悪循環を断ち切れ!ストリートチルドレンの職業訓練を通じて自立支援する協力隊OG

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「仕事ノアル暮らし」主宰、青年海外協力隊OG・ルワンダ・ソーシャルワーカー
加藤悦子さん

ルワンダでストリートチルドレン保護のソーシャルワーカーとして活動、彼らの生計向上のために現地に工房を設立!帰国後も「仕事ノアル暮らし」を主宰、日本に彼らの製品を紹介する傍ら、ルワンダでの支援も継続する青年海外協力隊OGの加藤さんにお話を伺います。
(聞き手:市民参加協力課 前納)

12月5日に行われたJICA中部フェアトレード・カレッジでは、フェアトレード・マーケットにも出店されていた「仕事ノアル暮らし」ですが、まずはじめに加藤さんが取り組まれている現在の活動について教えてください。

 ルワンダの元ストリートチルドレンたちが作った、牛の角(つの)加工アクセサリーや、貧困女性がつくったカゴ、後輩隊員が手掛けたHIV陽性ママのエコバッグなどの販路開拓を日本で行いながら、(定期的に)ルワンダに渡って、それらのデザイン助言や品質管理を行っています。

アフリカと日本を行き来して製品を作られているわけですね。フェアトレード・マーケットでのお客さんの反応はいかがでしたか?

 (販売している)モノの裏にある「物語」や「言われ」をこちらでご説明すると、興味を持っていただけましたね。やはり、人は人に興味があって、感情が動かされますね。

そうですよね。では、このような活動を始めるに至ったきっかけである青年海外協力隊時代の活動について教えてください。

 ストリートチルドレンの保護施設で、スタッフにカウンセリング技術を教えるという仕事をしていました。教育関係者と一緒に(ストリートチルドレン達の)たまり場を巡回するうちに、施設が学費や学用品を援助して一旦小学校に戻っても、子どもが働かないと家族全員が食べていけないというケースに複数出会いました。ストリートチルドレンは孤児だ、と思っていましたが、家族がいるケースが多かったのが意外でした。

 子だくさんで、食べていくために年長の子どもが家を出て稼ぎ始める、はじめは家族を助けるためだったのに夜の寒さを紛らわすためにマリファナやシンナーを吸いはじめる、家族とも疎遠になって路上の仲間しか拠り所がない、悪事を働き住民に嫌われる、一層家族に顔を合わせられなくなる、抜けられなくなる、という悪循環。カウンセリングで心を癒すことも大事ですが、他方、家庭に安定した経済基盤がないことが、子どもを路上で暮らさせる根本原因だと実感したんです。

 そこで一念発起、当時配属先が独自の職業訓練として手がけていた牛の角の加工コースを修了した元ストリートチルドレン達が働ける工房を開設することを思い立ちました。日本から30万円の支援(注1:「小さなハートプロジェクト」)をもらって、職業訓練を受けて施設を卒業した彼らが働く牛の角加工工房を2007年10月に建てました。青年達やお母さんが定期的に収入を得て、子どもは安心して学校にいけるようにという試みです。隊員活動を終了した現在でも、継続して彼らの製品の販売支援、新製品開発や品質管理、運営補助にあたっています。

隊員活動を帰国された今でも継続されているんですよね。そんな加藤さんの隊員活動中は、さぞかしたくさんの思い出があるのでしょうが、もっとも印象的だったこと、心に残っていることはどんなことですか?

 (自分に対して)無関心だった同僚に慰められたことです。毎週月曜日の朝、職場で定例会議がありました。そこで、私を(外勤に)連れて歩きたくない同僚と、連れていけという上司。会議は二人の言い合いになっていました。だんだんエキサイトしていく二人に、「私はルワンダを助けるためにやってきたはずなのに、私が原因となってもめごとが起こっている。私は何のためにここにいるのか。逆効果ではないのか」と思うと全くもって情けなくなり、月曜朝から涙が出てしまいました。 

 すると、英語もフランス語も満足ではない私を普段から軽く見ていると思っていた40歳くらいの経理の女の人が、泣き出した私を見て「大丈夫、大丈夫。あなたのことを誰も悪く言ってないから。よしよし」と抱きしめてくれて、その部屋から連れ出してくれました。

 嬉しかったですね。嫌われてる、とまではいかなくても、軽く見られているな、というのは言葉がわからなくても通じるものです。そんな彼女が、泣き出してしまった私をあったかく抱きしめてくれて。その気持ちが嬉しくて、違う涙が止まらなくなってしまいましたね。ああー、今思い出してもまた涙が出てきますね。この出来事が、私が協力隊を終えてもルワンダの人たちを支援し続けようと思った原点ですね。

