JICA・元長期研修員(ABEイニシアティブ)
Tatek Yenehun Lemlemさん
私の名前はタテク イエネフン レムレム(Tatek Yenehun Lemlem)です。エチオピアの出身です。エチオピアは、エリトリア、ジブチ、ソマリア、スーダン、南スーダンそしてケニアと国境を接しており、いわゆる「アフリカの角」と呼ばれる東アフリカ地域に位置しています。「人類発祥の地」とも言われており、岩窟教会群や石碑群などの歴史的建造物や古代文明の史跡が多いことでも知られています。
2015年10月に名古屋大学大学院工学研究科に入学し、2017年9月に修士号を取得しました。現在は、エチオピアのバハルダール大学に勤務しています。
私よりも前に日本に留学していた友達が2名いるのですが、彼らが日本での生活や、文化、人々の様子などについて教えてくれたことで、日本に関心を持つようになりました。それから日本の大学の教育水準や研究レベル、建設現場における技術、他にも日本に関するあらゆることを調べたのです。どれも非常に興味深く、日本に留学したいという思いを一層強くしました。そんな中、JICAの事業であるABEイニシアティブプログラムを知り、見事チャンスを得ることができました。高い教育と研究レベルに身を置くことができると考えたので、名古屋大学大学院工学研究科を希望しました。
修士論文発表日、留学生仲間と
私の研究分野は、鉄筋コンクリート構造物の損傷や劣化の評価に関することなので、土木工学を専攻しました。そこでは多くの優秀な教授陣による講義を受講しました。講義の他に、橋梁や高速道路の建設現場を見学する機会もあり、実際の建設現場を直に体験することができました。
また、名古屋大学には「国際環境人材プログラム(NUGELP)」と呼ばれる、世界が抱える環境問題を把握・分析し、課題解決方法を提案できる人材育成を目的としたプログラムがあります。私はそのプログラムにも参加し、スタディーツアーにおいて環境問題や環境保全に関する様々な知識を得ることができました。
その他に、在学中2回のインターンシップを経験しました。一つはABEイニシアティブのプログラムを利用したインターンシップ、もう一つは名古屋大学のカリキュラムとしてのインターンシップです。インターンシップでの実務経験は本当に素晴らしく、充実したものでした。そこでは、所属先の皆さんと意見交換をし、日本企業の文化を深く理解することができました。
このように、私は非常に実りある充実した研究生活を名古屋大学で送ることができました。
名古屋城でお花見
日本では年間を通し、多くの伝統的な行事や祭りがあるので、できる限り多くの行事に参加するようにしていました。忘年会やお花見、花火大会など多くの行事を経験したことが印象的です。中でも夏に行われる花火大会に参加したことは忘れがたい経験であり、美しい光景をいつでも鮮明に思い出すことができます。
また、日本は地震が多い国としても知られています。新宿のホテルに滞在していた時、私は初めて地震を経験したのですが、とても驚きました。これもまた忘れがたい思い出です。
逆に、ひどくて忘れられない思い出は、「日本の冬の寒さ」です。私にとって身体の芯まで冷えるような寒さで、最後まで苦手でしたね。また、修士論文や学会のペーパーを執筆中している最中は寝る間もなく忙しくて、とても大変だったことを覚えています。
また、私がつたない日本語を話そうとしているとき、どんな日本人もそれを温かく受け止め、そして嬉しそうであるということに感動したので、毎日少しでも日本語を勉強し、練習するよう努力しました。
忙しくも充実した日々を過ごしています
今はバハルダール大学とバハルダール工科大学に勤務し、学部生の講師、そして大学院生の研究助手の役割を担っています。
主な業務内容は、講義の準備、講義の提供、学術分野での学生支援、建設現場訪問などのフィールドワークのコーディネート、その他学術分野の問題に関するフィードバックなど、多岐にわたります。私は学生に教えることやエンジニアと共に働くことが好きなので満足しています。
その他に、大学の建設工事に関わるスーパーバイザーエンジニアとしての役割も担っていました。具体的には、工事進捗状況のフォローアップや建設方法のフィードバック、設計計画の修正と承認作業、建設資材の管理などを担当し、建設工事の進捗管理を行いました。
私は大学に勤務しているので、研究者になるために更に勉学に励み、研究の経験を積みたいと思っています。そのためにも博士課程への進学が必要だと考えています。私は日本の留学経験に大きな影響を受けているので、是非また日本の大学院に留学する機会が得られたらと思っています。