国や地域に関わらず、できる国際協力をひとつずつ継続していきたいです。