それは素敵なエピソードですね。ルワンダと心がつながった瞬間だったんでしょうね。では、活動中、一番楽しかったことを教えてください。

 ずばり彼ができたことでしょう(笑)。あいにく帰国前に別れてしまいましたが、恋愛が楽しいのは万国共通ですね。ふふふ。

そうでしたか(笑)。今でもルワンダには、年に数回行き来されていますよね。加藤さんが帰国された後の工房の様子はいかがでしょうか?また、離れていることで難しいと感じられることはありますか?

 もう2年続いているって、すごいですよね。ただ、(これまで)決して平坦ではありませんでした。信じて後を託した元同僚がお金を着服していて、それがわかったら辞めてしまったとか、買出しに行ってもらうと領収書をごまかすとか、給料後払いが信じられなくて工房の物品を盗むとか。現在は作業者5名、修行中5名でやっていますが、これから順次メンバーを増やしていきたいですね。「働き続けたい、仕事がほしい」と強く願っている、信頼できるメンバーがいてくれるので、期待したいです。

最近ではこの活動のために「世界の人びとのためのJICA基金」(注2)の支援も受けられましたね。申請までの経緯とどのような活動に使われたのかについて教えてください。

 これには本当に感謝しています。JICA基金は個人の申請が可能なので、大変助かりました。私は協力隊員OGとしてのフットワークを生かして個人で活動しているからです。ちょうど(現地の)工房の機械(万力やモーター、ハンドドリルなど)がいくつか壊れたり、機嫌が悪くなったりしていたので、その機械購入費と、日本の私と現地の連絡費として使わせていただきました。現地リーダーの育成や読み書き補講、英語勉強などにも支出したいと思っていたのですが、これは次の段階の事業と判断し、持ち越しとなりました。

今後も活動が広がって行くことを大いに期待します!最後に今後の展望についてお聞かせください。

 現地では、(1)嘘をつかないとか、納期を間に合わせる、質の良いものを恒常的に作り続けるなどの人材教育と、(2)半日くらいの牛の角加工体験教室を現地旅行会社とタイアップして始めること、(3)そのための英語教育、(4)元・ストリートチルドレンなので読み書きできない一部青年の読み書き教室、(5)コーヒーメジャースプーンやバッグの持ち手や傘の柄など、多品種の「売れる!」ものを作りたいこと、ですね。

 日本では(1)ジュエリーデザイナーのRUKUSさんや(株)HASUNAさんなどの今買ってくださっているお客様との関係を強くすること、(2)継続的に製品を買ってくれるところをどんどん開拓すること、を考えています。

 それから、同時に「貧困家庭に収入を」という試みで、コミュニティの貧困女性の内職で作られた製品(カゴ編み)の販売・品質管理の支援や、元青年海外協力隊が支援していたHIVエイズ陽性の女性団体が作るエコバッグの販売支援も並行して実施しています(注3)。今後は臨床心理士業を再開するかたわら、ルワンダにおける外国人観光客のクラフト製作の体験教室の開催などもしていきたいですね。


ありがとうございました!


注1:「小さなハートプロジェクト」社団法人協力隊を育てる会が実施する、任国で活動中の青年海外協力隊の活動を支援するため民間の支援につなげて資金的な援助を行うプログラム。詳細は下記ホームページをご参照下さい。

注2:「世界の人びとのためのJICA基金」とは、市民一人ひとりが寄附を通じて国際協力に参加いただく基金で、JICAを通じて貧困や飢餓に苦しむ人びとを支援していくプログラムです。
詳細は下記ホームページをご参照下さい。

注3:加藤さんの「仕事ノアル暮らし」で扱う牛の角のアクセサリーやアフリカのカンガ(布)を使ったエコバック、カゴなどは、現在フェアビーンズなごや地球ひろば店で取り扱っています。

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虐殺被害者の女性と。 彼女は夫と子どもを二人殺されましたが、残された3人の子どもと3人の孤児を引き取って7人で暮らしています。 底抜けの明るさと親切心に心から尊敬を覚えます。

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HIVエイズ陽性の女性団体のアトリエの様子

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いつも明るいエコバッグ生産者

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コミュニティの貧困女性の内職で作られるカゴ製品

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色とりどりのカゴ編み製品