有限会社フェアトレーディング取締役、なごや地球ひろば買物ゾーン運営担当
林口宏さん
大学を卒業して通関士として働いていた時に「なにかのため、誰かのために働きたい」と思っていました。自分は何ができるのだろうと日々考えていた時に、たまたま手に取った留学関係の雑誌に、小さなフェアトレードの記事を見つけました。「貿易を通じてこのような活動ができるんだ」。その日以来、フェアトレードという方向に向かって少しずつ進み始めました。
フェアトレードの活動に関わり始めて以来、「今、自分自身に何が必要なのか。次に何をする必要があるのか。」を自分自身に対して常に問いかけていました。アメリカのフェアトレード認証団体でインターンを行っている時に、進むべき方向として日本でフェアトレードのコンセプトを広める中心の一人になっていきたいという方向性が固まりました。それに必要な知識・経験を得るために何が必要かを考え、アメリカでのインターン終了後、単身中米のコーヒー生産地へ向かいました。
帰国後はコーヒー生産の環境問題・コーヒー取引における貧困問題の状況を伝えることが、私が最初にしなければいけないことでした。しかし、私が持っている情報を伝えるだけでは、現状を変えることができません。また私個人が動き回るだけでは、情報すらなかなか伝えることができません。
自分自身が学んできたことを生かし現状を変えるためには何が必要であるのか、そのために何をしなければいけないかを考え、より多くの消費者の手にオルタナティブな選択肢を提供していくという持続可能なコンセプトを持つコーヒー会社の設立にたどり着きました。
貿易やフェアトレード、コーヒーの経験を自分なりに積み重ねてきたとはいえ、商品の販売や流通などの知識や経験、販売ルートなど全く無いところに会社を設立したこともあり、あらゆることが大変でした。今考えると無謀だったなと思います(笑)。
やりがいは、フェアトレーディングのコンセプトに賛同してくださった事業者さんや消費者の皆さんに支えていただいたことで、今日まで活動を継続することができたことで、心から感謝しています。同時に(有)フェアトレーディングの活動、フェアビーンズコーヒーのコンセプトに賛同してくださる方々、同じ意識を共有することができる方々と共に活動することができるのは、活動を継続する大きなモチベーションになっています。
持続可能な物の取引の重要性や私たち消費者が商品を選択することの重要性を伝えながら、現状をよりよい方向に進めていくための選択肢を、私たち消費者の手の届くところに提供していくことです。途上国の貧困問題、環境問題を問わず、社会に存在する問題を一気に解決することは難しいと考えていますが、現状をよりよい方向に進めていくために必要であることを、弊社事業を通じてできることから少しずつ、継続して行っていきたいと考えています。
先にお話ししたように、(有)フェアトレーディングは消費者の手の届くところにオルタナティブな選択肢をお届けしていくというコンセプトを基に、コーヒーの輸入・焙煎・卸業務を中心にフェアトレードのコンセプトを持つ各種食材の卸販売を行っています。弊社のフェアトレード活動に関わりたいというご要望は今まで数多くいただいているのですが、業務の特性上、その要望に応えることができないことにフラストレーションを感じていました。またフェアトレードという活動柄、NGO関係の皆さんとも接する機会がありますが、日常的に連携することができない現状を何とかしたいとも考えていました。
今回の企画は、なごや地球ひろばというフェアトレードの理念を共有できる理想的な場所で、フェアトレード活動全般に関わりたいという意思をもつ人たちと接点を持ちながら、多くの市民、消費者に情報を発信し、フェアトレードという選択肢を提供することができると考えました。同時にJICA、協力隊OBOG、地元NGOと連携し、地域のフェアトレード活動の可能性を広げていく機会にもなりえると考え、今回の買物ゾーンの企画に応募しました。
なごや地球ひろばの一部を構成するフェアトレードショップとして、フェアトレードのコンセプトを軸に、JICA中部、青年海外協力隊OBOG、地域のNGO、(有)フェアトレーディングの活動が有機的に繋がった東海地域の国際協力の情報発信拠点としていきたいですね。
ショップの内容としては、弊社の特徴であるフェアビーンズコーヒーを中心としたコーヒービーンズ・ショップとして、また魅力的な各種フェアトレード食品やフェアトレード雑貨などを取り扱うフェアトレードショップとして、より多くの市民や消費者の皆さんに「日常的に」なごや地球ひろばに足を運んでもらえるショップを目指していきたいと考えています。
なごや地球ひろばにより、この地方に大きな国際交流・国際協力の拠点が生まれることになります。微力ながらなごや地球ひろばを作り上げていくお手伝いをさせていただく機会に恵まれたことを、とてもうれしく思っています。今はこれから多くの方々と協力して大きなうねりをつくっていくことへのワクワク感を楽しんでいます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします!
フェアトレードコーヒー生産者、ヒルベル(左端)とその家族(右端は林口さん)
フェアトレードによる収入によって立てられた小学校の前でポーズを取る子供たち。ここにあるコーヒー生産協同組合への12年間のフェアトレードの恩恵は、道路の修繕、生産者の子供たちへの奨学金、診療所、オーガニック生産への移行など様々なところで見られます。
コーヒーチェリーの詰まったバッグを運ぶ子供。このサンルーカス地区ではまだほとんどの生産者がフェアトレードの協同組合には入っていません。
土とブロックで作られた家と裸足の少女。手前の箱の中では、皮をはいだあとのコーヒーが乾かされています。
フェアトレードコーヒー生産者。「フェアトレードは働く原動力になる。」彼はそう話してくれました。