愛知県青年海外協力隊を支援する会会長
坂本 瑞夫 さん
■写真:坂本瑞夫さん
(開発教育全国集会の開会の宣言をする筆者)
今回は愛知県青年海外協力隊を支援する会会長、坂本瑞夫さんにお話を伺います。
私が協力隊事業に関心を持つようになったのは、娘が音楽隊員として、キルギスに派遣された2003年以降である。2004年に会社をリタイアしてすぐボランティアとして思い浮かんだのが、娘がお世話になった青年海外協力隊事業の支援。早速、愛知県青年海外協力隊を支援する会(以後支援する会)に入会した。
支援する会に入ってみると、協力隊員の帰国後は、残念ながら、私が想像していたほど恵まれていないことが分かった。私は隊員が帰国すると、企業から引く手あまたで、就職先を選択するのに困るという贅沢な悩みをもっているのではないか、と勝手に考えていた。
さにあらず、隊員は帰国後の就職が最も大きな悩みということが分かった。それは隊員を送り出した家族にとっても心配の種だった。
2007年に(一社)協力隊を育てる会(以後育てる会)の設立30周年事業として企画されたカンボジア・スタディーツアーに全国の30人近い仲間と参加した。隊員の現場に赴き、途上国の発展に真摯に貢献する日本の若者のすがたをみて、胸を打たれた。まさに育てる会が標榜する「協力隊は日本の宝」だと感じた。
育てる会や、JOCAの幹部、JICAのカウンセラー、隊員のOB、全国の協力隊を育てる会の役員や理事が多く参加しており、夕食後に毎日催した飲みながらの反省会は、それぞれの立場から、意見を述べ議論を戦わせた。この反省会で、40年が経過した協力隊事業の問題点が見えてきたように感じた。
当時、私は愛知県の支援する会事務局長として、2年後に愛知県で開催する開発教育全国集会を控えていた。カンボジアで経験した感激と問題点を一般市民に知ってもらおう。
多文化共生のワークショップ風景
ワークショップの成果発表をするリーダー
2009年、新装なったJICA中部で開催する開発教育全国集会のテーマは、愛知県の青年海外協力隊員1500人突破を記念して、青年海外協力隊・帰国隊員から学ぼう「これからの途上国とのお付き合い」と、きまった。隊員OB・OGが途上国でやってきたことを市民に知ってもらおう。そしてそのことを通じて、途上国の現状とこれからの日本の役割を考えていこう。4つのワークショップを立ち上げ実施することに決まった。
1、「顔の見えない?多文化共生」
2、「先進国−途上国間の不公平はここにも!気候変動問題の実態」
3、「インターネットでつながる絵と国際交流」
4、「お買い物でつながる途上国と日本の笑顔」
これらのテーマに帰国隊員たちは、ワークショップのリーダーとなって、社会還元という使命を達成すべく頑張った。
支援する会では開発教育全国集会の報告書として協力隊事業の課題と提言をまとめたが、実現は道半ばである。青年海外協力隊事業も、初期の隊員の情熱が通用した時代から、専門技術が要求され、一方的な支援から日本と途上国の双方向の連携に変わりつつある。半世紀にわたり途上国との信頼関係を築いてきた隊員たちの功績は、どのようなかたちで、一般市民に伝わるのであろうか?「日本の宝」を持ち腐れにしてはならない。