「安全でおいしい水」を作る技術を研修員に伝え、世界の水問題に活かしたい

【画像】名古屋市上下水道局 総務部 海外協力担当

山田克幸さん
名古屋市上下水道局 総務部 海外協力担当

タイやメキシコでJICA専門家として活躍され、帰国後も名古屋市でJICAの研修員受入事業に携わる山田さんにお話をお伺いします。

名古屋市上下水道局で職員として勤務される山田さんが、国際協力に関心を持ったきっかけは何だったのでしょうか。

「あまり褒められた動機ではないんです。技術屋の同僚が漏水防止対策の技術指導でちょうどタイに派遣されている様子を聞いて、うらやましいなぁと思っていたのですが、1995年頃、当時の総務課長から『事務職でも海外協力の仕事があるが、どうだ、やってみるか』と言われ、そりゃ是非にも、と名乗りをあげたというのが本当のところです。」

JICAの専門家としてタイやメキシコへ派遣されたときには、どのような活動をされていたんですか。

「タイには1996年に行きましたが、当時横浜市や大阪府などからさまざまな水道の分野で専門家が派遣されており、名古屋市が担当したのは漏水防止対策と顧客サービスの2つでした。
私は顧客サービスの担当で派遣されました。バンコクとチェンマイの2つの都市で研修や現地の状況を調査し、業務提案などをしていました。
メキシコには昨年行きましたが、現在進行中のプロジェクトの技術提案のために3週間ほど現地の状況を調査して、名古屋でどんな研修をすれば良いか、メキシコのスタッフたちと相談していました。」

派遣先で苦労されたこと、嬉しかったことをそれぞれ教えてください。

「苦労ですか・・・・・・記憶がないですね。まぁタイに入ってひと月ぐらいだったか、屋台の料理を食べて1週間ほどお腹の調子が悪かったことぐらいですかね。嬉しかったことはたくさんあります。今でも当時のタイ人や他都市の専門家との交流は続いていますが、彼らとの交流は楽しかったですね。でも、一番嬉しかったのは研修で自分の思いが伝わったことが分かったときですね。」

帰国された後も、名古屋市上下水道局の現在の部署でJICA中部の研修員の受入れを担当されています。これまでの経験から、海外の状況もよく理解できる分、文化の違いなどでご苦労もあるかと思いますが、日本での研修についてどのような感想をお持ちですか。

「まず、日本の国柄や日本人の考え方を理解してもらうことが大事かな。これまでいろいろな国の研修員から、名古屋の水道は過剰サービスではないか?という質問を受けてきました。そんなとき、私は日本の家電製品を見ろ、と言うんです。消費者の目が肥えているから、メーカー視点じゃなくてお客さん視点の製品を作んなきゃいけない。水道のサービスも同じだ、と説明するんですが、そういう日本の国柄を理解すると研修の内容もスーッと入っていくのかなと感じています。」

先月までなごや地球ひろばで企画展「水のはなしだゾウ」に名古屋の上下水道の歴史を展示していただき、来館者からも好評でした。展示を見られた方にはどのようなことを伝えたかったのでしょうか。

「今私たちは自信を持って安全でおいしい水を供給していますが、それは先人たちが一生懸命やってきた仕事ぶりを守ってきていること。そしてこれからも安全でおいしい水を作っていくためにこんなことに取り組んでいます、また持っている技術を広く伝えて、世界の水問題解決にも頑張ります、ということですね。」

企画展のイベントとして、「世界の水のお話 Part I メキシコ編、Part II 世界編」をJICA中部と共催していただきました。研修員と市民の方々との交流イベントでは、双方がとても楽しそうに参加されていたのが印象的でした。山田さんはどう思われましたか。

「これまで、上下水道の仕事でお客さまの理解と協力をいただくために、いろいろな交流事業をしていましたが、海外協力の仕事は積極的にPRしてこなかったので、とても新鮮に感じました。」

今後の展望について教えてください。

「現在の名古屋の海外協力はメキシコへの草の根協力(注1)と漏水防止対策の集団研修(注2)の2つです。メキシコは来年でプロジェクトが終わってしまうのですが、継続して協力できる案件がまだ残っているので引き続き事業化させたいと考えていますし、もうひとつ協力案件を立ち上げたいとも思っています。」


ありがとうございました!


注1:草の根技術協力(地域提案型)『メキシコ水道における水質管理』コース
注2:課題別研修『上水道無収水量管理対策』コース

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名古屋市上下水道局での研修の様子(1)

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名古屋市上下水道局での研修の様子(2)