「困っている人の為に」ではなく、「困っている人と共に」

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愛知県立千種高等学校 国際課主任
大宮 秀樹先生

昨年のJICA中部の教師海外研修への参加がきっかけとなり、よりよい教育を目指す研究会『中部BQOE研究会(BQOEはBetter Quality of Educationの略)』を設立!名古屋市を中心に活躍される大宮秀樹先生をご紹介します。

はじめに、昨年度(2008年)のJICA中部の開発教育指導者研修(上級編)および教師海外研修(フィリピン)に参加したきっかけを教えてください。

「ちょっと長くなりますが元々のきっかけから話しますと、勤務校の千種高校に転勤してきた年に、文科省からSuper English Language High School (SELHi) の指定を受けたんです。その一つの大きな目玉の取り組みとして、模擬国連(MUN)をすることになりました。初年度は前任者の主任が担当していましたが、2年目から私にそのお鉢が回ってきたのです。最初は大変だなという思いが先行しましたが、これがやってみるとはまっちゃいました。この授業は、先生が前に立ってすべてを教えるという形態をとらず、生徒が自ら課題を見つけ、その解決策を模索していくのです。先生はその過程をサポートするのです。具体的にいいますと、生徒は、
(1)その年のトピックを、たくさんある国際問題の中から一つ取り上げる(例:水問題、児童労働、児童兵士、環境破壊、戦争など)。
(2)その問題に関係する国を10カ国ほど、アジア、アフリカ、ヨーロッパなど国連加盟国のバランスも考慮して選出。
(3)3人一組になり、その国の代表者としてその国の事情を説明し、その国にできること、他の国にして欲しいことなどをまとめてプレゼンする。
(4)各国がその問題の解決策を考え発表し、他国とともにより良い解決策を求めて話し合いを展開する。
ざっとこんな感じです。答えがまとまらない年もありますが、それもアリです。それぞれの国の事情を認め合いながらも、より良い解決策を見つけようとする過程が貴い経験になります。自分たちの考えが通ったときの喜びはひとしおですが、同時に妥協する勇気も学ぶことができます。私としては生徒への動機付けと世界的な問題にいつも敏感であってほしいということで、CNNニュース記事を用意し、最初の10分くらいを使って読み、Q&Aで内容を確認するくらいで、あとは、AET(Assistant English Teacher)に生徒の話し合いを促したり、質問に答えたり、とにかく、生徒の活動しやすい環境を提供することにエネルギーを使いました。もうお気づきでしょうか。こういう授業を担当しているうちにこう考えるようになったのです。勉強して、生徒の潜在能力を上手に引き出せる、より良いファシリテーターになりたい。実際に問題を抱えている、『発展途上国』といわれている国や地域を自分の目で見てみたい。3年間のSELHi指定も終わり、報告書も書き終えて一息ついたときに、JICAプログラムが頭をよぎったのです」

なるほど、それがきっかけで開発教育のスキル習得に関心を持たれたということですね。NIED・国際理解教育センターとJICA中部が協働で実施する開発教育指導者研修(上級編)は、毎年参加者から好評をいただいていますが、大宮先生は実際に参加してみてどんな感想をもたれましたか。

「指導者研修は、掛け値なしで、本当に勉強になりました。人の力を引き出したり、人に活動をしてもらうというのは、とても準備が大変で、難しいことだと改めて認識しました。と同時に、自分で考える喜びや、仲間と知恵を出し合う楽しみも体感できたんです。人が勉強していくときには、知識の獲得も大切ですが、その知識を使う機会がどれだけあるかで、結果に大きな差が出てくると思います」

指導者研修参加者の一部は、教師海外研修(ブラジル・フィリピン)に参加しますが、大宮先生もフィリピンのグループに参加されましたね。海外研修はいかがでしたか。

「国際理解教育に関心のある先生は、ぜひ参加してほしいと思いました。それくらい中身の濃いものでした。現地で見た厳しい状況がわたしの世界観を刷新するほど衝撃的なものであっただけでなく、そこで住民とともに活動するNPO職員の姿がわたしの心に焼き付いて離れません。この体験は今後のわたしの教育活動に大きな影響を与えるものです」

そんな印象的な(フィリピンでの)体験を帰国後、どのように授業に活用されているのですか。

「スライドショーを見せながら、発展途上国の諸問題を解説したときも、生徒たちに大きなインパクトを与えました。でも私にとってもっと大きかったのは、授業に対する私の思いが変化したことです。『「困っている人の為に」ではなく、「困っている人と共に」』という、あるNPO職員の言葉を大切にしながら、人と共同して活動する場面を大切にした授業を作っています。『学校や地域や家庭で学んだことが、自分の将来を豊かにし、社会を改善していく助けになるんだ』と伝えたいし、また、そう信じて学んでほしいと切に思うようになりました。またそんな視点から、自分の適性に応じて将来の仕事を見つけていってほしいと思います」

一緒にフィリピンの研修に参加された同期仲間と「中部BQOE研究会」を立ち上げられましたが、どのような経緯だったのでしょうか。

「研修が終わってから、みんなが自分の学校に戻り、それぞれの持ち場で頑張ってきたんですが、なかなか一緒に会う機会が持てなくてさみしい思いをしていました。みんなで集まり、情報交換できる場がほしかったんですね。そんな時に、この6月にオープンしたJICA中部なごや地球ひろばで、登録団体には研修室の利用が許されるという情報をキャッチし、この際団体を立ち上げようと決めたわけです」

市民活動ルームの利用のことですね。登録団体としては、どんな活動をされているのでしょうか。

「今は、各自が取り組んでいる授業内容を報告しあったり、参加した各種団体のプログラムを紹介したり、さまざまな情報交換をしています」

それぞれの状況を報告しあうことで、ネットワークが広がったり、刺激を受けながら向上していけるということですね。ところで、大宮先生の生徒さんたちは、なごや地球ひろばのオープン前に実施した施設の内覧会に参加していただきましたよね。その様子を描いた生徒さんの作文が「第9回 亜細亜大学高校生英語スピーチコンテスト」の一次審査を通過し、全国大会に出場されたようですね(*1)。どのような内容だったのでしょうか。

「JICA中部の内覧会で、青年海外協力隊としてアフリカに赴任された地球案内人から、『女性の自立のためにパンを焼き販売することを考えたが、材料費よりも安い値段で売ってしまう村人の話(計算がうまくできない)や、昨日まで元気だった現地人のボディーガードが、治療も受けられずに死んだという事実を翌日聞かされたという話を聞いて、自分の恵まれた環境を最大限に生かし、どんな小さなことでも自分に今できることをしていこうと新たな決意をした』、という内容です。引率した生徒がこんな風に感銘を受け次へのステップを踏みだしたことは、教師冥利に尽きる出来事でした」

これからの目標を教えてください。

「今後は、複数の学校の生徒を対象に、世界について考える共同企画を催すなど、自分という殻を破り、学校という門を抜けて、国という境を越えて、共に学びあえる機会を提供していけたらいいなと思います」

ありがとうございました!今後のご活躍や研究会の発展を楽しみにしています。

(*1)中部BQOE研究会のホームページにて第9回 亜細亜大学高校生英語スピーチコンテストも掲載されます。

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